テレビ朝日「グッド!モーニング」炎上…取材対象者の意思に反した編集はなぜ起きる?

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

テレビ朝日「グッド!モーニング」のインタビューに答えた医師が、取材内容とは違う報道をされたと自らのSNSで文章を公表、番組の報道姿勢に批判が集まっている。一体なぜこのような事は起きてしまうのか。長年、報道・情報系番組の制作に携わっている立場から、その背景にある問題を分析する。

意見を誘導され、重要な部分をカットされ、「真逆に見えるように」編集された。

文章を公表したのは、医師の澁谷泰介さん。自らのFacebookに昨日(5月7日)「編集で取材内容とはかなり異なった報道をされてしまい、放送を見て正直愕然としました。」などと、テレビ朝日「グッド!モーニング」の取材に関して投稿した。

詳細は、原文を見ていただきたいが、要約すると「グッド!モーニング」の取材に関して澁谷さんが主として問題としているのは以下の4点だと筆者は考える。

1.「PCR検査の検査数をどんどん増やすべきだ」というコメントが欲しかったようで繰り返しコメントを求められた。

2.「今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではない」「無作為な大規模検査は現場としては全く必要としていない」とコメントをしたのに、カットされた。

3.ヨーロッパ帰りの澁谷さんのコメントが、「欧州でのPCR検査は日本よりかなり多い(日本はかなり遅れている)」といった論調のなかで他の人のコメントと一緒に使われ、「PCR検査を大至急増やすべきだ」という、澁谷さんの意見と真逆に見えるように編集・放送された。

4.物資の手配と医療従事者への金銭面や精神面での補助に関しても強調してコメントしたのに、全てカットされた。

つまり、意見を誘導され、重要な部分をカットされ、「真逆に見えるように」編集された、という事である。なぜ、このような、誰が考えても絶対に許されないことが起きてしまったのだろうか。あくまでも私の推測に過ぎないが、考え得るケースはこんな感じだ。

「結論ありき」でVTRを制作していないか

まず考えられる可能性のひとつは、「ディレクターへの偏った指示」だ。

多くの報道・情報番組には、内容面の責任者として「チーフディレクター」や「ニュースデスク」がいて、まずは彼らが主な番組の全体構成を決めるのが一般的だ。チーフディレクターが、大きな項目の内容とその順番を決める。例えば、「今日のコロナ新情報まとめVTR」→「スタジオトーク」→「PCR検査をもっと増やすべきでは?という内容のVTR」→「それについてさらにスタジオトーク」のような項目の台本をまずチーフディレクター的な人物が作成するのだ。

そして、そのそれぞれの項目ごとに、チーフディレクターが担当のディレクターを決めて制作を指示する。制作を指示されたディレクターは、ADなどと共に、その担当部分についてリサーチし、取材に行き、VTRを編集する。この場合もし「PCR検査をもっと増やすべきでは?という内容のVTRを作るように」と指示されていれば、その意向に沿って「PCR検査を増やすべき」という意見を持っていそうな専門家を探し、その専門家に取材に行くことになる。

ところが、だ。専門家へのアポ入れを担当するADが電話か何かで聞いた感じでは「PCRを増やすことに賛成派」だと思ったのに、実際に話を聞いてみたら、そうではなかった、というケースもある。そうすると担当ディレクターの中には、本来いけないと思いながらも、VTRの「流れ」に合わせるために意見を誘導し、編集で無理矢理辻褄を合わせようとする人が出てきてしまう可能性があると考えられる。

もうお気づきの方も多いと思うが、このチーフディレクターの指示は、間違っている。「本来あるべき指示」の内容は「PCR検査は増やすべきか?そうではないか?」というものだ。このような内容の指示で、ニュートラルにPCR検査についてのVTR作成を指示していれば、ディレクターは「賛成・反対両方の意見を持つ」専門家を探し、そのバランスを取ることを心がけながらVTR制作の準備をすることができるからだ。

まさか、今回そのような偏った指示がチーフディレクターから発せられたとは思いたくない。しかし、スタジオに呼んでいるゲストの意見や、プロデューサーなどの意見、番組の会議で決まった「流れ」などに合わせるために、いわば「現場監督」のような立場にあるチーフディレクターやニュースデスクが、「結論を誘導してしまう」ことは、残念ながらしばしば起きていると言えると思う。

ディレクターやADによる「誘導」と「リサーチ不足」

そして、次に考え得る可能性としては、チーフディレクターは公平なVTRの制作を指示していたのに、ディレクターやADが「VTRの内容を面白くしようとして」意図的にVTRの方向性を歪めようとした。あるいはきちんとリサーチをすることを怠っていた、というケースである。

僕が思うに、ニュースや情報番組をつくるディレクターには、2つのタイプのディレクターがいる。現場に取材に行く前に、自分の頭の中でVTRの構成を決めてしまうタイプと、まず現場に取材に行って、帰ってきてからVTRの構成を考えるタイプ。もちろん本来、事実というものは取材をしてみないと分かるわけがない。しかし、時間に追われる制作現場で、往々にして「取材に行く前に頭の中で構成を決めてしまうタイプ」の方が、「仕事が早い」ので「仕事ができるディレクター」という評価を上司から得ることも多いのである。

こういう「先に構成を決めてしまうタイプ」が、実際に取材を行って「自分が想定していたことと違うこと」を取材相手に話されてしまうと、とても慌てることになる。自分の想定台本が大きく崩れてしまうからだ。

本来、そういう事態に直面したら、もう一度構成を立て直すべきである。しかし、このタイプのディレクターは「自分の台本」にできるだけ「取材内容の方を」合わせてしまう場合がある。僕も、何人もそうしたディレクターのVTRをチェックして、修正をさせたことがある。しかし、こうしたタイプのディレクターに確信犯的にインタビュー内容を歪めて編集されてしまうと、チェック段階でそのことを見抜くのは難しい。なぜならチェック担当者であるチーフディレクターやニュースデスクは、直接取材を行うわけではないからである。

いずれにしろ「結論の誘導」は良くない

今回、澁谷さんが指摘するような問題が本当にあったとしたら、テレビ朝日はきちんと調査して、「なぜこのようなことが起きたのか」その原因をきちんと発表するべきだと僕は思う。僕がここに書いたことは「あくまでもこれまでの経験からの推測」であり、そこまで露骨な歪曲や捏造が行われていないのかもしれない。むしろそうであることを僕は願いたい。

しかし、今テレビに、特にテレビの情報番組に対して批判的な考えを持つ人が増えているということは、多分間違い無いと思うし、テレビ局もテレビの制作者たちも気づいているのではないだろうか。

我々テレビマンが考える「面白さ」はたぶん少し間違っているのだ。「批判」や「問題」を大袈裟に煽るような感じは、もはや視聴者の信頼感を失うことにしかならない。もっと冷静に「事実はなんなのか」を掘り下げていく姿勢、そして「様々な意見の対立がある」ということを、ありのままに紹介し、視聴者のみなさんに客観的に判断材料を提供する姿勢、そうしたものが求められているということを、特に上に立つ人たちは気づかなければならないのだと思う。