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国連の学校を歓声と共に爆破、死者の遺品を盗む―イスラエル軍の素行が悪すぎる #ガザ

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
爆破される国連の学校 イスラエル人記者almog boker氏のSNSより

 戦争は、人間を悪魔のように変える―それは過去の戦争での事例でもそうであるし、筆者の紛争地取材でも実感してきたことだ。だが、紛争地から兵士達が人間の愚かさ、醜さをネット等に自ら晒すということは、個人が気軽に発信できる現代ゆえという面もあるのだろう。パレスチナ自治区ガザへイスラエル軍が猛攻撃を行っている中、同軍の人道軽視ぶりや、倫理観の欠如をうかがわせるような映像がいくつも上がっており、それを目にした人々からの反感を招いている。

〇歓声と共に国連の学校を爆破

 ガザ北部ベイトハヌーンにある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の管理する学校を爆破し、イスラエル軍の兵士達が歓声をあげ、手を叩く。人間性を疑うような映像をイスラエル側のメディアの記者が嬉々として、自身の旧ツイッター(X)にアップした。今月12日のことだ。それを翌日、中東の衛星テレビ局アルジャジーラのアカウントが取り上げ、それを観た人々は、当然ながら、困惑と憤りを感じたようだ。イスラエルや同国を支援する米国を批判するコメントが相次いでいる。

 上述のイスラエルの記者は、自身の投稿で、UNRWAの学校がハマスの拠点とされていたと主張するが、その具体的な根拠は示していない。また、過去の筆者の経験から言えば、UNRWAの学校は、人々の避難所となり、人道支援団体や国連職員、メディア関係者らが頻繁に出入りする。そのような人目につくところにハマスの戦闘員がいれば、すぐわかるはずで、現実的な話とは感じられない。UNRWAの学校の地下に、ハマスのトンネルがあるとの主張もあるが、仮に軍事目標がそこにあるとしても、その軍事目標のみ排除するのではなく、学校ごと爆破することは、戦時においても民間人や民間施設の保護を求める国際人道法に抵触し、あまりに荒っぽいやり方だ。とりわけ、現在のガザの状況で避難所となっている学校を破壊すれば、それでなくても、避難場所が不足している中、避難民達は行き場を失い、より危険な状況に放り出されることになる。つまり、イスラエル軍はガザの民間人の人々の保護を全く配慮していないということを示しているのである。


〇破壊活動は娘の誕生日記念

 上述の映像でのイスラエル軍の兵士らの歓声もそうだが、破壊活動を楽しんでいるような異常さを感じざるを得ない。やはり、強い反発を招いた映像として、イスラエル軍の少佐が、自身の娘の2歳の誕生日に捧げるとして、ガザの建造物を爆破したものがある。


〇攻撃犠牲者の遺品を盗む

 イスラエル兵達は、略奪が戦争犯罪であることを理解していないかのような振る舞いも見せている。ある兵士は、砲撃し破壊した民家から、その家の女性の所有物だったペンダントを盗み、自分の恋人にプレゼントするとの動画をSNSに投稿。これがアラブ系メディア「クドゥスニュース」のアカウントで紹介され、批判が殺到している。

 また、似たようなケースとしては、イスラエル軍の兵士がガザの民家の中にあったソファーの上に寝そべり、自身の妻に対し「こんなソファーが欲しいか?」と聞く動画をSNSに投稿したというものもある。実際には、この兵士はソファーを略奪したわけではないのかもしれないが、余りに無神経な言動だ。

〇イスラエル軍は国際法、国際人道法を遵守するべき

 イスラエル軍が、テロ組織ではなく、あくまで法治国家の正規軍であるのならば、国際法や国際人道法を遵守するべきであろう。ハマス等による、イスラエルの民間人殺害や誘拐も許されないし、法により裁かれるべきではあるが、だからと言ってイスラエル軍が「法の支配」を無視してよいことにはならないのだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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