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卑劣!子ども201人を「人質」にする自民、立憲は抵抗?―入管法改定修正協議

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
右から2人目が寺田学議員(立憲) 修正協議後の囲み取材で筆者撮影

 本来、保護すべき難民を迫害の恐れのある地へ追い返す等、重大な人権侵害につながるとして、国内外の批判を呼んでいる入管法改定案*。立憲民主党は、一昨年の審議では、他の野党と共に徹底的にその問題点を追及、廃案に追い込んだ。ところが、今国会提出の入管法改定案に対しては、その骨格自体は一昨年の法案のそれとほぼ変わらないにもかかわらず、当初から廃案ではなく、修正協議で応じる姿勢を見せるなど、酷く弱気の対応だ。そんな中、難民認定申請者等を親に持つ、在留資格を与えられていない子ども達201人に在留資格を与えることを、立憲の働きかけから、政府与党は検討しているのだという。一見、人道的に見えるが、本来は入管法の改定とは関係なく、在留特別許可の運用やガイドライン見直しで対応できることだ。つまり、自民党は約201人の子ども達を「人質」にして、立憲に入管法改定案の修正協議で合意することを求めているのではないか。渦中の寺田学・衆院法務委員会筆頭理事(立憲)を直撃した。

*今回の法案は「改正ではなく、むしろ改悪」との批判も高まっているため、本稿では「入管法改定案」と表記する。

〇201人の子ども達が「取引材料」に

 「うーむ、はめられたのか?」―25日付の朝日新聞の記事を見て、筆者は思わず頭を抱えた。同報道によると、入管法改定案をめぐる自民、公明、立憲、維新の4党の修正協議の中で、「立憲民主党の求めに応じて」約201人の外国人の子ども達に在留特別許可を与えることを検討しているのだという。

 確かに、在留資格が無いことで、子ども達は健康保険証も持てず医療を受けられなかったり、アルバイトが出来なかったりと、様々な点で生活に支障をきたしている他、最悪、入管の収容施設に収容されたり、強制送還されたりする恐れもある。だから、人道上の面から野党側はこうした問題を取り上げてきたのだが、実は既に今月21日の衆院法務委員会で、公明党の大口善徳衆議院議員が、齋藤健法務大臣から、在留資格のない子どもに在特を与える方向だと、言質を引き出しているのだ。

 つまり、人道を配慮して子ども達に在留資格を与えるのは、立憲が修正協議で合意しようがしまいが、政府与党内での方針としてあり、これを条件に立憲が合意するのなら、政府与党としては「まんまとひっかかった」ということになろう。

 そもそも、日本は子どもの権利条約を批准しており、同条約の「子どもの最善の利益」を遵守するならば、在留資格がないために、健康を悪化させたり、経済的な状況を困難な状況にさせたり、親を強制送還して家族をばらばらにしたりすることは、許されない。より上位な法である国際条約よりも、下位の法にすぎない入管法を優先してきた法務省及び出入国在留管理庁(入管庁)の対応が違憲・無効なのであり、それは政府与党側の責任でもある。

 そうした、政府与党の瑕疵を棚に上げ、あたかも、「修正合意を飲むなら子ども達に在留特別許可を与える」と立憲に揺さぶりをかけているのなら、「子ども達を人質にしている」と批難されてしかるべきだろう。

「私達も人間です」と書かれた紙を掲げる少女 今月21日の国会前での入管法改悪反対の集会で筆者撮影
「私達も人間です」と書かれた紙を掲げる少女 今月21日の国会前での入管法改悪反対の集会で筆者撮影

〇立憲側にも脇の甘さ

 他方、立憲側にも脇の甘いところがある。上述したように子ども達に在留資格を与える方向であることは、齋藤法相と大口議員との国会質疑のやり取りの中で確認されている。それを修正協議の交渉材料にさせている時点でおかしいのだ。これで立憲が折れても、それは妥協の代償に得たものではなく、単に与党側の思うツボなだけである。しかも、入管法改定案の内容についての修正案で示された「付則の明記」も、実際には意味がないとの見方もある。

 この点、修正協議に参加している衆院法務委員会筆頭理事の寺田学衆議院議員(立憲)はどう考えているのか。25日の修正協議後の記者達の囲みの中で、筆者は「既に公明党の質疑で方向性が示されている子ども達の在留特別許可は、立憲が修正協議に合意するのに値するものだと思うか?党としてではなく、寺田議員の個人としての考え方を聞きたい」と質問したが、寺田議員は「カメラのまわっているところでは話せない」と明言を避けた。寺田議員によると、26日午前の立憲の法務部会で同党としての対応を決めるのだという。また、本件は立憲内でも意見が分かれていて、反対している議員も多いようだ。匿名の事情通によれば、「鈴木庸介、中川正春、吉田はるみ、米山隆一の各議員がどちらにつくかで決まる」とのことだ。さらに、「寺田議員が『我々が賛成すれば、子どもとその親の在留特別許可を認めさせられるかも知れない。反対すれば、日本維新の会の修正が協議されるだけ』と、立憲内で説得してまわっています」(同事情通)との情報*もある。

*この件の真偽については、寺田事務所に確認中。

*19:54追記 立憲内にも反対意見が多いとの情報が入ってきた。

〇野党対案の実現が必要

 入管法改定案をめぐっては、一昨年のそれを若干修正してもなお、難民認定申請者を強制送還すること、収容期間に限度を定めてないこと等から、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会や同理事会の特別報告者らが、今月21日に「国際人権基準を満たしていない」「徹底した内容の見直しを」との日本政府にむけた書簡を公開した。また、寺田議員によれば、立憲民主党として、参院野党合同でまとめた対案「難民等保護法案・入管法改正案」を、修正協議の中で政府与党側に受け入れるよう求めているとのことだが、同対案は国際人権基準に準拠するもので、だからこそ、立憲は子ども達を人質にするような取引に応じるべきではないだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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