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衝撃!オリラジ中田敦彦「地球に住めなくなる日」を警告

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
中田さんのYouTube動画より

 お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」、人気ユーチューバーの中田敦彦さんは、様々なテーマをわかりやすく解説、約292万人が登録している人気チャンネル「中田敦彦のYouTube大学」で地球温暖化について解説。米国のベストセラーの邦訳『地球に住めなくなる日』(デイビッド・ウォレス・ウェルズ著/NHK出版)を参考文献に、日本のテレビが伝えきれていない温暖化の真の脅威を語った。異常気象の頻発、感染症や紛争の増加、地球上の生物の大部分が絶滅しうる危険性―中田さんの動画は、必見の内容である。

◯既に脅威は現実に 異常気象と温暖化

 近年、異常気象による災害が頻発しているということが、温暖化が原因だとの図式を、我々は頭の中で組み立てられていない―中田さんは、自身が公開した動画「【異常気象と気候変動1】地球に住めなくなる日」の中でそう指摘する。中田さんが言うように、実際には、異常気象と温暖化は密接に関係している。中田さんが具体例としてあげたのは、今年7月に熊本県を中心に九州を襲った豪雨「令和二年七月豪雨」と、この9月に発生した米国カリフォルニア州の大規模山火事だ。令和二年七月豪雨では、多くの家屋が浸水し、土砂災害の被害にあった他、「農林水産関係の被害額は1729億円にも上る」と中田さんはその被害の大きさを強調。また、カリフォルニア州の大規模山火事は「『これまでにない規模』とされた昨年の同州での大規模山火事の20倍もの規模」(中田さん)だ。中田さんはこれらの災害が悪化している原因として「(山火事の原因となる)熱波や豪雨は、温暖化がなくても、今まで起きてきた。でもその確率が明らかに(温暖化によって)高まる」と指摘する。「気温が上昇し40度、50度を超えるような国々が出てきている、そうなると自然発火しやすくなる」「そして海水温も上昇している。より大きな雲ができるようになって豪雨が降る」(中田さんの動画より)。

 

 蛇足ながら、筆者が補足すると、令和二年七月豪雨と温暖化の関連性については、気象庁の異常気象分析検討会も「日本では、長期的には極端な大雨の強さが増大する傾向がみられており、アメダス地点の年最大72時間降水量の基準値との比には、過去30年で約10%の増加傾向がみられる」とした上で、「今回の一連の大雨においては地球温暖化による長期的な水蒸気量の増加が降水量を増やした可能性がある」と述べている(関連情報)。また、近年のカリフォルニア州での山火事の増加については、米国の専門家達も、温暖化との関係を指摘している。「憂慮する科学者同盟」の分析によれば「米国西部の山火事は1980年代半ばから2000年代にかけて増加しており、ほぼ4倍の頻度で発生し、6倍以上の面積を焼失させ、ほぼ5倍も持続している」という。温暖化により、春と夏の気温が高くなり、雪解けが早くなると、土壌が乾燥し、山火事が発生しやすくなり、かつより激しく長時間燃えるというわけだ。

 この様に異常気象の頻発など温暖化の脅威がいよいよ現実のものとして我々に牙を剥き始めており、「未曾有の大災害」の規模が年々より悪化し続けているのだが、そうした危機感が日本ではまだまだない状況だ。中田さんは「(温暖化と異常気象の関係に)なぜ我々は気づけないか。それは、声高に報道するメディアがないから」と指摘する。筆者も中田さんに大いに同意する。温暖化が私達の生活や未来に及ぼす影響から考えれば、報道はもっと温暖化に関する話題の優先順位を高くして報じるべきなのだ。

◯病気や紛争も増える

 『地球に住めなくなる日』を元に、温暖化が人類の存亡すら左右する危機なのだと中田さんが訴えていることも、筆者としては大変重要な指摘だと感じている。日本の大手メディアでは、なかなかそこまで踏み込むことがないからだ。中田さんはその動画の中で「温暖化の影響で見たことのない病気が増える」と危惧する。「今まで永久凍土の中に封じこまれた、まだ見たことのない細菌やウイルスが(永久凍土が溶けることで)出てくる」「気温上昇により生態系が変わる。そういうものも対応してウイルスも進化する。新型コロナウイルスも、もしかしたら地球の環境変化によるもの、かもしれない」(中田さんの動画より)。

 感染症だけでなく、戦争や内戦などの地域紛争も増えることが予想される。「『地球に住めなくなる日』によれば、紛争は(異常気象などの)災害の数カ月後に起きることが多い。災害によって組織や社会がピンチに陥った後に荒れる」(中田さんの動画より)。

 蛇足ながら補足すると、実際、シリア内戦の要因の一つとして、大干ばつによる不作、食物価格の上昇が農民や貧困層の政権への不満を高めたなど、温暖化が関係しているとの分析もある。同様に、エジプトで約30年間続いたムバラク政権の独裁が2011年に終焉を迎えたのも、それだけではないにせよ、温暖化の影響があるのだ。

◯温暖化は人類存亡も左右する

 「温暖化で今いる生物がほぼ絶滅」しうるというのも重要な指摘だ。地球史上では、生物の大半が滅びるという大絶滅が過去5回あった。「直近の恐竜大絶滅の原因は小惑星の衝突であったとされているが、それ以前の4回は全て地球温暖化によるものだったとされている。つまり地球の覇者を何度もリセットしてきたのは、常に温暖化だった」(中田さんの動画より)。

 蛇足ながら、補足すると過去の地球温暖化は、とてつもない大規模の火山活動による大気中のCO2やメタンなどの温室効果ガス濃度の上昇が原因だとみられている。急激な温度上昇とそれにともなう環境の変化に多くの生物種が対応できず、絶滅したのだというのだ。今年4月に科学誌「ネイチャー」に掲載された論文によれば、約2億100万年前の三畳紀の大絶滅(約80%の生物種が絶滅)での、大気中CO2濃度は、21世紀中に予測されるCO2排出量とほぼ同じだというから、人間の活動によって、過去の大絶滅と同じようなことが今後起きうるということである(関連情報)。これは、本当に戦慄すべきことだ。

◯メディアは優先順位を考え直せ

 その他、中田さんは、温暖化対策の国際的な動きや、グレタ・トゥーンベリさんら温暖化防止を求める若者達の活動、石炭火力発電の推進などの日本の政策の問題点も取り上げているので、是非、本稿の読者各位もご視聴されることをおすすめする。

 複雑な問題をわかりやすく伝える中田さんの手腕は素晴らしいが、本来、これはメディア、とりわけマスコミ大手がやるべきことである。メディア関係者は、中田さんに見習い、何が本当に伝えるべきことなのか、優先順位を考え直すべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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