新型コロナウイルスにより、現在もなお世界各国で多くの人々が苦しみ、命を落としていることは、本当に痛ましいことだ。だが、ピンチはチャンスでもあり、新型コロナ禍の教訓から社会をより良くしていくことも、また可能なのかもしれない。ロックダウン(都市封鎖)や一律の現金給付など、各国が思い切った政策を断行している中、今まで政治が渋ってきたことを実現させ、閉塞感を抱えた社会が大きく変えることができるかもしれないのだ。人々の命や生活を守ることを最優先するということは、また人類の存亡も左右する環境問題へ対応することにもつながる。本稿では、新型コロナの温暖化対策など環境問題への影響を論じたい。

◯新型コロナ感染600万人近くに―欧州では徐々に日常へ

 本論に入る前に、新型コロナウイルス禍によって亡くなった人々へ哀悼の意を、そして奮闘する医療関係者や闘病中の当事者に、敬意を表したい。新型コロナウイルスに感染した人々は本稿執筆時点では世界全体で約599万人、犠牲者数は36万6875人に及んでいる(米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめ)。最大の感染者数を抱える米国に加え、ここ最近、急速に感染が拡大したのがロシアとブラジルだ。とりわけ、ブラジルは、ジャイル・ボルソナロ大統領がコロナ感染拡大防止のロックダウンに後ろ向きなため、今後も感染拡大は続くものと見られている。先住民族の居住区での開発を野放しにするなど、人権を軽視するボルソナロ政権の危うさがコロナ対策でも現れたかたちだ。他方、欧州などではコロナ感染拡大のピークは過ぎたとして、ロックダウンの解除へと向かっている国も多い。

◯コロナ対策で大気汚染物質やCO2排出が減少

 さて、新型コロナ禍の中で、あえてポジティブだと言えることは、ロックダウンなどによる、大気汚染の改善や温室効果ガスであるCO2の排出の減少だ。急速な経済発展の代償に、世界最悪の大気汚染に苦しんでいたインドだが、ロックダウン等のコロナ対策で大気汚染が劇的に改善。今年4月のNASA(米国航空宇宙局)の観測によれば、この20年間で最も大気中の汚染物質が減少したのだという。同様に中国でも大気汚染が改善。同国の生態環境省が今月15日に発表したところによれば、同国300以上の都市での大気中の汚染物質が15%減少したという。日本においても、中国から飛来する汚染物質が劇的に減少した。福岡工業大環境科学研究所が昨年末から今春にかけて九州山間部の樹氷に含まれる汚染物質を調査したところ、今年4月は窒素酸化物と硫黄酸化物の比率が2010年以降の最高値に比べて10分の1以下であったとのことだ。CO2排出においても「コロナ効果」は、顕著だ。英イーストアングリア大学のコリーヌ・ルケレ教授らの研究によると、今年4月上旬に世界全体のCO2排出量が前年比で17%減少したという。また、年全体でも、今年末までに現在のようなロックダウンが続くならば、最大で7%の減少となるのだという。

◯「コロナ効果」は限定的、化石燃料から自然エネルギーへ

 ただ、あくまでロックダウンによる効果は一時的なものに過ぎない。ロックダウンが解除されたら、再び、大気汚染は悪化し、CO2排出も増大する。実際、中国ではロックダウンが解除された後、再び、大気汚染の状況はコロナ禍以前に逆戻りしている。また、温暖化による破局的な影響を回避するためには、2030年までに世界全体でCO2を7.5%排出削減していかなければならない。つまり、各国での徹底したロックダウンによる減少すら、決して十分でないし、ロックダウンを2030年まで続けることは、あり得ない。ただ、それでも、新型コロナ禍の経験を、大気汚染の解消や温暖化防止に役立てることはできるだろう。何が、根本的な問題なのかを多くの人々が認識するという点で、「数十年ぶりにヒマラヤ山脈が見晴らせるようになった」(インド北部の住民達)といった経験は大きい。

 大気汚染にしても、温室効果ガスの排出にしても、最大の原因は石油や石炭などの化石燃料の使用だ。特に石炭火力発電による排出、自動車などの交通関連による排出の割合は大きい。だからこそ、この分野でのエネルギー消費を、化石燃料から太陽光や風力等による自然エネルギー(再生可能エネルギー)へと切り替えていくこと―電気自動車の普及など交通の「脱化石燃料化」も含め―こそが重要であると、「コロナ効果」は改めて証明したのである。元々、脱石炭の流れは、ここ数年で大きく進展した(ただし、安倍政権が石炭火力を推進する日本を除く)。