「自己責任論」の大いなる矛盾―安田純平×志葉玲 その3

安田純平さん(左)と、相沢恭行さん(右)

 昨年9月下旬、筆者の友人でフリーカメラマンの杉本祐一さんが病に倒れ、その波乱の生涯を終えた(享年62歳)。杉本さんは、2015年2月、シリア北部コバニを取材する予定であったが、外務省によってパスポートを強制返納させられた。メディア関係者の旅券強制返納は、戦後初。その後、常岡浩介さんも旅券を無効化され、安田純平さんもパスポートが発給されないなど、紛争地を取材するジャーナリスト達への渡航制限が続いている。生前、「安倍政権に僕の職業生命は断たれました」と語っていた杉本さん。その杉本さんを追悼し、安倍政権による「報道の自由」への弾圧を語るイベントが先月6日、都内で行われた。司会進行・聞き役は筆者(志葉玲)、ゲストはジャーナリストの安田純平さん、イラク他中東での文化交流・人道支援を行うミュージシャンの相沢恭行さん等。

以下、前回配信*の続きから

*旅券発給拒否は違法、シリア拘束からの解放の内幕―安田純平×志葉玲 その2

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20191231-00157216/

◯国際情勢の生情報を収集しない日本

安田:杉本さんの事件のときに、外務省というのが国際情勢とかそういうものの情報収集をする専門家であるから、そういう判断を外務省に委ねるのは当然であるという判決だったんです。全然情報収集なんかできていないわけです。情報収集は一部の人間だけでやってもきりがないというか、全く足らないので、例えば紛争地に入ったNGOとかジャーナリストとかいると、その出身の国の大使館とかいろんな人が話聞きに行くわけです。役人が自ら中に入って見るわけにはいかないので、いろんな現地に入った人から情報を集めて、とにかくたくさん集めて、その中から使えそうなものを見ていくわけです。そうやって集めていくのですが、今は日本の政府というのは説教しに来るわけです。NGOなんか現地にほとんど入れてないです、今。日本のNGOは資金がないので、外務省からの資金が入っているんです。そうすると、外務省から説教されると、どうしても逆らえないというのがあって、世界中のNGOが入っている場所にも日本のNGOは入っていない。その近くにはいるけれども、日本のNGOだけは帰っちゃっているとか、そういうことが起きているんです。それはもうずっとやっている状態なんです。だから、全く情報なんか取ろうともしていない国なんです。

 イラク戦争のときも、アメリカが大量破壊兵器があるとか、アルカイダとの関連があるとかいろいろ言って、戦争をやって、結局その後なかったわけです。外務省は、その報告書として、独自の情報がなかったから判断のしようがなかったと言っているのですが、独自の情報なんかそもそも取る気がないじゃないですか、ということなんです。他の国から情報をもらえるものじゃないんです。情報は金じゃないです。自分の国ではものすごくお金をかけて取ってくるわけですが、情報というのは簡単に売れるものじゃないわけです。情報というのは基本的に物々交換になるんです。情報を持っていないあほに情報はあげないんです。情報を持っているような人から有益な情報をもらいながら、こっちの情報もみつくろって渡してという、そういう関係なんです、このインテリジェンスの世界というのは。そういう中で、日本側が持っている情報なんて、はっきり言って全然ないわけなんです。という国が、じゃあ日本独自の情報情勢分析をして、日本独自の方針を立てるなんていうことができるわけないということで、日本が目指しているのは、そういう独自の判断をし、独自の方針を決める国というのはもう目指していない、日本の国として、ということなんです。なおかつ、日本社会としてそれでいいということになっちゃっています。杉本さんの裁判というのは、まさに日本がどういう国になっていくかという話だったんですが、メディアも含めて、旅券没収は当然だろうとか、そういう論陣を張ったわけです。結構来るところまで来ちゃったなあというのが私の印象です。

◯矛盾した「自己責任論」

 さっき中川先生、自己決定、現場に行くのか行かないのかというのは自己決定の話でしょうという話ですが、こういう話になると、必ず自己責任論が出ます。責任というのはどういうときに発生するかというと、自己決定したものに対して発生するわけです。自分が決めたものじゃないものに対して責任を要求されても、それは私が決めたんじゃないですということじゃないですか。責任というのはどこに発生するかというと、選択の自由があって、選択をした者、もしくはあえて選択しなかったもの、本人が選んだもの、結果に対して、起きたものに対して責任が発生するわけです。それ以外のものを要求したって、それはもう答えようがないわけです。

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