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「日本人」って何?新しい概念が必要-多様なアイデンティティーの子ども達を受け入れよう

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
東京入管の前で、収容されている父親の解放を求める難民の女の子 筆者撮影

 迫害から逃れて来た難民や、日本に家族がいるなど、母国に帰るに帰れない事情を持つ在日外国人の人々。そうした人々を個々の事情を十分に鑑みることなく、法務省・出入国在留管理庁が次々に収容施設に「収容」し、かつ被収容者に医療を受けさせないなど、重大な人権侵害を行っている。そこで筆者は、在日外国人の人々に寄り添い、法務省・入管の問題に取り組み続けている織田朝日さんを招き、今年5月に勉強会を開催した。本稿は、その内容をまとめたものである。筆者と織田さんとのやり取りの書き起こしは数万字に及んだため、分割して配信する。本稿は前回*の続きである。

*トランプ政権より非道、法務省・入管の難民ヘイト-織田朝日さんトーク

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20190920-00143365/

本稿の主な内容は以下の通り。

・諸外国に比べ自由の無い日本の入管の収容施設

・職員の気分次第で変わる収容施設のルール

・家族の面会のために仕事を辞めさせられた人も

・難民の女の子へのいじめ、学校が放置

・日本人って何?新しい概念が必要

・外国人労働者を呼ぶ前に難民や在日外国人を受け入れよう

○外国に比べ自由の無い日本の入管の収容施設

 志葉:牛久入管で、インド人の方が首をつって亡くなられたということもすごい衝撃を持って受け止められたわけなんですけども、過去の事例で言うと、このクマルさんだけではなくて、何人もの方が自殺されていますし、また自殺未遂になってくると、いちいちカウントできないぐらい多いという、やっぱり状況。それは個人のやっぱりメンタルのうんぬんの問題じゃなくて、そういう環境。これだけ多くの方が自殺未遂をするというのは、やっぱりそのような環境が、入管の運用の仕方、状況が絶対的におかしいわけです。ガラス越しの面会というのも本当おかしな話で、例えばイギリスの入管施設なんかだったらそんなことやらないです。だからちゃんと触れ合えますし、もっと自由度広いわけです。中でインターネット使ったりとかしているぐらいなので。

東日本入国管理センターでの収容中に自殺したクマルさんの顔写真を手に抗議 JR新宿駅前での入管への抗議集会にて 筆者撮影
東日本入国管理センターでの収容中に自殺したクマルさんの顔写真を手に抗議 JR新宿駅前での入管への抗議集会にて 筆者撮影

織田:外も出れます。

志葉:出れますしね。だからそもそも入管施設というのは、なんらかの事情で、退去強制ないしは難民申請をしたりだとか、そういうような、一時的にそこにいてもらうだけであって、そんな無期限に、しかもそういって嫌がらせをどんどんして精神的に追い詰めていくような施設は本来ではないはずなんです。ところがやっぱり非常に外国人ヘイトというか、そういうヘイト施設になってしまっているという問題があるわけです。

織田:そうなんです。大体、他の先進国とかであれば、悪いところもあるけれども、やっぱりガラスなし面会で土日も面会できたり、日本の入管だと本当に3時ぐらいで締め切っちゃったりとか、平日じゃないと駄目とか、子どもは学校休んでいかなきゃいけないし。土日も面会できればいいんだけど、できなかったり。でも他の、もう本当にイギリスとかだと、イギリスはいいとは言いません、絶対。収容所である限りはよくないんです、どこだって。スウェーデンとかもそうだけど、本当にいかに、外出許可も取れば外出もできるし。難民を保護する施設であるのだから、そんな閉じ込めて嫌がらせをするという発想ではないんです。本当にインターネットもできるし、携帯も持てるし、ある程度本当に娯楽施設もあるし、ちょっと違いますよね。職員たちは、いかに彼らが心の傷を負わないようにとか、それでも自殺する人はいるから、しないようにとか話し合って、より向上に努めているわけです。それを東京入管は、よそはよそ、うちはうちって、まさにこの前、総務課に言われちゃったけど。

志葉:そんなこと言ったんですか。

織田:「他の国と日本は違いますからね」って言われた。

志葉:全然違わないですよ。例えば子ども権利条約だとか、いわゆるノンルフールマン原則だとか、国連からの勧告だとか、よそはよそなんて、そんなことを言っているんだったら国連脱退したらどうですか。

織田:正しくは、うちは日本だからって言いたい。

志葉:だからうちは日本だからって、そういうもんじゃないですよ。日本だろうがどこだろうが、国際法や条約はちゃんと守らないといけません。

織田:言っていることはそうなんですね。よそはよそ、うちはうちということなんです、まさに。ひどいですけど、似たようなことを、今の新しい入管庁長官も言っているじゃないですか。佐々木聖子さんも、日本ならではのみたいなことを言っているじゃないですか。いやいやいや。日本ならではじゃ困るんです。

志葉:ならでは困るんですよね。

○職員の気分次第で変わる収容施設のルール

織田さん(右)と筆者 撮影:藍沙
織田さん(右)と筆者 撮影:藍沙

織田:だからもっといいことを学びましょうと言っているんですけど、こっちも言うんですけれども。あと入管庁になって、もう一つ強烈に変わったなというのが、やっぱり支援者つぶし。

志葉:ちょっと調子に乗ってますね。

織田:私も去年つぶされそうになって、九死に一生を得たんですけれども。でも、なんかじわじわとやるんです。例えば、私とかは結構面会する人多いから、1回10人まで、(面会申し込み用紙を)10枚出すんです。一人一人相手の名前を書いて。10枚まで出して、それで時間が終わって、それで面会室に入って、代わる代わる10人が出てくるんですけれども、それが終わったらまた1階の受付に行って、また10枚出せるんです。時間がある限りそれはできるんですけれども。それが6月10日から2人までしか受け付けませんよってなって、そうすると、牛久のやり方と一緒なんです。牛久入管も、それはそれは面会できないんです。回せないっていうか。それが東京入管でそれをやっちゃうとすごい大変で、2回までっていうとすごい。去年なんか、急に14歳以下の子どもは付き添いだったら、子どもは何も書かなくてよくて、例えば私だったらボランティアで、子どもが夏休みだったら一緒に来なきゃいけないじゃないですか、例えば。そうすると、別に子どもの分は書かなくてよくて、自分だけ10枚出してたんですけど、去年も、私のための嫌がらせかって思ったんですけど、子どもも書くようにしてくださいって言われて。子どもの分を10枚書かなきゃいけないんです。なんなの、それと思って、理由を聞いたら訳分かんなくて、やっぱり。それは親子面会で、本当の親子か確認するためで、「織田さんには関係ない話ですけど大変ですね」って言われたの。

志葉:分かっているんだったらやらなくていいじゃない。

織田:受付のI君に言われたんです。本当に、ちょいちょい私も。

志葉:ちょっとやっぱり、ここは私もちょっと突っ込み入れてやんないと駄目ですね。織田さんはハーバー・ビジネス・オンラインで自分でニュース配信できちゃうんですから、どんどん書いちゃえばいいんですよ。

織田:どんどん書いちゃうしかないですね。

志葉:私も付け足ししますけど。

織田:ただやっぱり、記者だと認めてしまいますと全く面会できなくなっちゃうので。

志葉:確かにね。

織田:志葉さんなんかやりづらいと思うんです。

志葉:私は、十分下調べしてから面会することが多いんで、別に面会できなくてもいいやぐらいな感じでやってはいるんですけれども。でもなんかちょっと、入管側の記者だっていうとやっぱりかなり構えてくるんで、確かに一般市民ですよっていうスタンスでやったほうがいいかもしれませんね、織田さんは。分かりました。じゃあ織田さんいじめている件については私がちょっと入管にまた突撃していきますんで。

織田:お願いします。でも、結局その10枚、10枚、子どもの分も10枚、私も10枚出すことで、受付が「え?」ってびっくりするんです。受付の女子たちが。ああ、そっかって言って受け取るんですけど。結局上が決めるんだけど、受付の人たちもかわいそうで。結局それで大変になるのは受付の人たちで。私も結構がつがつ言ってるほうだけど、そんなに受付の職員とまではぎすぎすやっているわけではないんで。だからなんか申し訳ないなと思うことも、逆に申し訳なくなっちゃったりもするんですけど。

志葉:そもそもその入管の中のそういうルールっていうのは、どういう形で、明文化されてないんじゃないのというところがあって、ちゃんとそれは行政機関なんだから、ちゃんと明文化するべきだと思うんですよね。どうしてもセキュリティー上とか、明かせないような部分もないわけじゃないのかもしれませんけれども、できるだけそれを第三者から見て納得がいくようなことにしないといけないんですけど、もうやりたい放題ですよね。そのときの気分次第で変えていくみたいなところが入管にはあって。前も、やっぱり織田さんいじめだと思うんだけど、入管で新たな謎ルールが張り出されたことがあって、そのことについて私が電話でがんがん追求していたわけです。そしたらその謎ルールがなぜか張られなくなったんですけど、それからしばらくたって、こっそり復活してたりだとか。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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