今月20日に世界が変わる?破局的な結末か生存ルートかー気候危機に立ち上がる日本の学生達

今年3月、都内で行われた温暖化防止を求める若者達のアピール 筆者撮影

 頻発する異常気象等、その脅威がいよいよ現実のものとなっている地球温暖化(気候変動)。今月23日には米国ニューヨーク市で気候サミットが開催され、それに合わせて、同20日、世界各地で温暖化防止策を求めて市民達が声をあげる。日本でも、学生などの若者達が全国でアピールを行う予定だ。こうした中、今月10日、毎日新聞社主催の「毎日メディアカフェ」で、国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多副センター長、国際環境NGO「FoE Japan」気候変動担当の高橋英恵さん、温暖化防止策を求める若者達のネットワーク「Fridays For Future Tokyo」のメンバー達が発言。温暖化への危機感を共有した。

○異常気象の頻発、健康被害の増加

 江守さんは、地球温暖化の将来予測とリスク論が専門で、世界各国の政府関係者らが参考とするIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の、第5次・第6次評価報告書主執筆者という大役を務めている。10日の毎日メディアカフェでの環境セミナーでは、江守さんは、「世界の平均気温が1度上がることにより、個々の異常気象が強くなっていると科学的に言えます」と指摘。温暖化の進行を放置するならば「異常気象が増え、豪雨被害や熱波による健康被害が増加します」と警告した。温暖化による不可逆的、つまり取り返しのつかない影響を避けるため、江守さんは「産業革命以前から世界平均気温の上昇を2度以下、できれば1.5度以下に押さえる必要があるというのが、(温暖化防止の世界的な合意である)パリ協定で確認されたことです」「1.5度の世界平均気温の上昇で平気なわけではありません。既に温暖化の影響で大変なことになっていますが、せめて、1.5度までで止めたいということです」と解説。その上で、「既に産業革命時と比較して、世界の平均気温は1度上がってしまっています」「パリ協定での目標実現と、(世界の)現状の対策には大きなギャップがあります」と警鐘を鳴らす。「今のペースだと2040年前後には世界平均気温は1.5度上がってしまうというのが、IPCCの評価です」(同)。

解説する江守さん 筆者撮影
解説する江守さん 筆者撮影
対策を怠れば破局的な影響は避けられない 筆者撮影
対策を怠れば破局的な影響は避けられない 筆者撮影

○温暖化防止に逆行する日本の政策

 高橋さんは「温暖化対策は、省エネや再生可能エネルギーの普及など温室効果ガスの排出を抑える『緩和』、既に起こりつつある影響の防止、軽減のための備えである『適応』、異常気象等による被害や海面上昇による土地の消失など『適応』の範囲を超えた影響への対応である『損失と被害』という3つの分野に定義されます」と解説。また、先進国に比べ、温室効果ガス排出が少ないにもかかわらず、温暖化による悪影響を被っている途上国が上記のような温暖化対策を行うためには資金が必要と指摘。温暖化対策のための「気候資金」をフランスが倍増させたことを例にあげ、日本もこれに続くべきと語った。また、高橋さんは、温暖化の最大の原因である石炭火力発電を日本が推進していることを批判、「高効率型の石炭火力であっても、温暖化対策に含めるべきではありません」と強調した

発言するFoE Japan高橋さん、Fridays For Future Tokyo のメンバーら 筆者撮影
発言するFoE Japan高橋さん、Fridays For Future Tokyo のメンバーら 筆者撮影

○日本でも学生達が立ち上がった

 「Fridays For Future Tokyo」のメンバーとして発言したのが、大学生の太田紘生さんと野中海皇さん。9月20日の世界同時アクションデーにむけ、「日本では、声をあげることがタブー視されがちですが、一緒に温暖化対策について考えてもらいたいです」と意気込みを語った。「Fridays For Future(未来のための金曜日)」とは、スウェーデンで当時15歳であったグレタ・トゥーンベリさんが、「政治家達は温暖化対策に真剣に取り組んでいない」「世界が滅ぶというのに学校なんか行ってられない」と同国の国会の前で座り込みを始めたことへ、スウェーデンのみならず、各国の子どもや若者達が共感して行われるようになった、世界的な温暖化防止のムーブメント。トゥーンベリさんが金曜日に座り込みをしていたことが、その名の由来だ。今年3月には、世界160の国と地域で子ども・若者達が「私達の未来を燃やすな!」「地球の代わりは無い」等のプラカードを掲げ、大人達に温暖化防止への具体的な行動を迫った。

日本でも、トゥーンベリさんの訴えに共感した大学生達が、「Fridays For Future Tokyo」として行動を開始。太田さんと野中さんもメンバーとなった。二人は、「これまでに2回、東京・渋谷と霞が関でグローバル気候マーチを開催しました。この9月20日に3回目を行います」「今回は子ども・若者だけではなく、全ての年齢層の人々に参加を呼びかけています」と訴えた。東京でのグローバル気候マーチは、20日、国連大学(渋谷区)に17時に集合、同30分から、渋谷周辺を練り歩くという。また同日やその前後は、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地で温暖化防止を求めるパレードやイベントが企画されている*。

*グローバル気候マーチ

https://ja.globalclimatestrike.net/

 日本ではまだ小さな動きではあるものの、世界的には、「Fridays For Future」に象徴されるような温暖化防止を求める市民の声は、かつてない程に高まっている。そこにあるのは、「大人達に任せていたら自分達の未来は失われてしまう」という子どもや若者達の危機感だ。彼ら彼女らの親、祖父母の世代も、そうした声に動かされている。実際、江守さんは「今月20日は、それを境に世界が変わる日になるのでは」と期待を寄せた。

○やるか、やらないか。大事なのは選択すること

 温暖化対策で大切なのは、それを実現する意志があるか、ないか、ということである。石炭や石油などの化石燃料から再生可能エネルギーへの転換や省エネ等、温暖化対策でやるべきことは既に明白であるし、現在の技術で対応できるものだ。温暖化対策については、日本では、いわゆる「乾いた雑巾」、つまり日本は既に省エネを十分やってきたので、これ以上、温暖化対策を行う余地はないといった言説が幅を聞かせてきたし、米国や中国こそが温暖化対策を行うべきだ、という責任転嫁も行われてきた。だが、江守さんは「米国ではトランプ政権は温暖化防止に消極的ですが、カリフォルニア州などの大きな州や、多くの大企業が積極的に取り組んでいます。中国も再生可能エネルギーを劇的に増やしています。日本はむしろ置いていかれています」と語る。

 温暖化は未来の危機ではなく、今まさに日本の人々の命や生活を脅かしている危機だ。昨年の西日本豪雨災害や記録的な猛暑について、気象庁は「地球温暖化に伴う気温の上昇と水蒸気量の増加」による影響も大きいと認めている。また、環境省や名古屋大学等の研究では、温暖化の進行により日本に上陸する台風が強大化するとも予測されている。日本では政府も企業も、そして一般の人々も、まだまだ危機感が足らないが、自身や、これからの世代の命と生活を守るため、日本の人々はもっと温暖化対策に本気になる必要がある。今月20日の世界同時アクションデーは、温暖化に対する本気度を示す、絶好の機会なのだ。

(了)

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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