日本は100%、パレスチナ占領ビジネスに加担する―イスラエルとの投資協定に批判、NGO等が集会
参議院議員会館で今月6日、日本・イスラエル投資協定を憂慮する市民団体や国会議員による集会が行われた。日本・イスラエル投資協定は、今年2月、岸田文雄外務大臣とイスラエルのモシェ・カハロン財務大臣との間で結ばれ、先月に衆議院で承認。参議院でも承認間近とされている。しかし、国際法違反や人権問題で国際的に批判を浴びているイスラエルと投資協定を結ぶことは、同国の問題に日本が加担することになるのではないか―6日の集会ではそうした懸念の声が相次いだ。
〇人権侵害、国際法違反の中で培われた技術
特にセキュリティー関係に優れた技術を持つなどして、日本政府や企業から熱い視線が注がれるイスラエル。だが、こうした技術はイスラエルが行ってきた戦争や人権侵害の中で培われてきたもの、と「パレスチナの平和を考える会」の役重善洋さんは指摘する。「日本側から注目されているイスラエルの技術は主にサイバーセキュリティ関連ですが、こうした技術を持つ企業は軍関係者が立ち上げたものが多く、国際法違反の入植地や分離壁などのセキュリティーやパレスチナの人々の監視など、イスラエルのパレスチナ占領に密接に結びついている技術です。」(役重さん)。元国連人権高等弁務官事務所パレスチナ副所長で、国際NGO「ビジネス・人権資料センター」日本支部代表の高橋宗瑠さんもイスラエルの軍事企業について「自社の製品の売り込み文句として言う『実戦で実証済み』も、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を意味します」として、血塗られた技術に日本が加担することの問題を訴えた。
〇占領ビジネスには100%加担することに
仮に軍事企業でなくても、イスラエル企業と関わること自体がパレスチナ占領に関わることになると、高橋さんは断言する。「日本の企業と取引するような、大手のイスラエル企業で、入植地などの占領ビジネスに関わっていない企業などありません。イスラエル企業と取引してパレスチナ占領に加担しない可能性はゼロです」(高橋さん)。役重さんや高橋さんが問題視する「入植地」とは、第三次中東戦争(1967年)でイスラエルが占領したヨルダン川西岸及び、併合した東エルサレムで建設される、イスラエル人及び国外から移住してくるユダヤ人のための住宅地のこと。占領地に自国民を移住させることは国際法(ジュネーブ第4条約)に反する上、パレスチナを独立国とする代わりに、イスラエルの生存権も認めるという中東和平の大きな障害となっており、日本政府のスタンスにおいても入植地の拡大自体には反対し続けている。だが、今回の投資協定はそうした日本のこれまでの外交スタンスとも矛盾するものだ。
〇野党側も認識不足、「人権に無関心な国」でいいのか?
日本・イスラエル投資協定について、政府与党のみならず、本来は外交姿勢の矛盾を追及しなくてはならないはずの野党側も充分な問題意識があるとは言い難い。衆議院外務委員会では、野党側も民進党、自由党、社民党が日本・イスラエル投資協定に賛成、反対は共産党のみだった。6日の集会では、大野元裕参議院議員(民進)、井上哲士参議院議員(共産)、山本太郎参議院議員(自由)が参加、日本・イスラエル投資協定に反対していくことを表明した。参議院でも、日本・イスラエル投資協定は近々承認される見込みではあるが、前出の役重さんは「投資協定が承認されてもそれで終わりではなく、むしろこれから日本がイスラエル占領ビジネスに加担しないようチェックしていかないといけない」と語った。イスラエルが、近年、日本に接近しているのは、これまでの主な取引先だった欧州各国が入植地問題やガザ攻撃などから、イスラエルとのビジネスから撤退する傾向があるからだ。イスラエルとの関係強化は、日本が「人権に無関心な国」であるということを国際的にアピールするようなものである。政府与党も野党もそうした認識を持って、イスラエルとの外交関係を考えるべきなのであろう。
(了)