Yahoo!ニュース

ナチス酷似衣装が東京五輪にも飛び火―秋元康氏が五輪組織委の理事で大丈夫か?

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
米有力誌『TIME』もナチス酷似衣装を報道

アイドルグループ「欅坂46」(けやきざかフォーティーシックス)が、ナチス制服に酷似した衣装を着たことについての問題点については、前回配信の記事で書いた通りだが、本件、海外のメディアでの報道がさらに広がっている。

○一斉に報じる各国メディア

世界的な通信社のAP通信がナチス酷似衣装について配信、それを米国の有力紙『ニューヨークタイムズ』(電子版)が掲載。さらに、米国三大放送ネットワークの一つであるCBS系列の『CBSNEWS』もこの問題を取り上げた米有力誌の『タイム』も、欅坂46が所属するソニー・ミュージックが謝罪したことを報じた。ナチスを称賛する行為を違法としているドイツでも複数のメディアが報道。そのうちの一つ、ニュースサイト『Salzburg24』は、欅坂46がYOUTUBEで公開しているPV(プロモーションビデオ)も紹介しているが、このPVの中では、メンバーの一人がナチス式の片手を高く掲げる敬礼に酷似したポーズをとっており、新たな火種になりかねない。

○英紙『ガーディアン』が東京五輪との関係を指摘

これらの報道の中でも、特に注目すべきなのは、イギリスの有力紙『ガーディアン』だ。同紙の記事では、欅坂46を「2020年東京五輪組織委員会の理事がプロデュースするガールズバンド」だとし、また「このバンドのプロデューサーである秋元康氏は東京2020オリンピック開会式の演出に関わるとみられる」と書いている。つまり、欅坂46自体よりも、秋元氏に焦点をあてた記事であり、彼が東京五輪の演出に関わることを問題視するニュアンスも感じられるものだ。ナチス衣装は、欅坂46というグループのみならず、東京五輪にも泥を塗ってしまったともいえる。このような事態を招いた以上、単に「不快にさせてすみません」とコメントするだけではなく、秋元氏は東京五輪組織委員会理事を辞任すべきではないか。

○反省のない国というイメージ

そうでなくとも、既に日本を観る海外の目は安倍政権の下で厳しくなっている。米国の『ニューヨーク・タイムズ』『ウォールストリート・ジャーナル』『BBC放送』など海外有力メディアは靖国神社参拝や、慰安婦問題についての歴史認識についてなどで安倍政権を繰り返し批判している。日本は過去の戦争で犯した戦争犯罪について、全く反省がないとみられているのだ。今回のナチス制服酷似の衣装の件も、そうした印象を多くの国々の人々に与えることになるだろう。日本では、とりわけネットユーザー達は海外からの批判に逆ギレする風潮もあるが、そうした感情的かつエセ愛国主義的な姿勢こそが、むしろ日本を貶めているということに気が付くべきなのである。問われているのは、欅坂46や秋元氏だけではない。彼女ら、彼らが、忌まわしき戦争犯罪を恐るべき規模で行った存在のコスプレをするという発想ができてしまう、日本社会全体としての歴史に対しての浅はかさなのだ。それは、この間、自民党政権や石原都政の下で平和教育が弾圧されてきたこととも直結することなのだろう。今回の件を機に、多くの日本の人々が重い歴史を受け止め、それを教訓とするということを改めて考えたり、今の安倍政権下の日本がどのようなものであるか、客観視したりしてもらえたら、と願う。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

志葉玲のジャーナリスト魂! 時事解説と現場ルポ

税込440円/月初月無料投稿頻度:月2、3回程度(不定期)

Yahoo!ニュース個人アクセスランキング上位常連、時に週刊誌も上回る発信力を誇るジャーナリスト志葉玲のわかりやすいニュース解説と、写真や動画を多用した現場ルポ。既存のマスメディアが取り上げない重要テーマも紹介。エスタブリッシュメント(支配者層)ではなく人々のための、公正な社会や平和、地球環境のための報道、権力や大企業に屈しない、たたかうジャーナリズムを発信していく。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

志葉玲の最近の記事