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シロクマ、ゆるキャラ、女子大生「今すぐ温暖化ストップ!」ーCOP21開幕、世界の命運かけた会議にむけ

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
29日、京都で開催されたアースパレード2015 撮影:志葉玲

パリで今日30日から、地球温暖化のための国際会議COP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)が開催されるのを前に、29日、京都では「アースパレード2015」として、約500人が温暖化防止を訴え、デモ行進を行った。世界的な異常気象の頻発に加え、米国や中国などのこれまで温室効果ガス削減に後ろ向きだった国々も、排出削減へ舵を切るとして注目されるCOP21。開催にむけ世界数十か国、数千万人が一斉に温暖化防止を求めるアクションを行うと観られているが、今回の京都でのアースパレードも、そうした国際的なキャンペーンの一環。28日には東京でもアースパレードが行われ、約1000人が参加している。

〇「最初の犠牲者は私達だったが、次はあなた達かもしれない」

シンキャン・タレシさん
シンキャン・タレシさん

円山公園音楽堂で行われたデモ行進前の集会では、温暖化による海水面上昇により、国家存亡の危機にさらされている南太平洋の島国ツバルから駆けつけたシンキャン・タレシさん(31)が発言。「自分が子どもの頃は、美しい砂浜で遊び、父が畑でつくったタロイモがごちそうだった。でも、こうした伝統的なツバルのライフスタイルは温暖化によって失われようとしています。海水面上昇で、砂浜は水没し、畑にも塩水が入ってきてタロイモが作れなくなってしまった」と、すでに深刻な影響が及んでいると報告した上で「温暖化による最初の犠牲者は、私達だったが、次は貴方達かもしれない。今こそ、世界各国が温暖化を止めるため、力をあわせるべきです」と訴えた。

脱原発運動で知られるアイリーン・美緒子・スミスさんもマイクを握り、「温暖化対策のために原発をという主張が政府や電力会社がしているが、むしろ、真逆です。原発推進こそ、省エネや自然エネルギー推進をはばむもの。原発をなくすことが、温暖化対策にもなるのです」と訴えた。

温暖化を放置すれば、その影響を最も被るのは、若い世代だ。深水瑠偉くん(るい・9)、美鈴さん(みれい・13)もステージ上で、「僕たちが大人になった時、気温がとても高くなって、砂漠ばかりになっているのではないか」「未来に残していくべきものは自然です」と語り、「ちいさなことからでも始めていこうと思います」と呼びかけた。

〇問われる先進国、大量排出国の責任

COP21では今や最大の温室効果ガス排出国となった中国を含め、180以上の国々が2030年に向け、温室効果ガス削減目標を事前に公表するなど、これまでにない前向きな姿勢が観られる。だが、一方で中国や米国などの大量排出国の削減目標は不十分であり、強制力も伴わないなど依然、大きな問題がある。アースパレード2015の主催団体の一つ、「気候ネットワーク」理事長の浅岡美恵さんは、「京都でのCOP3から18年たつが、温暖化対策は、もう当たり前のことになっています。先進国はその責任を果たすべきです」と訴える。

初の温室効果ガス削減の国際的な協定「京都議定書」(1997年)が定められたCOP3の舞台となった、日本も後ろ向きな姿勢が目立つ。安倍政権は今年6月、「2030年までに2013 年比 26%削減」という削減目標を決定したが、これは数字のトリックであり、京都議定書の基準年である1990年からの削減では、17%程度の削減量にしかならない。ことあるごとに「世界最先端の環境技術」を自負する割には、EUの「2030年までの1990年比で少なくとも40%削減」という目標に比べると、ずいぶんとお粗末なものだ。また、安倍政権は、主要な温室効果ガスであるCO2排出割合が現在の発電方式の中でも最も高い、石炭火力発電を推進。温室効果ガス削減のために石炭火力を減らそうという先進諸国の流れから逆行しているのだ。

〇破滅的なシナリオから、人類存続シナリオへ

今すぐ温暖化防止を!と訴える参加者ら
今すぐ温暖化防止を!と訴える参加者ら

円山公園音楽堂でのリレートークの後、会場の参加者一同が「Climate Action Now !(今すぐ温暖化防止の行動を!)」と書かれたフライヤーを掲げ、デモ行進を開始。温暖化で絶滅が危惧されるホッキョクグマの着ぐるみ「シロベエ」や京都市の環境マスコット「エコちゃん」、京都女子大のダンスパフォーマンスサークル「Cotton Candy」などもデモに参加。京都市内を練り歩きながら、参加者たちは、「CO2の排出を減らそう」等と呼びかけた。

今年5月、米国のNOAA(海洋大気局)の観測で「CO2の大気中の平均濃度濃度が400ppmを超えた」として、世界に衝撃が走った。これは過去80万年の中での最大値であり、「危険レベル」とされる450ppmにいよいよ近づいてきたことを意味する。また、世界気象機関(WMO)は今月9日、事務局長コメントとして「熱波や洪水などの極端な異常気象、海面上昇などが既に起こり始めており、それは恐るべきスピードで、未知の領域へと突き進んでいる」と警鐘を鳴らしている。正に、今すぐに温暖化防止の具体的な行動が求められているのだ。

(了)

Cotton Candy
Cotton Candy
サウンドカーでアピールするアースマン
サウンドカーでアピールするアースマン
京都市の環境マスコット「エコちゃん」(左)
京都市の環境マスコット「エコちゃん」(左)

*写真の無断使用を禁じます。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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