2011年8月に書かれたNEWSポストセブンの「テレビを消すとエアコンの1.7倍もの節電効果がある」との記事が拡散していますが、これは2022年現在では誤りです。

ソースは野村総研の2011年のレポート

 この記事の元となっているのは、野村総合研究所が震災復興に向けて2011年4月に発表したレポート(※PDF)です。

 このレポートによると家庭でできる節電対策として「液晶テレビを消す」と220Wなのに対し、「エアコンを1台止める」と130Wの効果があるとされています。

野村総研の「第6回提言家庭における節電対策の推進」より
野村総研の「第6回提言家庭における節電対策の推進」より

 そしてレポートでは各家庭(3,000サンプル)にアンケートを取った結果、「テレビをこまめに消す」の実施率は65%と高いものの、「エアコン台数削減」の実施率は34%に留まるため、期待節電量が大きい割に実施率の低い「エアコンを1台止める」のプロモーション活動を実施すれば、大きな追加の節電効果を期待できるとまとめられています。

 そしておそらく突っ込まれると思いますので書いておきますが、この誤りを世間に拡散したのは2011年当時の筆者です。

 「液晶テレビを消す(220W)」と「エアコンを1台止める(130W)」の数字を見て、「節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が1.69倍効果的」との記事を2011年7月にブログに掲載しました(記事は数年前に削除したため現在は閲覧できません)。

 NEWSポストセブンの記事は翌8月に書かれており、野村総研のレポートが4月であることを考えると推測ではありますが筆者の記事か、それに言及した記事を見て書かれたものだと思われます。つまり火元は私です。申し訳ありません。

 いまになって確認し直してみれば、この「節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が1.69倍効果的」という情報には大きな誤りというかミスリードが含まれています。それは液晶テレビの消費電力が220Wもあるという点です。

液晶テレビの消費電力が220Wを超えるのは40V型以上

 野村総研のレポートでは、液晶テレビの消費電力が220Wとされています。

 このデータの出典がどこなのかは書かれていませんが、エアコンの消費電力の132W(レポートでは丸めて130Wと表示されている)は資源エネルギー庁の『省エネ性能カタログ2010夏版(※PDF)』から算出したとあるため、この資料の液晶テレビの数字を参考にします。

 そうすると、2010年時点で消費電力220Wを超える液晶テレビは大型のものに絞られます。

 例えば当時、各メーカーが販売していた32V型液晶テレビの消費電力は最大値で162W、平均値は98Wです。37V型でも最大値は187W、平均値は152Wです。

 220Wを超える数字は40V型の東芝『REGZA 40A8000』の225Wが初出となりますが、その40V型でも最大値が225Wなだけであり、平均値は158Wとなります。

 平均値が220Wを超えるのは47V型からで、ここで初めて平均値が246Wとレポートにあった220Wを超えます。文字では伝えづらいため、表にまとめると次のようになります。

表は筆者作成。
表は筆者作成。

 つまり野村総研のレポートの「液晶テレビを消す(220W)」は、2010年当時は販売台数シェアで20%強でしかない40V型以上のテレビを対象とした数字であり(参考:10年間、進まなかった液晶テレビの大画面化 40型4K登場でついにシフト始まる?)、これを元に「節電にはエアコンを切るよりテレビを切った方が1.69倍効果的」と書くのはミスリードであると言えます。

液晶テレビの消費電力量は右肩下がり

 なお、消費電力推移の話をすると、液晶テレビの消費電力量は右肩下がりの傾向にあります。

 資源エネルギー庁の『省エネ性能カタログ2020版(※PDF)』によると、液晶テレビの消費電力量はグラフのとおり下がっていることがわかります。

液晶テレビの消費電力量の推移。グラフは「W」ではなく「kWh」な点に注意。『省エネ性能カタログ2020版』より
液晶テレビの消費電力量の推移。グラフは「W」ではなく「kWh」な点に注意。『省エネ性能カタログ2020版』より

 近年はやや微増傾向にありますが、2010年と比べてれば大きく下がっていることに変わりはなく、このグラフを見れば2022年現在に2010年時点の消費電力を持ち出してきて比較するのは誤りだと言えます。

テレビとエアコン、現在はどちらが節電に効果的なのか?

 それではテレビとエアコン、2022年現在はどちらが節電に効果的なのでしょうか?

 結論から言うと「それぞれの大きさによる」のですが、資源エネルギー庁の『省エネ性能カタログ2021版』から消費電力を算出してみました。

 消費電力の算出方法は、資料に従って次のようにしています。

  • エアコン:冷房期間消費電力量(kWh)÷冷房期間3.6ヶ月(6月2日~9月21日の112日)÷1日あたりの運転時間(6:00~24:00の18時間)
  • テレビ:年間消費電力量(kWh/年)÷1年(365日)÷1日あたりの使用時間(5.1時間)

 その結果、出てきた数字は次のとおりです。

エアコンの消費電力(数字は四捨五入。平均値から算出)

  • 冷房能力2.2kW(6~9畳):91W
  • 冷房能力2.5kW(7~10畳):100W
  • 冷房能力2.8kW(8~12畳):114W
  • 冷房能力3.6kW(10~15畳):168W
  • 冷房能力4.0kW(11~17畳):182W
  • 冷房能力5.6kW(15~23畳):268W

液晶テレビの消費電力(数字は四捨五入。平均値から算出)

  • 液晶テレビ 2K未満・30インチ以上:37W
  • 液晶テレビ 2K・50インチ未満:38W
  • 液晶テレビ 4K・50インチ未満:76W
  • 液晶テレビ 4K・50インチ以上:110W
  • 液晶テレビ 8K:246W
  • 有機ELテレビ 4K:125W

 数値はあくまでも平均値ですが、テレビは50インチ(50型)未満であればエアコンよりも消費電力は小さいです。

 また、50インチを超える場合でもエアコンの冷房能力が最低10畳以上になってくるとエアコンと同等くらいになります。

 ちなみに「液晶テレビ 8K」と「有機ELテレビ 4K」の平均消費電力が高いものの、この項目は資料に掲載されているメーカーがシャープのみであり、種類もそれぞれ「液晶テレビ 8K」が7機種、「有機ELテレビ 4K」が5機種と少ないため、他メーカーの数字が入ってくると平均消費電力は大きく上下する可能性があるため注意してください。

 いずれにせよ、10畳以上用の大型エアコンを使っているご家庭では、テレビよりもエアコンを消した方が節電には効果的だと言えそうです(『省エネ性能カタログ』のため掲載されていないのだと思われますが、プラズマテレビだけは消費電力がかなり大きいためエアコンを消すより節電になりそうです)。

熱中症対策にエアコンはつけて。テレビを消そう

 とは言え、この数字をもって「エアコンを消しましょう」と言うわけありません。

 節電が呼びかけられているとは言え、熱中症のことを考えればエアコンよりもテレビを消すべきなのは間違いないからです。