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ウクライナ大使「日本の地震はたかが5分。ウクライナは21日」は誤り。発言は日本在住の宇人学生のもの

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
証拠として掲載されている画像。見てわかるようにリツイート。Twitterより

 ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が、「日本の地震はたかが5分。ウクライナは21日」と発言したとの情報が拡散していますが、これは誤りです。

 この情報は匿名掲示板『5ちゃんねる』に3月17日にスレッドが立てられ、その後、同日中にまとめサイト『ツイッ速!(Twitterアカウント名はツイッター速報)』が記事化したことからSNSなどで拡散し続けています。

大使の発言のように加工されている。ツイッター速報より筆者キャプチャ
大使の発言のように加工されている。ツイッター速報より筆者キャプチャ

セルギー駐日大使の発言ではない。「たかが」も悪意ある付け足し

 まず、問題の発言はセルギー駐日大使がツイートしたものではありません。

 ツイートは日本にフェローシップで滞在しているウクライナ人学生が行ったものであり、セルギー駐日大使はそれをリツイートしたかたちになります。

 念のため、ツイート全文を掲載しておきます(ウクライナ人学生がTwitterのアカウントを削除変更してしまっており、すでに画像でしか確認できないため)。

We may have had an earthquake in Japan for 5 minutes, but Ukraine's nightmare is going on for 21 days. Too long for constant air raid sirens, too long for constant bombing and murder. Too long!!!

日本の地震は5分間だったかもしれませんが、ウクライナの悪夢は21日間も続いています。絶え間ない空襲のサイレンと、爆撃と殺人が繰り返されるのはあまりにも長いです。長すぎます!!!(筆者訳)

 もちろん日本では「(状況によっては)リツイートも本人の発言」との司法判断が下されているため(事例12)、セルギー駐日大使がそのような考えを持っていると主張したい人もいるでしょうが、「セルギー駐日大使が発言した」が誤りであることは明らかです。

 また、「たかが5分」の「たかが」にあたる表現もありません。

日本で地震を体験した直後の発言→後に謝罪

 続いて、「なぜ学生はあのような発言をしたのか?」を掘り下げていきます。

 上述したとおりすでに学生がアカウントを削除鍵垢化してしまっているため、ネットに残る履歴を探すかたちでしか確認できないのですが、学生は発言について次のように謝罪しています。

発言した学生の謝罪ツイート。Twitterより。
発言した学生の謝罪ツイート。Twitterより。

I'm sorry - I was not clear and I wrote the wrong thing. It's been a very emotional time, very worried for my family. I removed the tweet. I was just imagining what if how the earthquake was - the fear - didn't stop in 5 min but kept going for 3 weeks, how terrible it must be

すみません。ハッキリしないまま、間違ったことを書いてしまいました。とても感情的な時間でしたし、家族のことをとても心配していました。ツイートは削除しました。もしも地震が5分で止まらずに3週間も続いたとしたら、それはどんなに恐ろしいことだろうかと想像したのです。(筆者訳)

 また、地震の数週間前に仙台を訪れていたこともその心境に影響を及ぼしたものと推察できます。

5chに投稿されていた学生の投稿。https://kizuna.5ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1647525996/45 より
5chに投稿されていた学生の投稿。https://kizuna.5ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1647525996/45 より

 残念ながらこれ以上は情報を見つけられなかったため、ほかにもあればまた異なる見解になるかもしれませんが、いまのところわかる情報では問題の発言は地震の恐怖体験時に書かれたものであり、その後、謝罪も行われているということです。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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