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「レジ袋有料化は日本学術会議のせい」誤解広がる。「削減」提唱だけで方法に有料化を決めたのは安倍政権

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
(提供:nozomin/アフロイメージマート)

 東京新聞が10月8日掲載した日本学術会議の大西隆元会長の寄稿から、「レジ袋有料化は日本学術会議のせい」との誤解が広がっています。

見出しに「レジ袋有料化は日本学術会議の提唱がきっかけ」

 寄稿の全文は東京新聞で読んで頂くとして、誤解が広がっている理由は2点です。

 1点目は見出しに「レジ袋有料化は日本学術会議の提唱がきっかけ」とあること。

 2点目は寄稿にある

 微細なプラスチック片が分解されずに海に滞留し、摂取した魚、さらに人に害を及ぼすから、プラスチックの利用を大幅に削減しようというキャンペーンが、レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった。

出典:東京新聞

 の部分です。

 これを読むとどう考えても「レジ袋有料化は日本学術会議のせい」となります。

提唱は「使い捨てプラスチックの削減」

 それでは実際にそのような提唱をしていたのかどうか、当時(2019年3月)、安倍総理に手渡された共同声明を確認すると、「海洋プラスチックごみを減らすために使い捨てプラスチックの削減と、環境に蓄積するような素材を使用しないプラスチックの開発に向けた大幅な産業革新が必要だ」にとどまります。

 海洋プラスチックごみの80%以上は、人間社会が営まれる陸地を起因としたものであり(Ribic, 1998 ; Nakashima et al., 2011 ; Hardesty et al., 2017)陸地と海洋の両方から発生した海洋プラスチックごみは、不十分な廃棄処理基盤にもかかわらずプラスチック消費の増加したことが要因であり、海洋環境を悪化させている。

 プラスチックごみの海洋生態系に与える影響を定量的に理解するためにより多くの研究が必要である。使い捨てプラスチックの削減に加え、何世紀にも渡り我々の環境に蓄積するような素材を使用しないプラスチックの開発に向けた大幅な産業革新が必要である

出典:海洋生態系への脅威と海洋環境の保全-特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて-(仮訳)

 提唱のなかのどこを読んでも「レジ袋」の文字は見当たりません。

 つまり、日本学術会議がまとめた共同声明では「使い捨てプラスチックの削減をするように」との提唱はしたものの、その方法として「レジ袋の有料化」を決めたのは安倍政権だということです。

「レジ袋有料化」の功績アピールは悪手

 正直このような記事を書くと「日本学術会議の手先め!」とか「左翼!」とか批判されるのであまり気が進みませんが、「本当か?」と気になって調べたのでその結果として記事に残しておきます。

 それにしてもこの元会長は何を考えて「レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった」などとアピールしたのでしょうか?

 レジ袋有料化はさまざまなトラブルを起こしており、そのようなことを「あれは俺がやりました(アレオレ)」とアピールされても「日本学術会議、お前だったのか」となるだけです。

 政権批判側として名高い東京新聞としても寄稿のため修正するわけにもいかず、あの「レジ袋有料化」功績アピールは誤解による日本学術会議の悪名を広めるだけだと言えるでしょう。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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