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再審法改正へ大きなうねり!超党派の議連設立総会で鈴木宗男議員が大声で発した言葉とは

篠田博之月刊『創』編集長
3月11日の議連設立総会。国会議員と報道陣がぎっしり(筆者撮影)

3月11日、12日と大きな動き

 2024年3月11日、12日と再審法改正へ向けた動きがひとつの山場を迎えている。この後、3月下旬には袴田事件再審公判も山場を迎えるから、再審をめぐる歴史的な動きが広がりそうだ。これまで推進してきた人たちは口々に、今年中に再審法改正がなされなければ、もう何十年も次の機会はないだろうと言っている。そういう重大な局面だ。

 3月11日に行われたのは「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」設立総会だ。与野党合わせて137名という予想を超える大きな勢力での議連発足だが、その後も入会議員が続々増えているという。設立総会の写真を冒頭に掲げたが、衆院第一議員会館の大会議室がびっしり埋まるほど国会議員や報道陣がつめかけていた。

 この日は3・11東日本大震災のあった日でもあり、米アカデミー賞をめぐる話題もあって、この議連発足のニュースはやや小さな扱いになってしまったが、続いて翌日の12日には日弁連(日本弁護士連合会)が「再審法改正を実現する院内会議」を開催。2日連続の大きな動きに、全国からいろいろな人が駆け付けた。

 例えば12日の日弁連集会には袴田事件の袴田ひで子さんも駆け付けた。袴田事件再審公判も今まさに山場を迎えており、再審をめぐる関心は大きく広がっている。

3月11日の議連設立総会で挨拶する柴山昌彦代表(筆者撮影。以下同)
3月11日の議連設立総会で挨拶する柴山昌彦代表(筆者撮影。以下同)

議連設立総会で鈴木宗男議員が突如発言

 3月11日の再審法改正議連の設立総会は、柴山昌彦代表(自民党)、逢坂誠二幹事長(立憲民主党)らの挨拶の後、静岡地裁で袴田事件再審開始決定を出した村山浩昭元裁判官が基調講演を行った。

村山浩昭元裁判官が基調講演
村山浩昭元裁判官が基調講演

 その後、参加議員らの質疑応答の時間になった時、司会から「マスコミの皆様はいったん退出いただきたい」とアナウンス。大勢来ていた報道陣がいったん退席しかけたが、その時…会場から突如、鈴木宗男議員が大きな声で発言した。

「なぜフルオープンでやらないんですか。隠すようなことじゃないでしょう!」

 少しざわめきが起こる中で司会者は「隠すというのでなく、自由闊達な議論をするためにと考えています」と言明。しかし鈴木議員はあきらめることなく「フルオープンでやればいいじゃないですか」とさらに追及。会場からは「その通り!」と呼応する声も上がった。

おかしかったのは「フルオープンで」との表現

 そのやりとりを聞いていておかしかったのは、「フルオープンで」という表現。自民党裏金問題で政治倫理審査会をめぐってごたごたした後、岸田首相の「自分も参加し、フルオープンで」という表明があって事態が急展開したのを思い出させた。いやあ永田町では「フルオープンで」というのが流行語のようになっているのだろうか。

 鈴木議員の食い下がりはなかなかの勢いで、司会が「きょうはそのように説明もしてしまっていますから」と言うと、「じゃあ次回からはフルオープンでやるのですね」と応酬。さらに「再審法改正問題はそれなりの覚悟をもって取り組まないとだめですよ。隠すようなことじゃないでしょう」と追撃。確かに、会場にいるのは国会議員なのだから、非公開にしないと闊達な議論ができないということ自体がおかしいのだが、途中で報道陣を退席させるという発想自体が永田町ならではだ。

 鈴木議員がそのように声を張り上げた背景には、袴田事件をめぐって議員連盟を立ち上げるなど、同議員のこれまでの活動がある。後ろの席で聞いていて私も「その通り!」と声をあげたい気分になった。

3月12日の日弁連集会で発言する鈴木宗男議員
3月12日の日弁連集会で発言する鈴木宗男議員

 鈴木議員は翌3月12日の日弁連の集会でも指名されて発言し、検察批判と再審への思いを訴えた。

12日の日弁連集会で挨拶する小林元治会長
12日の日弁連集会で挨拶する小林元治会長

3月12日の日弁連集会も熱気に包まれた

 12日の日弁連集会も、再審法改正に積極的に取り組んできた小林元治会長のあいさつに始まり、『創』でもおなじみの鴨志田祐美弁護士の基調報告の後、国会議員が次々と挨拶。さらにわざわざ静岡から駆けつけた袴田ひで子さんや、昨年亡くなった布川事件の元えん罪被害者・桜井昌司さんの妻の恵子さんの発言と、熱気に包まれた雰囲気だった。閉会挨拶に立った飯塚事件再審弁護団の徳田靖之弁護士は「今、大きな転換点を迎えています」と発言していた。

ベレー帽がトレードマーク、鴨志田祐美弁護士の基調報告
ベレー帽がトレードマーク、鴨志田祐美弁護士の基調報告

 私も運営委員を務める「再審法改正をめざす市民の会」は、鴨志田さんのほかに、元裁判官の木谷明さんや水野智幸さん、映画監督の周防正行さんらそうそうたる人たちが関わっているのだが、2024年5月で発足から5年目。発足した頃は法改正へ向けてロビー活動を行おうとしても、さて国会議員がどれほど関心を持ってくれるのかという話をしていたものだが、それがこの5年間でまさに状況は大きく変わり、国会での大きな議題になりつつあるのが現状だ。

12日の日弁連集会で発言する袴田ひで子さん
12日の日弁連集会で発言する袴田ひで子さん

 再審をめぐっては、袴田事件が大きな注目を浴びる一方で、今年に入って名張毒ぶどう酒事件の再審請求をめぐって最高裁で棄却の判断を示すなど残念な動きもあり、決して楽観視はできない状況だ。

 再審法改正をめぐる歴史的なうねりは果たしてこの状況を切り開いていくことがきるのか。おおいに注目される。

 なお前述した「再審法改正をめざす市民の会」のホームページは下記。ウェブセミナーなど日常的に活動を行っているので興味のある方はアクセスしてほしい。発足5周年記念集会もオープンな形で行う予定だ。

https://rain-saishin.org/

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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