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『グッド!モーニング』好調で『モーニングショー』『ワイド!スクランブル』とテレ朝情報番組快走

篠田博之月刊『創』編集長
『グッド!モーニング』(C:テレビ朝日)

『グッド!モーニング』の視聴率が上昇

 テレビ朝日で好調なのが朝の情報番組だ。8時台の『羽鳥慎一モーニングショー』とその後の『大下容子ワイド!スクランブル』は個人視聴率全体でトップを独走しているし、このところその前に放送している『グッド!モーニング』の視聴率が伸びているという。小寺敦情報番組センター長に話を聞いた。

「朝7時台は、これまで日本テレビの『ZIP!』とフジテレビの『めざましテレビ』におくれを取っていましたが、『グッド!モーニング』が放送開始から10年を迎えて、個人視聴率でほぼ並ぶところまで行っています。

 独自目線のニュースを足で稼いで取材をしていることが大きいですね。みんなインターネットでニュース自体は知っているじゃないですか。だからそこで見かけないニュースを発掘するとか、SNSで話題になっていることを当事者に当たってみるとか、そういうことに力を入れています。

 全国ニュースや東京発のニュースは、東京の視点になってしまうことが多いのですが、地方のちょっとしたニュースを、ミクロの視点でマクロを見るというようにこだわって報じるということですね。

 またイスラエルとパレスチナの問題では6時50分頃に『もっと知りたいニュース解説』という5分ほどのコーナーがあるのですが、そこでいまさら聞けない知らないことを紐解いていこうとしています。

 それからエンタメ情報についても、山本雪乃アナウンサーを主軸にして、“エンタメの顔”を作ろうと、取材にも出てもらうし、スタジオでのプレゼンもやってもらう。山本アナウンサーは明るいキャラクターですので、顔を作るという作業がだんだん実ってきたかなと思います。

 エンタメにしても前日のニュースを速報で出すことよりも、前から仕込んでいたものをやるとか、速報性よりも中身にこだわるという考え方です。

『グッド!モーニング』が目指しているのは『大人の朝のナンバーワンを目指そう』ということですね。ニュースでもトレンド情報でも、若い人よりも働いている大人に見てもらおうと考えています。

 5時台、6時台は他局の方が視聴率が高いのですが、7時台はせりあっていますね」(小寺センター長)

『モーニングショー』『ワイド!スクランブル』絶好調

『モーニングショー』については、この1年の出来事といえば、玉川徹さんが定年を迎えてリタイアしフリーになったことだろうか。ただ、レギュラーコメンテーターとしての出演は今後も変わらないという。

「なるべく幅広いテーマを取り上げようと考えています。例えば最近ですと気候変動問題ですね。皆さん実感していますし、MCの羽鳥慎一もこだわっています。今から考えて、手を打てることがあれば打っていかねばならないと、キャンペーンとして定期的に取り上げるようにしています。そのほか物価高の問題なども関心が高いですね」(同)

 大下容子さんがMCを務める『ワイド!スクランブル』も好調で、午前の部、午後の部ともに個人視聴率でトップを走っている。

「『ワイド!スクランブル』は、元々海外ニュースを徹底的にやろうというコンセプトでやっています。あの時間帯はご高齢の方を中心に、午前中からいろいろなニュースを見ていますから、午前中にあまり扱われていないテーマを深く解説していこうとしています。観ていただいている方にはビジネスマンとして海外のことに関わってきた方もいらっしゃいますし、世界情勢はどうなっているのか、外交や防衛はどうなっているのかと様々なことに興味を持っているので、作りがいがあるし、反響も大きいですね」(同)

 朝の情報番組全体が良くなっていることはテレビ朝日の視聴率全体に影響を及ぼしている。

10月改編の課題はゴールデン帯の強化

 テレビ朝日の編成全体について河野太一総合編成部長に聞いた。

「10月改編のテレビ朝日の方針は、まずゴールデン帯の強化ですね。火曜・水曜・木曜の19時台を強化するために新しい番組を立ち上げました。

 もともと深夜で放送していた番組をパワーアップしてゴールデン帯に移動させたのですが、火曜19時に『出川一茂ホラン☆フシギの会』、水曜に『朝メシまで。』、木曜に『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』という番組をスタートさせました。

 ドラマは火曜・水曜・木曜21時台に枠を設けていますが、火曜ドラマは比較的若い人たちにも観てもらいたい作品を、水曜は『相棒』『科捜研の女』『刑事7人』など東映さんと一緒にやっている作品を、そして木曜はかつて『ドクターX』を放送していましたが、オールターゲットですね。その流れで『報道ステーション』につなげるという戦略です。

 深夜帯は若いディレクターの育成も含めて、『バラバラ大作戦』という短い番組を全部で18本、平日深夜に1週間で展開しています。例えば『新しい学校のリーダーズ』という、今年の流行語大賞にもノミネートされていますが、女性ユニットの冠のつく番組を始めました。

 あるいは『夫が寝たあとに』という番組は、お子さんのいる二人の女性がまさに夫が寝た後にいろいろな話をする内容ですが、これが非常に面白いと反響も多く、配信もたくさん回っています」

 10月改編の新番組だけでなく、全体の流れはどうなっているのだろうか。

「朝の情報番組では『グッド!モーニング』が23年7月クールに、番組開始以来初めて、個人視聴率が民放で同率トップタイになりました。以前MCをやっていた新井恵理那さんが産休に入って、今、局アナの斎藤ちはるがMCを務めていますが、とても良い流れになっています。その後の『羽鳥慎一モーニングショー』と『大下容子ワイド!スクランブル』はいずれも横並びトップで、大きな支持をいただいているという状況です。

 夕方の『スーパーJチャンネル』は10月2日から16時48分スタートと3分間後ろ倒しになりましたが、10月から特集の強化ということで、18時台に長尺の特集枠を設けました。視聴者には中高年層の女性の方が多いと思いますが、そういう方が関心を持たれているテ―マを選んで取り上げています。年金問題なども好評ですね。

 あと『報道ステーション』は依然として横並びトップですが、大越健介さんが新たにキャスターになって2年経ちます。大越さん自身が現場に足を運んでレポートするのがウリになっています。

 今この時間帯はPUTが下がっているのですが、『報道ステーション』は安定して横ばいなので、シェア率は上がっています。特に大きな事件・事故、災害の時は視聴率が通常より上がりますので信頼されているのだと思います。この番組は2024年4月に番組開始から20周年を迎えます」(河野部長)

土日の番組も日テレの牙城に食い込む健闘

 テレビ朝日は平日プライムタイムの『報道ステーション』を安定させ、土日夜にも『サタデーステーション』『サンデーステーション』を放送している。

「土曜日は20時54分から『サタデーステーション』を高島彩さんをMCに放送していますが、番組開始から6年経ちました。高い支持を得ており、2023年は4月クールと7月クールに横並びトップを記録しました。

 日曜日の『サンデーステーション』はTBSの『日曜劇場』の裏にあたり、4月クールも7月クールも同番組がトップでしたが、それに続く2位につけています。日曜のこの時間は、1週間の振り返りだけだと見飽きている人も多いので、次の週にどういうニュースがあるのかを伝えたり、いろいろ工夫をしています。

 2023年は個人・総合の全日視聴率が日テレさんと並んでトップタイになっています。ゴールデンタイムは2位、プライムタイムはテレ朝が単独トップです」(同)

 かつて日本テレビが盤石と言われた土・日のゴールデン帯もテレビ朝日は健闘している。

「土曜日は19時台にサンドウィッチマンと芦田愛菜ちゃんの『博士ちゃん』、20時台に『池上彰のニュースそうだったのか』、20時54分から『サタデーステーション』という流れで、日曜日は19時台に『ナニコレ珍百景』、19時58分から朝日放送テレビの『ポツンと一軒家』、21時台の『サンデーステーション』ですね。土曜も日曜のゴールデン・プライムともにトップか2位につけています」

 スポーツコンテンツについて言えば、テレビ朝日は例年、12月に『フィギュアスケートグランプリファイナル』を放送している。羽生結弦選手はリタイアしてしまったものの、「りくりゅうペア」など人気の選手が次々と現れている状況だ。

「そのほか2023年はWBCをTBSさんと共同で中継しましたが、テレビ朝日は決勝戦で日本の優勝をお伝えできたのが大きかったですね。バスケットのワールドカップも日本テレビさんと共同で中継しましたが、9月2日のカーボベルデ戦中継の視聴率は今年度の全局全番組で最高です(11月27日現在)。バスケットボールは試合の展開も早いし、テレビ的なのか、試合を追うごとに視聴率が上がっていきました。スポーツコンテンツは力を持っているなと実感しましたね」(同)

かつてフジテレビが民放トップを独走し、その後、日本テレビがそれに代わってトップを走ってきたが、それまで「振り向けばテレビ東京」などと揶揄されてきたテレビ朝日が急速に力をつけ、トップの座もうかがう存在となっている。いまやテレビの総視聴率自体が落ち込み、テレビ離れが進む中で局同士で勝った負けたと言っている場合ではない、と言われるが、現場ではいまだに視聴率は大きな指標のひとつだ。テレビ界全体が配信の拡大など激動の波にあらわれているなかで、日本テレビとテレビ朝日の闘いは今後どうなるのだろうか。

※月刊『創』2024年1月号「テレビ局の徹底研究」をもとに執筆。

https://www.tsukuru.co.jp/

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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