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「新しい地図」の映画「クソ野郎と美しき世界」初日舞台あいさつとファンたちの熱気

篠田博之月刊『創』編集長
4月6日「109シネマズ二子玉川」での舞台挨拶。筆者撮影

 4月6日、「新しい地図」の映画「クソ野郎と美しき世界」の公開初日舞台あいさつに二子玉川の映画館「109シネマズ」へ足を運んだ。監督4人と稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の主演3人が登壇してトークを行うのだが、それが各地に中継されるという試みだ。

 その日、監督やキャストたちは各地の映画館で舞台挨拶してそこに集結。7日以降も手分けして各地の映画館で舞台あいさつを行うという。かなり熱のこもった取り組みだが、ファンとの触れ合いの場を作るという目的もあるのだろう。舞台挨拶の行われる映画館はチケットがほとんど完売だという。

 「新しい地図」は公式サイトで毎日、全国の映画館での動員数を発表している。2週間での目標は15万人と言われるが、初日と2日目で6万人を突破している。問題は9日以降の平日の動員数だが、これはファンたちがSNSなどでどれだけ口コミを広げてくれるかにかかっているのだろう。

舞台挨拶。手前が園監督、奥が太田監督(筆者撮影)
舞台挨拶。手前が園監督、奥が太田監督(筆者撮影)

 「109シネマズ二子玉川」では18時から舞台挨拶が行われたのだが、太田光監督が冒頭からハイテンションで、園子温監督らにからんでいた。太田さん流のパフォーマンスだが、もうひとつご自身の自己紹介で「昔1本撮ったことはあるけど、この中ではひとり素人監督だから…」と言っていたように、本格的な映画監督としての仕事、かつ公開初日とあって、恐らくご本人も気分が高揚していたのではないだろうか。しかも、撮影開始が2月で、試写会も行わずにその日の公開だったから関係者にとっては感慨もひとしおだったろう。

奥の太田監督が手前の園監督にからむ(筆者撮影)
奥の太田監督が手前の園監督にからむ(筆者撮影)
香取慎吾さんの音頭で自撮り撮影(筆者撮影)
香取慎吾さんの音頭で自撮り撮影(筆者撮影)

 私は以前書いたように撮影現場を一度見ているが、映画全編を観るのはその日がもちろん最初だった(以前の記事は下記)。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20180331-00083366/

 この映画は4人の監督によるオムニバスなのだが、EPISODE1~3で、個性的な3人の監督がそれぞれ投げたボールをEPISODE4で児玉裕一監督が、物語としてちゃんと回収しているのに感心した。

「クソ野郎と美しき世界」EPISODE1 2018ATARASIICHIZU MOVIE
「クソ野郎と美しき世界」EPISODE1 2018ATARASIICHIZU MOVIE

  舞台挨拶でも児玉監督は、大変な役割だったと語っていたが、これはなかなか大変だったろう。しかも1~3の物語を回収するだけでなく、EPISODE4はミュージカルとしてきちんとエンタテイメントになっている。

 私が現場を訪れたのはこのEPISODE4の撮影の時だったのだが、映画全編を観て初めてああこうなっていたのか、と理解できた。

「クソ野郎と美しき地図」EPISODE4
「クソ野郎と美しき地図」EPISODE4

 ちなみに、EPISODE1~3のそれぞれの監督は、自身でそれぞれ脚本も書いているのだが、全体がどうなっているか知らされていない。その全体の流れを作り上げていったのが、多田琢、山崎隆明、権八(ごんぱ)成裕の3人のクリエイターだ。

  その3人がどんな経緯でどんな役割を果たしたか。私が撮影現場を訪れたのは、その3人の話を聞くためだが、その内容は、4月7日発売の月刊『創』5・6月合併号に掲載している。一部を紹介するとこんな具合だ。

《ーー撮影現場には結構顔を出していたんですか。

多田 全部ではないですが、行ける時は行っていました。でも作品は監督のものだから、何か注文をつけるとか、そういうことじゃないんです。この映画は1、2、3本あって、最後にそれが絡み合って4本目で完結するという構造になっているのですが、それが全部わかるのは僕らしかいないんです。》

《脚本や演出は基本的に、それぞれの監督にお任せしているので、内容とか撮っていることに関しては口出しするつもりはありません。僕らが作ったものは、原案と原作の間みたいなもので、そこから監督が自由に膨らませてくれて構わない。登場人物を増やしたり減らしたりしても構わないんです。ただ、こことここは守ってもらわないと、最後の4本目が完結しないので、そこだけは守って下さいという話をしました。》

  この映画は、本当にかなり異色の作り方をしているのだが、そもそも作ることになったきっかけはこうだった。

《多田 昨年秋「新しい地図」を立ち上げた時に、ブランドフィルムを作っている時すでに、ショートフィルムをやりたいねという話があったんです。ブランドフィルム自体は、「新しい地図」を象徴するような映像で、彼ら3人が「新しい地図」に乗せた思いとはこういうことなんだよ、というのを伝えたいと思ったんです。そして映画館でブランドフィルムが流れた後に「新しい地図presents」といって映画が始まるとカッコいいねという話をしていたんです。その映画はどんなのがいいかというのを我々3人で話をして、ざっくりと大枠ができたのが昨年の10月でした。》

  ブランドフィルムが流れた後に「新しい地図presents」といって映画が始まる、というのは、実際、映画の冒頭がその通りになっている。多田さんたちの話はほかにもいろいろあるが、詳細は『創』に掲載している。

http://www.tsukuru.co.jp/

  「新しい地図」は昨年9月にスタートして、AbemaTV、サントリーのCM、朝日新聞での連載、そして今回の映画と、次々と新たな試みを展開してきているのだが、それをサポートしているのは多田さんらクリエイターを含む多くの人たちだ。そして「新しい地図」のこれまでの健闘を支えているのは、何よりも多くのSMAPファンだ。

舞台あいさつの行われた「109シネマズ」も会場を見渡すと8~9割が女性。上映終了後には会場全体が拍手に包まれ、終了後にロビーでは映画のポスター前に大勢の人が集まってスマホでの撮影が行われていた。

映画のポスター前に多くのファンが…(筆者撮影)
映画のポスター前に多くのファンが…(筆者撮影)

 映画は2週間限定の公開だが、観客動員を含め、成功するかどうかは、まさにこうしたファンたちにかかっているといえる。そういえば舞台挨拶を撮影した写真を、帰りの電車でツイッターに投稿して「元SMAPファンのパワー恐るべし」と書いたら、さっそく「元SMAPファンというと元ファンのように見えますが、私たちは今でもずっとSMAPファンです」というコメントがついていた。

 帝国ホテルプラザでのPOP UP SHOPもそうだし、「新しい地図」のブランディングがかなりうまくいっているのは、ファンの像が具体的にイメージできているからだろう。

 この映画が成功するかどうか、どんな反響を呼ぶかは、「新しい地図」のこれからにとって大変重要なことだと思う。

追補 この記事を公開してからいろいろな意見を頂いた。動員目標の数字は最初30万人と書いたが、確認したら公式発表では15万人とのことなので書き換えた。今のペースなら15万人は突破するのではないかと思う。あと、映画を観た人の感想で、草なぎさんの登場直後の演技が迫真すぎて怖いほどだというのがあって、私もそう強く感じたことを書き添えておこう。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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