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Jリーガー補強も!! ふたたび手を組む日本人フィジコと韓国レジェンド監督“深い関係”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2017年取材時のホン・ミョンボ監督と池田誠剛コーチ(著者撮影(

かつて日本で活躍した韓国人Jリーガー出身の監督と、日本人フィジカルコーチがふたたび手を組む。

ホン・ミョンボ監督と池田誠剛コーチのことだ。『スポーツソウル』サッカー班によると、今季からKリーグ1(1部)の蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)を率いるホン・ミョンボ監督のラブコールを受けて、池田コーチが2023年シーズンから蔚山現代に行くことを決めたらしい。

現役時代はJリーグの柏レイソル(1999年~2000年)などで活躍し、2002年ワールドカップでベスト4進出の主力でもあったホン・ミョンボ監督と、ジェフユナイテッド市原(1993〜1996年)、横浜F・マリノス(1997〜2004年)、FC東京(2016年)、サンフレッチェ広島(2018年~2020年)などでフィジカルコーチとして活躍してきた池田誠剛氏。

ふたりの仲はかれこれ10年以上になる。

始まりは2009年。ホン・ミョンボ監督が2009年U-20韓国代表監督を務めたときに、池田氏はKFA(韓国サッカー協会)初の日本人コーチとして迎え入れられた。

以降、ふたりは2009年U-20W杯ベスト8、2012年ロンドン五輪では韓国U-23代表を率いて銅メダル獲得に大きく貢献した。当時の代表チームのコンディショニングは、歴代で最も一貫性を保ったという評価を今でも受けている。

特に、池田コーチにとってロンドン五輪3位決定戦は一生忘れられない試合になったという。

というのも、相手は関塚隆監督生きるU-23日本代表だったからだ。当時、池田コーチは「運命だと思う。私がすべきことは韓国をサポートすること」とコメントし、プロフェッショナルな姿勢が話題を呼んだ。そして、韓国は日本を2-0で下しメダルを獲得した。

ただ、ホン・ミョンボ監督と池田コーチは栄光ばかりをともにしたわけではない。

本大会10カ月前にホン・ミョンボ監督が急遽指揮を執ることになった2014年ブラジルW杯でもふたりは息を合わせたが、初準備期間も相まってグループステージ敗退という失敗を味わった。

2016年からは中国の杭州緑城で再起を図ったが、クラブ上層部との軋轢もあってこれといった結果を残せずその挑戦を終わらせている。まさに、2人は天国と地獄をともに歩んだわけだ。

この当時、ホン・ミョンボ監督と池田コーチふたりにインタビューして話を聞いたが、その後、ホン・ミョンボ監督はKFAの専務理事になり、池田コーチも日本に戻ってフィジカルコーチを務めていただけに、もはやふたたび一緒に仕事をするはないだろうと思っていた。

(参考記事:日本人フィジコ池田誠剛インタビュー「日本・韓国・中国のサッカー比較」)

それだけに今回の決定はホン・ミョンボ監督にとっても心強いかぎりだろう。

何しろ池田コーチは2010年代に韓国サッカーの中軸を担ったFWパク・チュヨン(36、無所属)、MFキ・ソンヨン(32、FCソウル)、MFク・ジャチョル(32、アル・ホール)、MFキム・ボギョン(32、全北現代モータース)など、ホン・ミョンボ監督の指導を受けた選手たちの成長を手助けした人物だ。

また、池田コーチの知識と経験は韓国でも高い評価を受けている。韓国人選手の深層筋(インナーマッスル)のバランスが良くないことを確認した上で筋力を育てる池田コーチのトレーニングプログラムは、選手たちのフィジカルパフォーマンスを向上させると韓国サッカー界でも評判だった。

まして今季、ホン・ミョンボ監督率いる蔚山現代は、リーグ戦は準優勝、カップ戦とACLは準決勝敗退と、すべてのコンペティションにおいて「あと一歩」で涙を飲んで無冠に終わった。その原因のひとつとして、選手たちの浮き沈みのあるコンディショニングが挙げられていただけに、自身のサッカー哲学を最もよく理解している池田コーチの合流は大きな援軍だろう。

『スポーツソウル』サッカー班の取材によると、ホン・ミョンボ監督は池田コーチにフィジカル面だけではなく、戦術面なども含め多角的にチームを指導できるポジションを考慮しているという。

複数のエージェントによると、チーム内で空きがあるアジア枠を利用し、池田コーチが注目する日本人選手を獲得することも検討されているらしい。

その日本人選手とは誰なのか。近年、Kリーグには邦本宜裕(全北現代)、石田雅俊(大田ハナシチズン)など日本人Kリーガーたちの存在感が増しているだけに、新たに韓国にやってくる日本人選手には期待と注目が集まることだろう。

(参考記事:【動画】これが日本人Kリーガー邦本宜裕の“悪魔の才能”だ!最終戦で魅せた一瞬の閃き)

いずれにしても、最近では契約満了でガンバ大阪を退団したDFキム・ヨングォンの獲得が報じられている蔚山現代。キム・ヨングォンもホン・ミョンボ監督や池田コーチとともに、2009年U-20W杯、2012年ロンドン五輪、2014年ブラジルW杯をともに戦った“師弟関係”にあるだけに、加入はほぼ確実と見られている。

それに加えてさらにJリーガーの補強もあるのか。蔚山現代は来季ACLのプレーオフからの参戦が決まっているが、今からJリーグ勢との対決が面白くなりそうな予感だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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