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「欧州サッカーリーグとは異なり新型コロナ清浄地帯」を詠うKリーグのいま

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
練習前の全北現代の選手たち(写真=FA PHOTOS)

新型コロナウイルスの影響でJリーグのない週末が続いている。

韓国でもちょうど1か月前の2月24日にKリーグの開幕延期が決定。本来は2月29日に開幕予定だったが、いまだ開幕のメドは立っていない。

そんな中、週末の3月21日には韓国プロサッカー選手協会の会長を務めるイ・グノがKリーグ各クラブに対して、新型コロナウイルス感染症対応規則を提示した。

かつてはJリーグのジュビロ磐田やガンバ大阪で活躍した別名“太陽の子”も、今では34歳のベテラン。

2018年2月に韓国プロサッカー選手協会会長に就任して以降、国際プロサッカー選手協会(FIFpro)への正式加盟、Kリーグ選手たちの肖像権問題、選手会主催の慈善活動などを推し進め、リーグ開幕延期が決まった直後も声明を発表していたが、今回は選手の立場になってかなり細かい要求をKリーグ各クラブに投げかけている。頼もしいリーダーシップだ。

(参考記事:元ガンバのイ・グノ選手協会会長がKリーグに求めた新型コロナ対応9原則とは?)

この選手協会の要望もさることがら、Kリーグも新型コロナウイルス対策にはかなり神経を使っている。

1日2回の発熱確認、練習試合も禁止

Kリーグを主管する韓国プロサッカー連盟は、早くから新型コロナ感染予防と拡大防止のためのマニュアルを全クラブに配布。同マニュアルには選手団の外部接触禁止を含め、選手とコーチンクズスタッフの健康状態の常時確認および感染症予防の心得遵守などが盛り込まれている。

1日に2回以上、すべての選手とコーチングスタッフの発熱チェックが義務付けられており、練習中にペットボトルやタオルなどを他選手との共同使用を禁止することはもちろん、自宅や寮から練習場に通う選手たちの移動動線にも言及するなど、状況別のガイドラインが詳細に示されているという。

もっとも徹底されているのは外部との接触禁止で、中断期間であってもKリーグとの他のクラブとの練習試合を禁止していることだ。

Jリーグでは先日、鹿島アントラーズ対コンサドーレ札幌の練習試合がありDAZNで中継されたりもしたが、Kリーグではチーム内の紅白戦で実戦感覚を維持するよう勧告されている。

感染震源地を本拠とする大邱FCは?

そういった外部との接触に注意を払うことによって新型コロナウイルスの感染予防しているわけだが、社会と隔離された生活を長く続けるのは簡単ではない。

例えば、韓国でもっとも多くの感染者を出している大邱(テグ)をホームタウンとする大邱FCは、選手団が1か月以上も外部と距離を置いている。

『スポーツソウル』が大邱FCのイ・ビョングン監督に電話インタビューしたところ、チームは1月に中国の昆明でキャンプを行っていたが、新型コロナウイルスが中国全土に広がりつつあった1月下旬に急遽帰国。韓国国内でキャンプを続けたあと、3月12日から大邱のクラブハウスで合宿生活を送りながら練習を続けているという。

大邱FCには日本人Kリーグの西翼も所属するが、イ・ビョングン監督代行によると「外国人選手を集めて最近の状況について話し合ったことがある。家族がたくさん心配をしているという。私たちが衛生規則をきちんと守り、外出を控えれば問題にならないと安心させた。大邱の外国人選手たちは動揺していないほうだ」とのことだ。

韓国メディアはこうした取り組みに一定の効果があると評価しているが、ヨーロッパではイングランドのプレミアリーグやイタリアのセリエA、ドイツのブンデスリーガからも新型コロナウイルスの感染者が出ている。

フランス2部リーグのトロワで活躍しているソク・ヒョンジュンが韓国の海外組で初めて陽性判定を受けた選手にもなった。

そうした状況を考えれば、「欧州サッカー界とは異なり、新型コロナ清浄地帯と評価されている」(『スポーツソウル』)Kリーグも新型コロナウイルスの脅威にさらされる可能性もある。だからこそイ・グノも選手会長として対策徹底を強く訴えたわけだが、この状況はいつまで続くだろか。

Kリーグ開幕は4月以降か

というのも、Kリーグは開幕延期を決めた1か月前、延期は2〜3週間程度で早くて3月中、遅くても4月4日・5日には開幕したいと踏んでいた。

しかし、3月17日に韓国政府が幼稚園から高校までの新学期を4月開始にすると発表。韓国では1961年から“3月新学年制”が採られてきたが、新型コロナの影響で新学期の始まりが延びに延びてきた。

この政府方針により、Kリーグやプロ野球の開幕時期がさらに延期になる可能性もあり、新型コロナの今後の進展次第ではKリーグの4月以内開幕も難しくなるかもしれないとも囁かれているが、はたして。

韓国プロサッカー連盟は3月25日に理事会を開く予定だが、そこでどんな結論が下さるのか。注目しておきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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