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「あの美女は誰?」女子バレーボール韓国代表の双子姉妹は何者か

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
妹イ・ダヨン。奥に映るのが姉ジェヨン(写真:松尾/アフロスポーツ)

9月14日から開幕した女子バレーボールのFIVBワールドカップ・バレー。中田久美監督率いる“火の鳥NIPPON”の試合は、フジテレビ系列で毎試合生中継されているので視聴している方々も多いことだろう。

ワールドカップ・バレーは世界選手権と並ぶ“世界3大大会のひとつ”とされ、今大会は来年の東京五輪を占う前哨戦として位置づけられるだけに、普段バレーボール中継を見る機会が少ない方々も興味津々なのではないだろうか。

日韓戦で活躍した韓国バレー界の美人双子姉妹

そう感じたのは9月16日の日本対韓国戦のときからだ。試合は韓国がセットカウント3-1の逆転勝利を収めたが、筆者のもとには女子バレー韓国代表に関する問い合わせや情報提供の要請が多くなった。

なかでも多かったのがレフトのイ・ジェヨン(背番号17)とセッターのイ・ダヨン(背番号19)。イ・ジェヨンは日本戦で26得点、イ・ダヨンはセッターとして多様な攻撃ルートを引き出したが、「あの美女選手は誰ですか?」と週刊誌の編集部からも問い合わせがあった。

韓国女子バレーと言えば、日本でも“スーパーエース”として知られるキム・ヨンギョンが有名だが、ふたりの活躍は日本戦でも目立っていた。(加えて17得点を決めたキム・フィジンも)。

実はこのふたり。韓国女子バレー界では有名な“美人双子姉妹”だ。韓国女子バレー界の“美人姉妹”と言えば、ハン・ユミとハン・ソンイが有名だったが、最近はイ・ジェヨンとイ・ダヨンが韓国女子バレー界の“オルチャン(美顔という意味の造語)姉妹”と呼ばれてる。

(参考記事:“Vリーグ女神”に“美人姉妹”、日本との因縁も。韓国美女バレー選手ベスト6を一挙紹介【PHOTO】)

母は元代表のサラブレッド

しかも、ふたりは韓国女子バレー界のサラブレッド。ふたりの母親は1998年ソウル五輪で女子バレー韓国代表のセッターを務めたキム・ギョンヒ。父親は1986年アジア大会・ハンマー投げ韓国代表で、ふたりの姉はフェンシング選手、弟はバレーボール選手になっている。まさにスポーツ一家なのだ。

そんな中でふたりとも中学時代からその将来を嘱望され、2013年には高校生ながら代表入り。2014年アジア大会では揃って韓国代表として活躍して金メダルを手にした。2014年には揃って韓国Vリーグの門を叩き、プロになっている。

ただ、オリンピックを先に経験したのは姉ジェヨンのほうだ。

韓国Vリーグでもジェヨンは新人王に輝き、2015-2016年シーズンから4年連続で韓国人選手得点王に。昨季シーズンは所属する興国(フングッ)生命ピンクスパイターズを10年ぶりの優勝に導き、自身もチャンピオンシップMVPと年間MVPの2冠に輝いた。

妹ダヨンの覚醒

もっとも、人気面では妹ダヨンも負けてはいない。高校卒業後、現代(ヒュンダイ)建設ヒルステートに入団したダヨンは長い間、バックアップ・セッターに甘んじたが、2015年にはVリーグ・オールスターに出場。得点の度にダンスを披露して話題になり、その日の検索ワードランキングの1位となって“セレモニーの女神”という愛称もついた。

その愛称に名前負けすることなく、一昨年はVリーグ・オールスターMVPに輝き、チームでも主力に定着してVリーグ・ベストセブンにも選出。昨シーズンもVリーグ・ベストセブンに選ばれ、その勢いが今年1月から韓国女子バレー史上初の外国人監督として招聘されたステファーノ・ラバリニ監督の目にとまった。

これまで女子バレー韓国代表のセッターと言えば今年で38歳となるイ・ヒョヒ頼みだが、ラバリニ監督体制になってダヨンが主力セッターの座を射止めたのだ。その成長ぶりにキム・ヨンギョンも「ダヨンのトスが日に日に正確さを増している」と目を細めるほどだとか。

だが、8月のアジア選手権ではダヨンを欠き、その前のネイションズリーグではジェヨンが韓国代表に不在だった。つまり、今回のワールドカップ・バレーで双子姉妹久々の代表揃い踏みとなったわけだ。

キム・ヨンギョン依存から脱却なるか

そんなふたりが16日の日本戦で活躍したのだから韓国メディアも高評価。一般紙・京郷(キョンヒャン)新聞は「キム・ヨンギョン頼みから抜け出した女子バレー、宿敵・日本を撃破」と題した記事の中で、ふたりの活躍を紹介しながら「勝利のカギは多様な攻撃ルートにあった」と評した。

もっとも、昨日のロシア戦では姉妹並び立たず。

ラバリニ監督は今後も試合が続く日程面を考慮してイ・ジェヨンだけでなくキム・ヨンギョンも温存する布陣で挑んだが、案の上、結果はセットカウント0-3の完敗に終わった。イ・ダヨンも日本戦のときほどの活躍は見せれなかった。

これによって韓国女子バレーはワールドカップ・バレーで1勝3敗と負け越しているが、本日行われるカメルーン戦から巻き返しを図りたいところだろう。

まして韓国はまだ東京五輪出場権を得ておらず、来年1月に東京五輪アジア予選に挑まなければならない。

はたしてイ・ジェヨンとイ・ダヨンという22歳の双子姉妹が期待通りに、“キム・ヨンギョン依存”からの脱却を目指す女子バレー韓国代表の新たな軸になるだろうか。韓国のワールドカップ・バレーの行方にも注視していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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