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チャンピオンズリーグ決勝に挑むソン・フンミンは先輩パク・チソンを超えられるか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ソン・フンミン(写真:ロイター/アフロ)

韓国に来ている。取材やミーティングなどでソウルに来ているのだが、韓国でも6月2日(日本時間)に行われるUEFAチャンピオンズリーグ決勝への注目が高まっている印象だ。

もともと韓国はチャンピオンズリーグへの関心が高いが、今年はソン・フンミンが所属するトッテナムが決勝戦に駒を進めたこともあって、決勝戦にまつわるさまざまな情報が報道されている。

しかも、タイミングよく先週末からはケーブルテレビ局tvNでソン・フンミンのドギュメンタリ―番組『ソン・セーショナル』も始まった。

ソン・フンミンはもちろん、現役・OBの韓国代表からトッテナムのチームメイト、さらにはなぜかティエリ・アンリまで出演しているこの番組は、ドギュメンタリ―番組としては異例の視聴率を記録しているという。

番組では普段は滅多に見ることのできないソン・フンミンの私生活や素顔も明らかになっているので、何かと話題になっているとのことだ。

(参考記事:「現役中は結婚しない」というソン・フンミン。その意外すぎる理由とは?

もうひとつ注目を集めているのは、ソン・フンミンがパク・チソンを超えられるかという点だ。

Jリーグの京都サンガ、オランダのPSVアイントホーフェンを経て、2005年にマンチェスター・ユナイテッドに移籍し、韓国人初のプレミアリーガーとなったパク・チソン。そのパク・チソンとソン・フンミンの比較は以前からあったが、特に最近は「技量満開のソン・フンミン…パク・チソンを超えて“ワールドクラス”に成長」(『TV朝鮮』)などの報道が増えている。

(参考記事:緊急調査「ソン・フンミンはワールドクラスか?」この問いへの回答は?

トッテナムがチャンピオンズリーグ決勝進出を決めると、『朝鮮日報』では「ソン・フンミン、パク・チソンを超えた」というコラムを掲載している。

たしかにチャンピオンズリーグの個人記録で、ソン・フンミンはパク・チソンを凌駕している。

前出の『朝鮮日報』の記事によると、PSVアイントホーフェンやマンチェスター・ユナイテッドでチャンピオンズリーグを戦ったパク・チソンは、通算55試合4得点を記録。

対するソン・フンミンはレバークーゼン時代を含めると、チャンピオンズリーグ39試合出場12得点。所属クラブ、プレーした時期はもちろん、ポジションも異なるので単純比較はできないが、ゴール数ではパク・チソンはおろかアジア人選手としてはチャンピオンズリーグ歴代最多である。

ただ、チームの一員として獲得した優勝回数ではパク・チソンが圧倒的に多い。

京都で天皇杯、アイントホーフェンでリーグ戦優勝とカップ戦優勝など4回、マンチェスター・ユナイテッドでは実に13回の優勝を経験したパク・チソンに対し、ソン・フンミンはハンブルガーSVでもレバークーゼンでも、現在所属するトッテナムでも「優勝」というタイトルを手にしたことがないのだ。

それだけに韓国のサッカーファンたちの多くが期待するのは、トッテナムの優勝だろう。マンチェスター・シティとの準々決勝では熱心なマンシティ・サポーターである美人女優カン・ウビンがネット上で非国民扱いされた苦悩を吐露していたが、彼女も今回ばかりはソン・フンミンを応援するに違いない。

さらに言えば、ソン・フンミンにはパク・チソン超えも期待されている。

マンUの一員としてCL優勝1回(2008年)、準優勝2回(2009年、2011年)を数えるパク・チソンだが、優勝した2008年はピッチに立てなかった。2009年は先発出場、2011年はフルタイム出場しているが、いずれもバルセロナに敗れて準優勝で終わっている。得点記録もない。

ゆえに、「パク・チソンも成し遂げられなかったUCL決勝得点…ソン・フンミン、トッテナムでアジアの新しい歴史を書けるか」(『OSEN』)と、パク・チソンも成しえなかった快挙達成の期待がソン・フンミンには寄せられている。

はたして、ソン・フンミンはそうした期待に応えてトッテナムのチームメイトたちと“ビックイヤー”を掲げることができるだろうか。

ちなみにアジア人初のチャンピオンズリーグ優勝経験者となったパク・チソンは、「CL優勝は1度ぐらい達成すべきだだろう」と愛情たっぷりの口調でソン・フンミンにエールを送っている。

(参考記事:パク・チソン、CL決勝に挑むソン・フンミンについて語った言葉が話題に

2年前に近況や日韓サッカー展望などを聞きたくて、パク・チソンが生活拠点を置くロンドンのウインブルドンでインタビューしたときも言っていた。

「同じロンドンに暮らすフンミンとはときたま、一緒に食事をする仲。素晴らしい活躍を見せている彼に、僕がアドバイスを送るのはおこがましい。雑談などをしながら、聞かれれば経験談なども伝えています」

そこにはきっと、パク・チソンが3度経験したチャンピンズリーグ決勝の経験談もあることだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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