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BTS(防弾少年団)問題、「報復」「逆襲」の声ある中で彼らは何を語るか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
国連で演説したBTS。東京ドーム公演では何を語るだろうか。(写真:ロイター/アフロ)

先週に勃発したBTS(防弾少年団)の『ミュージックステーション』出演中止のニュースの余波は、依然として静まる気配がない。日本では新聞、ネットメディアはもちろん、テレビのワイドショーでも取り上げられているし、韓国でも連日のように報じられている。

ためしに韓国の大手ポータルサイト“NAVER”で「防弾少年団 日本放送 中止」と検索してみると、放送当日の11月9日は145件、翌日11月10日は128件の記事がヒットした。

新しい週が明けた昨日もBTSと日本に絡めた記事が50本を超えていたほどだ。韓国でも『Mステ』出演中止騒動への関心が高いことが伺える。

過去にもあったBTS海外トラブル

もっとも、BTSの海外活動でトラブルが発生するのは今回が初めてではない。9月に秋元康氏とのコラボ中止を求めるファンの声が殺到し、本来はアルバム収録予定だった楽曲がお蔵入りになったしまったことは記憶に新しいが、日本だけではなかった。

昨年11月にはコロンビアのテレビ局の出演者がBTSの楽曲を紹介する前にとった行動が問題になったりし、今年5月にはBTSに関してコメントした司会者が謝罪発表するほどまでに至った“メキシコ番組炎上騒ぎ”があった。

(参考記事:BTSへの差別発言を浴びせたメキシコのテレビ番組が炎上!!)

8月には、テイラー・スウィフト、ケリー・クラークソン、マルーン5など有名アーティストのミュージックビデオを多数手がけ、2002年にはグラミー賞最優秀短編ミュージックビデオ賞を受賞した韓国系アメリカ人の映像監督ジョセフ・カーンによる大炎上事件も起きている。

(参考記事:人気グループBTSを露骨に嘲弄した韓国系アメリカ人PV監督が大炎上!!)

世界各国でトラブルが起きるということは、裏返せばそれだけ彼らの活動、知名度、人気がグローバルだということの証明でもあるが、今回の『Mステ』出演中止騒動に関して気になるのは、韓国の外野からもさまざまな意見が飛び出していることだ。

韓国の政界もBTS問題に言及

例えば与党“ともに民主党”の首席報道官は「日本の放送局が政治的な理由でBTSの出演を取り消したとすれば望ましくない」とコメント。「政界が民間放送局の判断を問題視するのは未来の韓日関係の役に立たないと考えている」としたものの、政治イシューとして取り上げていたのは明らかだった。

“韓国広報専門家”を自認する誠信大学のソ・キョンドク教授も絡んできた。

ソ・キョンドク教授は過去にアメリカ有力紙に日韓の領土問題に関する広告を出稿したり、旭日旗やそれに似たデザインを指摘糾弾する人物として有名だが、自身のインスタグラムで「防弾少年団のジミンが数年前に着た光復節Tシャツをめぐって、日本で大騒ぎになっているという。日本が防弾少年団の放送出演を阻み、極右メディアがその状況を報道するのは、文字通り“最悪のダメ詰まり”」だとして、今回の件に対して持論を展開しているのだ。

こうした外野の反応を受けて、韓国メディアも「防弾少年団の日本放送出演中止、政治イシューに拡張」(『news1』)、「防弾少年団の日本放送出演中止…芸能から政治圏に」(『スポーツ朝鮮』)と、昨今、政治的に深刻化する日韓関係を重ねて今回の騒動を一刀両断してしまうところが増えている。

「嫌韓の逆襲」として紅白出場も白紙!?

中には『スポーツニッポン』が報じた「BTS年末音楽特番全面も…Mステに続きFNS歌謡祭、紅白…」の記事を引用しながら、「徴用判決の報復? BTSの日本放送は年末まで相次ぎ中止」(『毎日経済』)、「嫌韓の逆襲か。防弾少年団、日本の年末音楽番組が相次ぎ中止の一波万波」(『スポーツ京郷』)とするメディアもある。

紅白歌合戦のNHKはもちろん、ほかの民放各局も公式見解を明らかにしていない中で規制事実のように報じるのは気が早い。公式見解という点で言うと、BTSも今回の件についてまだ何も発していない。

公式サイトで番組出演を見送ることになったことと、「楽しみにしていただいたファンの皆様には、残念な結果となり、お詫び申し上げます。BTSは今後も、よりいい音楽とステージでファンの皆様とお会いできるよう努めて参ります」としたが、日本でも韓国でも今回の騒動に関する心情を吐露していないのだ。

そんな状態の中で日韓の一部メディアが騒ぎ立て、政治家などの部外者までもがしゃしゃり出てくる状況には違和感も感じる。

BTSは東京ドームで何を語るのか

むろん、BTSは今回の騒動について、自らの口でその経緯や意図、心境を語る必要がある。

韓国音楽界で囁かれる“曲名運命論”に導かれるように今や世界を股にかけて活躍し、今回の騒動が多くの海外メディアでも注目されている以上、いつまでも“黙秘”することはできないだろうし、何よりもBTSらしくない。

(参考記事:BTSの運命もこれで一変した!? 韓国音楽界を支配する「曲名運命論」とは)

それだけに本日行われる東京ドーム公演には注目が集まる。大観衆が見守るステージの上で何を語るのか。

「防弾少年団の日本放送出演中止に政治圏まで…溝が深まる韓日関係」(『トゥデイ・コリア』)、「防弾少年団の日本放送中止の波紋、歴史的な“ダメ詰まり”となるか」(『ソウル・ファイナンスニュース』)との懸念の声も広がるが、韓国はもちろん日本でも愛されてきたBTSが、日韓の“不幸”のシンボルになってしまわないことを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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