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平昌五輪のために奔走する女王キム・ヨナ。聖火や浅田真央との“共演”についても発言

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キム・ヨナ(写真:ロイター/アフロ)

“韓国のプリンセス”が久々に国際舞台に姿を現した。2010年バンクーバー冬季五輪の女子フィギュアスケートの金メダリストで、2014年ソチ五輪では銀メダルに輝いたキム・ヨナである。

キム・ヨナは11月14日、アメリカ・ニューヨークの国連本部に登場。平昌五輪と平昌パラリンピック開催期間中とその前後は、加盟国に敵対行為や休戦を呼びかける第72回国連総会に参加した。

採択に先立って登壇し、流暢な英語で「平昌五輪は平和と人類愛という五輪の精神を全世界の人々と共有する場になるだろう」と訴え、拍手喝さいを浴びたキム・ヨナ。現役引退後、平昌五輪の広報大使を務めてきた彼女らしく、見事にその大役を果たしたスピーチだった。

(参考記事:韓国のフィギュア女王キム・ヨナは今、何をやっているのか)

広告業界でも人気衰えず。が、平昌のほうは…

それにしても改めて感じるのは、彼女の存在と影響力の大きさだ。平昌五輪の広報大使として最近はさまざまな行事に出席しているが、それらはかならず大きく報じられる。今回の国連スピーチに関しても、テレビ、新聞、インターネットなど、韓国のほぼ全メディアが報じている。

しかも、平昌五輪の広報活動だけではなく、テレビCMなどでも活躍中。韓国の某スポーツ新聞がマーケティング担当者100人に行った“広告モデルにしたい美女ランキング”でも堂々の3位に入ったらしい。その人気ぶりは今も衰えることを知らない。

ただ、そんな彼女が西に東に奔走しながら平昌五輪をアピールしても、韓国のオリンピック・ムードはなかなか盛り上がらない。

韓国文化体育観光部が発表した「平昌冬季五輪及びパラリンピック国民世論調査」で、平昌五輪に関心があると答えた人は39.9%にしかならず、チケットの売れ行きも伸びない。平昌五輪組織委員会が10月11日に発表したところによると、これまで売れたチケットは約32万枚で、目標の129万枚の24.8%にすぎないという。

しかも、最近はチケットだけではなく、大会開催地域となる平昌や江陵(カンルン)、旌善(チョンソン)の宿泊施設の問題まで取り沙汰されるようなった。

もともと宿泊施設が不足している上に、宿泊予約サイトのずさんさも指摘されている始末だ。それでいて開催地域一帯のモーテルなどは、かなり強気の料金設定をしているというのだから、先が思いやられる。

(参考記事:観戦に行く人必見!! 平昌の宿泊事情【平昌五輪ガイド】)

最終ランナーと浅田真央との競演についても発言

キム・ヨナもきっと、盛り上がるどころか課題や不安ばかりが浮き彫りになる現状に、歯はがゆい思いをしているに違いないだろうが、そんな苛立ちを微塵も見せないのがキム・ヨナでもある。冒頭の国連スピーチでも終始、凛とした表情で北朝鮮の平昌五輪参加を呼びかけていた。

ちなみにこのスピーチのあと、キム・ヨナは会見の席でいくつか興味深いことも語っている。

ひとつは平昌五輪・開会式のハイライトとなる聖火リレー最終走者について。韓国では「最終ランナーはキム・ヨナで決まり」とされているが、本人は「まだ誰もわかりませんが、(最後のランナーになったら)個人的には、とても光栄なことです」と語ったという。

また、韓国の李洛淵首相がJOCに打診したと言われる浅田真央との“共演”についてもコメント。「2014年に引退したのでガラショー参加は難しい」と、サラリと語ったらしい。

浅田真央との関係性は韓国でも何かと話題になるだけに“夢の競演”を期待する声もあるが、決して惑わされずクールに振り切るところがキム・ヨナらしい。

(参考記事:キム・ヨナ、浅田真央、羽生結弦のコントラストな三角関係)

いずれにしても、キム・ヨナは依然として韓国のプリンセスだ。平昌五輪のカウントダウンが100日を切った今、これからも彼女のことが何かと話題になることだけは間違いない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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