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イ・ボミの韓国ツアーはどうだった?密着カメラの証言とメディアに語った「涙と目標」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国では初となるホールインワン達成(写真提供:KLPGA)

先週の日本女子プロゴルフツアー『CATレディース』で今季初の優勝を飾った2年連続賞金女王のイ・ボミ。昨日まで北海道・小樽カントリークラブで行われた『ニトリ・レディース』には出場しなかったが、代わってKLPGA(韓国女子ゴルフツアー)に出場していた。

13ヵ月ぶりの韓国ツアー

出場したのは、KLPGAツアーの今季20戦目となる『ハイウォン・リゾート 女子オープン』だ。優勝賞金1億6000万ウォン(約1600万円)、賞金総額8億ウォン(約8000万円)の大会で、2010年大会ではあのアン・シネが優勝したこともある大会だ。

大会序盤は雨で連日のサスペンデットとなったが、8月25日には韓国ツアーでは自身初となるホールインワンも達成。最終的には3位タイで終わったものの、一時は首位にもなって話題を振りまくなど、“故郷に錦を飾った”活躍だったと言えるだろう。

(参考記事:4日間のすべてがわかる!! イ・ボミ、13か月ぶりの韓国ツアーをKLPGA公式カメラが完全密着!!)

というのも、そもそも今回の試合会場となった『旌善(チョンソン)ハイウォン・カントリークラブ』は、イ・ボミが幼年期を過ごした江原道(カンウォンド/道は日本の“県”に相当する)の旌善にある。

イ・ボミが育ったのは江原道の麟蹄郡(インジェグン)だが、旌善は来年2月に行われる平昌(ピョンチャン) オリンピックのアルペン競技が行われる場所だ。平昌オリンピックの広報大使を務めるイ・ボミにとっては、“故郷への恩返し”への想いもあったはずだ。

イ・ボミの韓国ツアー出場は昨年7月の『BMWレディースオープン』で前回は25位タイで終わったが、今回は文字通り凱旋帰国にふさわしい活躍だった。

「新鮮な衝撃」と名物カメラマンも絶賛!!」

そんなイ・ボミの4日間を追い続けたカメラマンのカン・ミョンホ氏によると、韓国メディア関係者たちの間でもイ・ボミ讃辞がやまなかったという。

「久しぶりの韓国ツアーということで、もっとも多くのギャラリーを引き連れていたよ。記者やカメラマンなどの中にもイ・ボミを取材するのが初めての人が多かったが、皆が“イ・ボミが日本で人気がある理由がわかった”と口を揃えていた。私も一言で言うなら、“新鮮な衝撃”を感じました」

韓国メディアがイ・ボミへの賞賛を惜しまない理由は何か。カン・ミョンホ氏の言葉を借りれば、「韓国プロにはない、“爽やかすぎるほどの女王の風格”」だという。

例えば今回、イ・ボミは初日でキム・ジヒョン、イ・スンヒョンなどと同じ組でラウンドしているのだが、ゴルフ担当の韓国記者たちの間でもちょっとした話題になったらしい。

ふたりはグラビア撮影が話題になったKLPGA2017年度広報モデルにも選ばれたホープ。KLPGA広報モデルは実力と人気の両方を兼ね備えた者だけが選ばれるもので、イ・ボミはもちろん、現在、日本で活躍するキム・ハヌル、ユン・チェヨン、アン・シネらも常連だった。

そんなふたりと比べてもイ・ボミには華があり、なおかつ“爽やか”だったとカン・ミョンホ氏は言う。

「イ・ボミは終始笑顔なんですよ。韓国の選手はミスショットすればそれがすぐ表情に出るのに、彼女は感情をコントロールしどんなときも爽やかで笑顔。見ていて清々しいというか、気持ちいいというか。彼女の実力の高さやパーソナリティはわかっていたつもりだったけど、日本の人々がボミに魅了される理由が改めてよくわかった。韓国の記者やカメラマンが皆、“日本で人気な理由がよくわかった”ボミの凄さを肌で感じた4日間でしたよ」

(参考記事:速報20枚!! イ・ボミ13か月ぶりの韓国ツアーをカン・ミョンホが追跡撮影!!)

チーム・ボミの支えと同僚プロからのメッセージ

特筆すべきは、大会期間中にイ・ボミは複数のメディアのインタビー取材を受けているかが、そこでいくつか注目発言をしていることだ。

例えば、今季初優勝までの過程について。「心理的なプレッシャーがひどく、宿舎でひとりで泣くことも多かった。心身ともにきつくバランスが崩れた。スイングが崩れてメンタルも崩れた。そんな姿をファンに見せることが申し訳なく、引退まで考えた。逃げたい心境だった」(『スポーツ・ソウル』8月24日付け)と、告白している。

そうした苦しい日々を乗り越えることができたのは、「キャディ、トレーナー、関係者に母といった周囲の人々の助けがあったから」ということは日本メディアでも語られたことだが、韓国のゴルフメディア『マニア・リポート』との取材では、こんなエピソードも明かしている。

「とるファンが言ってくれたことか感動的でした。優勝したり気持ちが先走っていたとき、“優勝カップを掲げる姿を見たいだけであなたのファンになったんじゃない。コースで悩み、苦しんでいるときの感情もファンとして共有したい。自分にあまりプレッシャーをかけないで”と言ってくれました。原江里菜さんも、とても大きな力になってくれました。苦しかったとき、“ボミは今でも十分に頑張っている。よくやっているよ”というメッセージを送ってくれたんです」(『マニア・リポート』8月24日付)

ファンや同僚の女子プロたちのエールもイ・ボミには励みになり、心の拠り所になっていたのだ。

30勝シードと東京オリンピックを目指す

そんなイ・ボミはスランプを脱した今、これから何を目指そうとしているのか。イ・ボミは韓国メディアにこんな目標を語っている。

「20勝で足踏みしましたが、21勝目ができたことで30勝も目指せる自信がつきました。30勝を達成して永久シードを手にすることが目標です。

そして2020年東京オリンピックに出場すること。率直に言うと、今の私は選手として“上がっていく”よりも、今の状態を維持しながら“いかに下っていくか”という状態でもあります。ただ、選手として大きな目標がなければ、動機づけも難しいし、つらい時に克服する力も沸いてこない。 そういう意味で、東京オリンピック出場が私にはまた違った大きな目標になると思うんです」(『マニア・リポート』8月24日付)

日本通算30勝と2020年東京オリンピック出場。それは昨年度の韓国ツアー出場時にも語っていた目標だが、それを改めて口にしたところに、その決意の強さを感じずにはいられない。

日本では今季、成績面では同世代のキム・ハヌルに、話題性では後輩のアン・シネに押され気味だったが、これからの巻き返しが十分に期待できる力強いコメントだ。

(参考記事:徹底調査! アン・シネ、イ・ボミ、キム・ハヌル。韓国で最も人気があるのは…。)

今週はオープンウィークとして韓国で過ごすそうだが、故郷でたっぷり英気を養ってふたたび日本に戻ってくる日が今から楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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