『スタメン総入れ替え』の是非。森保ジャパンの長期戦略とは?

下田崇コーチ、齊藤俊秀コーチ、森保一監督(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 今日も今日とて、手探りジャパン。お変わりありませんね? アジアカップ以来ですが、お元気そうで何よりです。

 森保ジャパンも発足から半年が経ったのだから、みんな慣れたはず。試合の序盤は、ほとんど手探り。修正しながら、後半は徐々にハマってくる。アジアカップもそんな試合が多かった。そして状況への解法を一つずつ、選手主導で見つけ出し、手探りの時間を縮める。それが森保式、「対応力」トレーニングだ。

 経験的強化なので、どんな経験ができるかが肝。今回はコロンビアとボリビアが相手だった。強者たるコロンビアに対しては、槍型で。堅守速攻をベースとする森保ジャパンのAスタイル=中島翔哉、南野拓実、堂安律を並べてスタートした。6月のコパ・アメリカ、あるいは3年後のワールドカップまでを想定できるメインの戦い方だ。

 一方、引いて守備を固めるボリビアとは、ポゼッションと遅攻ベースで戦った。引いた相手に槍で突撃するような非効率な戦いはせず、鞭で締め上げるような、Bスタイルで試合に臨んだ。

 ここで先発メンバーに名を連ねたのは、シュミット・ダニエル、安西幸輝、畠中槙之輔、三浦弦太、西大伍など、攻撃やビルドアップに長けた選手ばかり。2列目に並んだのも、香川真司、乾貴士、宇佐美貴史など、引いた相手を締め上げるBスタイルにマッチする。戦い方としては、9月から始まるW杯アジア2次予選を想定できるものだ。おそらく、森保監督は招集メンバーを選んだ時点で、2試合のゲーム戦略、それに合うスタメンを決めていたのだろう。

 槍型(Aスタイル)が得意なメンバーは、昨年の親善試合とアジアカップを通し、固まってきた。その一方、鞭型(Bスタイル)は未成熟だ。W杯予選など今後を考えるなら、Aスタイルを先鋭化させるだけでなく、Bスタイルのラージグループを作らなければならない。今回の2試合には、そんな長期戦略があったのではないか。

スタメン総入れ替えの是非

 ただし、2試合でスタメンを部分的ではなく、総入れ替えしたこと。この『全員起用』については、賛否両論かもしれない。森保監督は、昨年の親善試合から同じ方針を貫いているが、ボリビア戦が今ひとつだったことを受け、否が増えた印象もある。

 

 元々この全員起用は、ロシアW杯で指揮を執った西野朗監督の方針だった。W杯までたった3試合の準備で本番に挑まなければならないのに、西野監督はメンバーや戦術を早期に固めることなく、全員を起用した上で、最後の最後でベストな11人を選び出した。その結果は、功を奏している。

 当時も言及したが、このマネージメントにおける最も大きな功績は『全員参加チーム』を作ったこと。全員が当事者意識を持ち、チームのあらゆる場所から活発な意見が出て、それが一体感を生み出す。「お客さん気分の選手」がいない。ベンチの選手たちも「ああすれば」「こうすれば」と考えて話し合う。他人事ではない。全員起用ならではの特徴だ。

 それはレギュラーが固定され、戦術も細かく規定されたチームには持ちづらいメリットでもある。2011年アジアカップを制したザックジャパンが、その後3年間停滞したことを思い出すといいだろう。チームは固めるだけでなく、混ぜることも大事。『全員参加チーム』を作った西野ジャパンの成功例を、森保ジャパンは継承している。スタメン総入れ替えは、戦術の面より、戦略の面で見なければならない。

 少なくとも、今はチームを混ぜる段階だ。また、新戦力の発掘だけでなく、AとBという異なる2つのスタイルによって、香川や堂安など、お互いに刺激を受けた部分もある。3月は種まきの時期。森保監督の戦略家としての方針に、今のところ異論はない。

 むしろ、今後に疑問を投げかけたいのは、アジアカップで出た課題の対処だ。これは現状、手付かず。

 カタールとの決勝戦は0-2とされるまで、ハマらない守備を修正できなかった。それは選手たちの反応を見る、という対応力強化の面もあったそうだが、では本番中の本番では監督が自ら修正できるのか? 

 たとえば東京五輪、ワールドカップ予選、ワールドカップなどの結果100パーセントの試合で、選手に対応できない状況が訪れたとき、森保監督とスタッフ陣は素早く解決策を提示できるのか。その点は懐疑的だ。何の保証もない。西野ジャパンから長所を受け継いだのはいいが、分析の甘さ、マッチプランの甘さ、采配で手を打てなかったことまで継承されては困る。

 今年のコパ・アメリカやW杯予選では、その点が改善されたと、片鱗だけでも見せてもらいたいところだ。