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【2022.12/28】新型コロナウイルス感染症・ワクチンと不妊・妊娠・授乳との関連 最新情報まとめ

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの流行が世界中で起きてからしばらく経過しました。

その中で、コロナウイルス感染やワクチン接種における不妊・妊娠・授乳への影響や関連についてさまざまなデータが蓄積されてきました。

今回は、2022年末までに報告された研究論文や公的機関の見解を整理し、ご紹介します。

妊娠中のコロナウイルス感染症の影響は?

2022年10月25日に更新された米国CDC(疾病予防管理センター)のウェブサイトでは、妊娠中または妊娠が最近分かった女性に向けて、以下のような情報提供をしています。(文献1)

これらの内容は、ほとんどの産婦人科医の中で共通見解になっていると考えられます。

・オミクロンなどの変異株を含めコロナウイルスから最大限に身を守るため、感染流行地域では屋内施設でマスクを着用しましょう。

・全体的なリスクは低いものの、妊娠している人や最近妊娠した人は、妊娠していない人に比べてCOVID-19による重症化のリスクが高くなります。

・妊娠中にCOVID-19を発症した場合、早産(37週未満での出産)や死産のリスクが高くなり、その他の妊娠合併症のリスクも高くなる可能性があります。

・基礎疾患や年齢などのリスク因子の影響により、妊娠中または出産後の時期(出産後42日間以内など)に重篤なCOVID-19を発症するリスクがさらに高まります。

2022年2月に公開された米国産婦人科学会(ACOG)の公式雑誌に掲載された総説では、以下のように「妊娠とコロナウイルス感染症」について具体的にまとめられています。(文献2)

・非妊婦と比較して、妊婦はコロナウイルス感染により集中治療室(ICU)に入る可能性が3倍高く(1000例あたり10.5 vs 3.9)、人工呼吸器を使用する可能性が2.9倍高く(1000例あたり2.9 vs 1.1)、死亡する可能性が1.7倍高い(1000例あたり 1.5 vs 1.2)ことがわかっている。

・コロナウイルス感染は早産が増えることにも強く関連しており、それに伴う新生児合併症のリスクが増すことがわかっている。

・妊娠中に入院を要する重症化の危険因子として、高齢(35歳以上)、過体重または肥満、慢性肺疾患、慢性高血圧、妊娠糖尿病などの基礎疾患等が関連していることがわかっている。

また、2022年8月に報告された総説論文では以下のようにまとめられており、胎児への直接感染は稀ですが胎盤異常や早産等の影響によって胎児・新生児へ負担がかかる危険性などが示されています。(文献3)

・妊婦はコロナ感染の危険性が高く、感染すると妊娠にさまざまな悪影響を及ぼすリスクが高まる。

・コロナウイルスの垂直感染(母体から胎児への感染)は、これまでの研究報告から稀であると考えられるが、胎児への他のリスク(早産による合併症発生など)は存在している。

・コロナウイルスが胎盤に感染することにより、様々な病理組織学的変化が起こる可能性がある。

2022年11月に報告された研究では、さまざまなコロナウイルス変異株による妊婦への影響が分析されました。(文献4)

その結果、オミクロン株の感染による母体・新生児合併症の重症度はデルタ株以前と比べて低いことが示唆されましたが、妊婦の集中治療室入室、呼吸補助の実施、早産はオミクロン感染でも発生していたことが明らかとなっています。

現在、オミクロン株は国内外で主要な流行株であり、感染力も高いため、妊産婦や乳児を守るためには警戒を怠らないことが重要であることに変わりはないでしょう。

妊娠(生殖)機能へのコロナウイルス感染症の影響は?

2022年7月に報告された総説論文では、女性の妊娠機能に対するコロナ感染の影響についてまとめられています。(文献5)

まだ不確かな部分が多いですが、コロナ感染によって月経サイクルや月経量、月経随伴症状への影響が生じることはすでにわかっており、基礎医学の観点から生殖機能に悪影響を与える可能性も指摘されています(ただし、感染したから必ず不妊になる、ということではないので解釈にはご注意ください)。

・コロナウイルスに感染した女性では、月経の頻度・周期の変化、月経期間・月経量の変化、月経前症候群の悪化、月経困難症の増加などが報告されている。

・コロナ感染によって「血圧や細胞外容量の調節に関わるホルモン系の機能不全」が生じることが性別にかかわらずあり、生殖機能に悪影響を及ぼす可能性が否定できない。

コロナワクチンによる現在・将来の妊娠への影響は?

まず、「将来の妊娠への影響」に関しては、接種して数年から十数年経過しなければ厳密なデータはわからないと言えるでしょう。

しかし、この数年間で数多くのデータが集積され、精緻に分析されてきました。これらを踏まえ、現状で得られる情報を総合的に考慮し、なるべく客観的にメリットとデメリットを踏まえて接種するかどうかの判断をすることが大切だと思います。

2022年10月20日に更新された米国CDCのウェブサイトでは、明確に妊娠中や授乳中、妊娠を希望している女性へのコロナワクチン接種を強く推奨しており、以下の見解が示されています。(文献6)

また、妊婦に対するブースター接種も推奨されています。

・コロナワクチンを接種することで、COVID-19による重症化からあなたや胎児を守ることができます。

・コロナワクチンの接種は、妊娠中、授乳中、現在妊娠しようとしている人、または将来妊娠する可能性がある人すべてに推奨されます。

・妊娠中はいつでもワクチンを接種して良いですし、これはブースター接種も同様です。

・妊娠中のコロナワクチン接種の安全性と有効性に関するエビデンスが蓄積されており、ワクチン接種によるメリットが、ワクチン接種に伴うリスクを上回ることが示されてきています。

・現在のところ、コロナワクチンを含むいかなるワクチンも、男女ともに不妊症を引き起こすという科学的根拠はありません。

また、CDCの研究報告から、妊娠中のワクチン接種によって流産、胎児死亡、先天異常などの発生頻度は増えていないことがわかっています。

加えて、The New England Journal of MedicineやJAMA Pediatricsという国際医学雑誌に掲載された研究報告でも、製造会社にかかわらず、コロナワクチン接種と妊娠初期の流産、早産、低出生体重児、形態異常、新生児入院、新生児死亡の発生率や、母体の子宮内感染、帝王切開率、産後の多量出血の発生率に関連性は認められなかったことが示されています。(文献7,8)

コロナワクチンによる授乳への影響は?

米国CDCや日本の専門学会等は、以下のように述べています。

・コロナワクチンは、母乳育児をしている人の感染予防にも有効です。

・授乳中の赤ちゃんへの悪影響を懸念する心配はありません。

・接種後に授乳を止める必要はありません。

・最近の報告では、ワクチンを妊娠中に2回接種した人では子どもが生後6カ月間にコロナウイルス感染で入院する頻度が低かったことがわかっています。(文献9)

授乳中でも安心して接種をご検討ください。

妊娠中に接種することで小さな赤ちゃんを母乳で守れる可能性があることも、心強いですね。ただし、赤ちゃんへの免疫付与を優先して妊娠中のワクチン接種を遅らせるよりは、打てる時に早く打つことの方がメリットが大きいと考えられます。

日本のコロナウイルス感染妊婦の現状は?

日本においてコロナウイルス感染症に罹った妊婦のデータからはどのようなことがわかっているのでしょうか。

日本産科婦人科学会の公式ウェブサイトに、「日本におけるCOVID-19妊婦の現状~妊婦レジストリの解析結果(2022年6月7日付報告)」が6月9日に掲載されました(どなたでも無料で閲覧できます)。

*本レジストリに携わっている全ての関係者の方に感謝申し上げます。

こちらの結果に関する解説については以下の記事をご参照ください。

妊娠中にコロナに感染したら? 最新データから見えるいくつもの「リスク」

感染に伴うリスクが高い方は引き続きの注意を

最新の研究結果をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

各国で様々な工夫を重ね、妊婦を含む女性への積極的な情報提供がされており、そのどれもが科学的根拠に基づきほぼ共通の内容となってきています。

世界中のデータの蓄積によって、妊婦や授乳婦を含む女性へのコロナワクチン接種の有効性と安全性がわかってきています。

ぜひ、本記事や公的機関の情報を参考にしてコロナ感染から身を守っていただければ幸いです。

*本記事の内容は2022年12月28日時点で得られた情報に基づいています。日々更新される可能性があるため、なるべく各種リンク等から最新情報をご参照ください。

参考文献:

1. CDC. Pregnant and Recently Pregnant People. At Increased Risk for Severe Illness from COVID-19.

2. Jamieson DJ, et al. Am J Obstet Gynecol. 2022 Feb;226(2):177-186.

3. Kumar D, et al. Transl Res. 2023 Jan;251:84-95.

4. Deng J, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022 Nov 29;19(23):15932.

5. Harb J, te al. Biomedicines. 2022 Jul 22;10(8):1775.

6. CDC. COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding.

7. Magnus MC, et al. N Engl J Med 2021; 385:2008-2010

8. Watanabe A, et al. JAMA Pediatr. 2022 Oct 3;176(11):1098–106.

9. CDC. February 18, 2022 / 71(7);264-270.

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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