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セルフプレジャーは「何ら問題のない行為」 産婦人科医が若い女性に伝えたい正しい情報

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

セルフプレジャーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

これは「自慰行為、マスターベーション」と同じ意味で、自分自身で性的な興奮や快楽を覚えるための行為のことです。

性別にかかわらず好みや頻度は自由であり、一つの楽しみ方と考えましょう。

セルフプレジャーについて、大事な3つのポイントや、健康上のメリットがあることはこちらの記事で解説しました。

恥ずかしい行為? 女性のセルフプレジャーの誤解やメリットを産婦人科医がマジメに解説

今回は、若い女性に対して、セルフプレジャーについてどのようなことを知っておいてほしいか、産婦人科医の目線でお話します。(文献1)

日本では性教育として教えられる機会がほとんどない

まず、日本の学校で提供される性教育は様々な制約に縛られており、中高生にとって現状の社会を生き抜いていく上で十分な情報・知識が得られているとは言い難い状況です。

その中で、セルフプレジャーについて触れられる機会は非常に乏しく、それゆえ誤った知識や認識、スティグマを持ってしまうことが多いと感じています。

10代を含む若い方では、プライバシーの観点や恥ずかしさなどから、主にインターネットを通じて性に関する情報を探すことが様々な調査で分かっています。これは日本も海外も同様でしょう。

インターネット上の情報は見つけやすい反面、その真偽を見抜くことが難しく、誤った情報も少なくありません。

専門性や関係性を考えると、中学校や高校の中で学校の先生がこうした性教育を提供しにくいというのは当然です。

ぜひ、産婦人科医など外部の専門家を頼っていただいたり、本記事のような情報を活用いただければと思います。

ポジティブなメッセージの発信が大切

セルフプレジャーにまつわる(誤った)恥ずかしい気持ちや恐怖心を減らすために、社会全体として、性に関する適切かつポジティブ(肯定的)なメッセージを発信していくことが重要だと考えられています。

できれば、親、保護者、教師など若者にとって身近な存在の大人がこの話題にきちんと向き合い、コミュニケーションをとれる環境が望ましいでしょう。

若い女性の皆さんは、学校の保健の先生など身近に信頼できる大人を見つけ、ぜひ疑問に思ったことを相談してみましょう。

もし月経の悩みなどがあれば、早めに一度は産婦人科を受診して、セルフプレジャーのことも一緒に相談してみてくださいね。

セルフプレジャーに「平均年齢」や「適した年齢」はない

セルフプレジャーを始める「適齢期」や「決まった時期」はありません。幼少期になんとなく気持ちが良いため自分で触り始める子もいますし、10代になってからトライしてみる人もいます。当然ながら、20代になっても一度も経験のない女性もいます。

「自分だけしていて変なんじゃないか」

「周りの友人はしているみたいなのに自分は興味がないのはおかしい?」

こういった心配をする必要は全くありませんよ。

必ずプライバシーを保てる場所で行いましょう

セルフプレジャーをすること自体は何も悪いことではなく、むしろ自己肯定感が高まったり、ストレスを発散したり、自分自身のカラダを知ることにつながります。

しかし、「プライバシーを保てる場所で行う」ことは常に守りましょう。

自分自身にとっては自由な行為ですが、他人にとって同様だとは言えないからです。

また、付き合っているパートナーにセルフプレジャーを強要されても、嫌な場合ははっきりと嫌であることを伝えましょう。

支配的、脅迫的な関係性は健全なものではありません。常にお互いを尊重し合える関係性を考え、不満があればパートナーと話し合ってみてくださいね。

自分自身を知り、向き合う機会に

若い女性にとっても、セルフプレジャーは何ら問題のない行為です。むしろ、自分自身のカラダや好みを知る機会につながるでしょう。

しかし、無理にセルフプレジャーをする必要はありませんし、大人になってしていなくても問題はありません。

あくまでも「自分が好きか、したいと思うか」が重要です。

ぜひ、自分自身のことを大切にしてください。

パートナーとの関係に悩んでいる場合は、こちらの記事も参考になれば幸いです。

人との関係性や性教育について学ぶ機会が乏しい日本、知っておいてほしいこと

参考文献

1. Queensland Government. Give yourself a hand: the health benefits of masturbation.

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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