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【アジア大会2018】日本はU-23アジア最強ウズベキスタンにリベンジを果たせるのか

柴村直弥プロサッカー選手
今年6月に行われたウルグアイとの親善試合ではU-23代表選手が7人先発した(写真:ロイター/アフロ)

 2018年1月19日、U-23(23歳以下)アジア選手権の優勝を目指して中国に乗り込んだ日本代表は、思わぬ大敗を喫して大会を去ることとなった。

 準々決勝のウズベキスタン戦の前半31分、日本のペナルティエリア内からウズベキスタンFWウリンボエフ(メタルルグ:ウズベキスタン)の落としたボールを、ペナルティエリアやや外の辺りからシディエフ(コーカンド-1912:ウズベキスタン)に左足でダイレクトでシュートされ、先制を許してしまう。その後も、ウズベキスタンの前線からのハイプレスに苦しみ、34分には日本の最終ラインでハムダノフ(ブニョドコル:ウズベキスタン)にボールを奪われ、失点。そして、39分には、ペナルティエリア外からペナルティエリア内でのヤフシバエフ(パフタコール:ウズベキスタン)の3度の切り返しに日本の3人のディフェンダーが翻弄され、最後は左足でゴール左上隅に冷静に決められ、前半を0-3で折り返す。

 後半立ち上がり、47分には日本のDFラインの背後のスペースに走り出したヤフシバエフにパスが渡ると、またもヤフシバエフの深い切り返しに翻弄され、GKと1対1になったところをゴール左下になんなく流し込まれ、0-4。

 その後、ウズベキスタンのDFとMFのラインの間で三好康児(川崎フロンターレ)がうまくボールを受けて前を向いたり、自らのドリブルからシュートを放ったりしてチャンスを演出するも、ゴールまでは至らず、ウズベキスタンのプレスと縦に推進力のある攻撃に最後まで苦しめられ、0-4で大敗を喫してしまった。

 攻守に圧倒された前半、日本のシュートは0本。すでにフル代表でデビューしている選手も多数いるウズベキスタンに対して、なす術なく敗れてしまった試合後、先発出場した岩崎悠人(京都サンガ)は「何もうまくいかなかった。衝撃的な力の差を感じた」とコメントするほど、力の差は大きかった。

 ウズベキスタンは、日本に4-0で勝利した後、準決勝では韓国に4-1で勝利、決勝でベトナムを2-1で退け、U-23アジア選手権を制した。

1994年以来の優勝を目指すウズベキスタン

 1994年、ウズベキスタンが旧ソ連から独立後、初めての国際大会となる広島アジア大会で、ルスタン・アクラモフ監督率いるウズベキスタン代表は初優勝を遂げたが(日本は準々決勝で韓国に2-3で敗れ、ベスト8)、今大会はそれ以来の優勝を目指している。

 FWウリンボエフやMFハムロベコフ(ナサフ:ウズベキスタン)など、今大会のメンバーの内12選手が、2018年6月に行われたW杯直前のウルグアイとの親善試合に出場しており、スアレス(バルセロナ:スペイン)やカバーニ(パリ・サンジェルマン:フランス)など、世界トップレベルの選手たちと対戦している。さらに、その他の選手含めた全選手がすでに1度はフル代表に招集された経験がある。2013年のU-20ワールドカップではベスト8まで勝ち進んでいたり、若手の育成には以前から定評のあるウズベキスタンだが、今大会のメンバーは、国内リーグでもすでに主力として出場している選手たちも多く、実戦経験も豊富。優勝候補筆頭に挙げられている。

 しかし、準々決勝で対戦する韓国は、オーバーエージ枠もフル活用し、U-23アジア選手権の雪辱に燃えている。韓国を撃破しても、準決勝ではアジア選手権の決勝でウズベキスタンに敗れたベトナムが勝ち進んでくる可能性が高い。韓国と同じように雪辱に燃えているベトナムをも撃破して、ようやく日本との決勝戦となる。もちろん、日本も勝ち進んでいけば。

組織的な守備に加え力強いカウンター攻撃

 多民族国家であるウズベキスタンは、欧州のような力強さがあり、中東のような技術も兼ね備えている。1994年の広島アジア大会でトルクメニスタン代表をベスト8に輝かせた名将アガムラドフ・タチムラド監督は、2001年からパフタコールを指揮し、国内リーグ4連覇を成し遂げた。このタチムラド監督が新たに組織的なサッカーをウズベキスタンに持ち込み、ウズベキスタンは更なる進化を遂げる。近年は4-2-3-1のシステムから、中盤の3の両サイドには縦への推進力のある選手を置く傾向が強く、カウンター攻撃の迫力はアジア屈指。

 さらに今回のU-23チームはとくに組織的な守備からのプレスも見逃せない。U-23アジア選手権では日本を前半シュート0本。後半も3本に抑えて圧倒しただけでなく、韓国との試合でも、韓国の6本のシュートに対して21本のシュートを放ち、韓国をも圧倒している。チームを指揮するラバシャン・ハイダロフ監督は、2018年1月から指揮をとり始めたばかりだが、この世代の選手たちのU-19、U-20ウズベキスタン代表監督も歴任しており、選手たちの特徴を熟知している。かつてはウズベキスタンフル代表の監督も務め、パフタコール時代には2度の国内リーグ優勝も成し遂げている名将は、キジルコム、サマルカンド時代も組織的な守備からのカウンター攻撃を展開しており、ウズベキスタン人選手たちの強みである力強さと縦への推進力を生かす戦術とマッチしていると言えよう。今大会はここまで大会参加チーム唯一の無失点で勝ち進んでいる。グループリーグでは3連勝で10得点0失点。決勝トーナメント1回戦も香港を3-0と退け、安定した戦いで危なげなく勝ち進んでいる。

東京五輪に向けて日本がより進化していくためには

 各国がU-23チームで挑んでくる今大会で、日本は東京五輪を見据えて、U-21チームで大会に臨んでいる。加えて、冨安健洋(シントトロイデン:ベルギー)や堂安律(FCフローニンゲン:オランダ)などの欧州組は招集しておらず、韓国などU-23チームの上にオーバーエージも活用している国もある中、他国に比べてディスアドバンテージは大きい。しかし、強い相手と公式戦で対戦できる経験は、何より選手たちの今後の成長に繋がる。準々決勝で対戦するサウジアラビアは日本と同じようにU-21チームとはいえ、厳しい戦いが予想される。今大会、勝ち進むことでより強い相手と対戦でき、東京五輪へ向けてのチームの成長に繋がっていく。迫り来る強敵を1つ1つ撃破していき、決勝でU-23アジア最強チームであるウズベキスタンにリベンジを果たすことが出来れば、東京五輪を見据えた森保監督率いるチームは、更なる進化を遂げていくことだろう。

プロサッカー選手

1982年広島市生まれ。中央大学卒業。アルビレックス新潟シンガポールを経てアビスパ福岡でプレーした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年ラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。同年のUEFAELでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。日本人初となるラトビアリーグ及びラトビアカップ優勝を成し遂げ、2冠を達成。翌年のUEFACL出場権を獲得した。リーグ最多優勝並びにアジアで唯一ACL全大会に出場していたウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍し、ACLにも出場。FKブハラでも主力として2シーズンに渡り公式戦全試合に出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へ移籍した

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