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ハワイ出身17歳モデル。キラウエア火山噴火で被災。自宅近くに溶岩が。それでも前向きに生きる理由その3

佐藤智子プロインタビュアー、元女性誌編集者
自分でなんでもできるようにと。強くなったと自分でも思う 撮影/ケイコ・フォレスト

アルマーニ氏も見初めたという話題の新人モデルがいる。小林サラ。現在、17歳。

14歳でモデルになって、最初の仕事は、いきなり、EDWINの広告。コカコーラにナイキにワコールに。ファッション誌、CM、次々と露出していく彼女のプロフィールで注目すべきことは、ハワイ島プナ地区のジャングルで育ったということ。

だが、2018年5月、キラウエア火山が噴火、プナ地区の住宅地にも溶岩が噴出。周辺住民は避難を余儀なくされた。

容赦なく刻一刻と変わりゆく光景を目のあたりにしてもたくましくとらえるサバイバル力が小林サラにはある。

そのタフさを作り出しているものとは?

流れのままに、チャレンジを続けていく 写真提供/ALEXIASTAM
流れのままに、チャレンジを続けていく 写真提供/ALEXIASTAM

―― モデルの仕事をしてると、どんどん夢がかなっていって、その夢はだんだん変わっていくもの?

サラ そうですね、サラはすごく流れのままに行くのが好き。そんなに前のことや先のことは考えない、心配してストレスになっちゃうから。だから毎日どういうことになってるか見て、それで楽しんでやって。

―― 流れにまかせて、過去や未来のことを考えるのではなく。じゃ、割とトライする、チャレンジするタイプなの?

サラ はい、そうです。

―― 言われたら「その仕事はちょっと」じゃなくて、「やります、やります」みたいな?

サラ はい、そうですね。最近日本の映画のオーディションに行って、まだ緊張する、やったことないから。でも、やっぱり、やってみたいと思って。

―― じゃ、これからは女優さんになったりとか、歌を歌うとか。

サラ 日本の映画はまだちょっと無理だと思う、日本語が読めないから、漢字とか。でもアメリカの。

―― ハリウッドに行くとか、そういうのも考えて?

サラ はい。だから、日本の映画でアメリカ人の役とか、英語をしゃべる役とか。楽しそうと思って。

―― ダンスとか歌は?

サラ 歌は、ちょっと恥ずかしい。声がきれいじゃないから、ちょっとそれは(笑)。

―― 分からないよ。でもオファーが来たら「ちょっとレッスンしますよ、やりませんか」って言われたら、やってみたい?

サラ はい、そうですね、レッスンを受けてから。

過去や未来のことは考えない。流れに任せていくのが好き

―― 環境がすごく変わるっていうのでストレスとか、例えば、どっか都会から地方に行くとか、地方から都会に行くとか、住むところが変わってストレスを感じるような人もいると思うんだけど、何かアドバイスないですか。場所が変わっていくっていうことに対して。環境が変わる、なかなか慣れない時にはどうしたらいいの?

サラ 新しいところに行くとか、新しいことをやるのはいいけど、最後にお母さんとか家族がいる場所があるから、そこにいつでも帰れるって思ってるから。

―― ホームがあるから頑張れてるわけだ。

サラ 頑張って楽しんでできなかったら帰れるって、ちゃんと誰かいるっていうのがいい。

―― まずそれを思うことなのね。そして、チャンスが来たら、「でも私ちょっと自信ないし、初めてだし怖いから」って、もしキャンセルしてたら、今の生活はないじゃない。

サラ そうですね。

―― どう? やったと、やらないとじゃ、大違いだとして、やってみた人の感想としてはどうでした? 突然、ハワイ島のジャングルから慣れていない東京に来て、モデルをやって。

サラ すごく良かった。やっぱり、うれしかった。

東京に来て、モデルの仕事をしてよかった 写真提供/ALEXIASTAM
東京に来て、モデルの仕事をしてよかった 写真提供/ALEXIASTAM

―― 何が一番変わったの?

サラ やっぱり全部自分でやらなくちゃいけないこととか。ハワイにいた時は、いつもお母さんが運転してて、いろんなところに連れていってくれた。電車がないから。何か大変なことがあったらお姉ちゃんに聞いてみて、手伝ってもらうとか、いつも誰かいたから。でも、日本に引っ越して、結構自分一人でいるのが多いから。

―― 自分はどういうふうに変化した?

サラ 最初は大丈夫、自分一人でいるのが好きだし、楽しかった。お母さんもいないし、お姉ちゃんも誰も何も言わない。でも、やっぱり最後、人が横にいるのが大切。やっぱり誰か。

―― でも自分がそういうのをチャレンジしてみて、何か変わったっていうことある? 

サラ 強くなった、自分で何でもできる。なかなかこの歳から自分で生活するのはないから、多分。

―― 日本語もよく分からないし、行ったこともないところに、やったこともない仕事。知り合いがそんなにいるわけじゃない、お友達もいないところで、全くのゼロから入って。14歳でね。でも、それをやることで、すごく強くなったんだね。

サラ はい。シャイだったし、しゃべるのが苦手だったけど、日本に引っ越してきてやっぱり誰も知らないから、自分でお友達作らなきゃいけないとか。

―― どういうお友達を作ったの? モデル仲間?

サラ 最初はモデル仲間で、知り合いの知り合いでつながって。

―― どんな人が合うの? サラちゃんは。どんなお友達が多いの?

サラ やっぱりインターナショナル学校に行ってる子。

―― じゃ、完全日本っていうよりは、ちょっとグローバルな感じの。

サラ そうですね、英語しゃべれる人が多い。

―― そうか、コミュニケーションがね。全く友達がいないところからどうやって作っていくの?

サラ やっぱり1人から、その1人のお友達からどんどんコネクションがいっぱいある。最初はモデルの子で、その子がインターの学校行ってて紹介してくれて。

―― 1人からどんどんつながっていって。今、17歳、どんな話してるの? 

サラ やっぱり「モデルとかどう?」とか。

―― 何か将来の夢とか、それとも今どきの話。

サラ 今どきだね。どういう人が好きとか(笑)。

日本語もよくわからない、やったことのない仕事、友達もいない。全くゼロの状態からモデルを始めて 写真提供/asiacross
日本語もよくわからない、やったことのない仕事、友達もいない。全くゼロの状態からモデルを始めて 写真提供/asiacross

―― お休みは、前はビーチ行ったりしていたけど、今は何をしてるの? ショッピング?

サラ 結構部屋にいることが多い。やっぱり自分でいるのが一番好き。

―― ちょっと自分を落ち着かせるような感じで。

サラ うん。でも、お外行く時は公園とか行く。

―― そういう自然があるところが好きなんだね。でもさ、モデルさんだと思うと、ちょっとおしゃれにしないといけないとか、ショッピングもして、ファッションリーダー的な。メークも。そう思ったりしない?

サラ:うん、そう(笑)。だから、そんなに出たくない(笑)。

―― あ、そうか(笑)。みんな見ちゃうからね。モデルなのにみたいになっちゃうもんね。

サラ うん、化粧しなくちゃいけないし、ちゃんとおしゃれな服着て。

―― ちゃんとしなきゃいけないからね。モデルとして、最終的にはどうなりたいってあるの? 夢はこうなりたいってあるの? モデルでもいいし、今17歳だけど、どういう感じになりたいの? 例えば。

サラ 最後はやっぱり、できるか分かんないけど水原希子さんみたいに。

―― トップモデルになって、映画やドラマにも出たりとか、いろいろして。

サラ そうです、いろんなことやって。いろんなところに旅して。

―― 旅して。どこに住む? 住む場所をいろいろ変えちゃう?

サラ そうですね、1つは、日本かハワイ、慣れてるところ。

―― 日本ってどう? 日本の感じは。

サラ すごく好き、みんなすごく優しいし。

―― ジャングルとだいぶ違うけど。でも、それはそれの良さがあるということなのね。

サラ はい。そうですね。

家のすぐ側を溶岩が流れていく大自然の驚異にさらされても 撮影/ケイコ・フォレスト
家のすぐ側を溶岩が流れていく大自然の驚異にさらされても 撮影/ケイコ・フォレスト

大好きだった、マンゴーツリーの道も溶岩で行けなくなったけれど

―― じゃ、ちょっと、ハワイ島のジャングルの話を聞くね。今年の5月に、ハワイ島で噴火があって、溶岩が流れてきて、大変だったでしょう。

サラ はい。大変でしたね。

―― 溶岩は見たの?

サラ うん、6月に帰った時に見たけど、噴火した時はいなかったからびっくりした。ニュース見て知って。誰からも聞いてないから「これ、ほんとかな」と思って。お姉ちゃんに聞いてみたら「ほんとになったよ」って言われて、びっくりしていっぱい調べて。

―― 心配だったね。

サラ うん。その時もみんなどういう感じになってるか、分かんなかったから、どんどん爆発してきて、みんな、写真を投稿していて。「あ、そこ、私の近所だ」と思ってて。

―― じゃあ、居ても立ってもいられないから帰ろうとか思わなかった?

サラ それはやっぱり。でも、日本にいる時は仕事を真剣にやんなくちゃいけないから。でも、いつも考えてて「どういう感じになってるかな」って。みんながすごく大変そうに言ってたから、息とかできないし、お友達の家とかなくなってるし。最後は止まるのかなと思ってて、ずっと祈っていたの。「止まるように」って。でも止まんなくて、お母さんのおうちのほうに近づいてて、心配だった。

慣れ親しんだ風景もどんどん変わっていくけれど 撮影/ケイコ・フォレスト
慣れ親しんだ風景もどんどん変わっていくけれど 撮影/ケイコ・フォレスト

―― 6月に帰った時はどうだった? 家に帰れたの?

サラ 家には帰れました。最初すごい大騒ぎになってたけど、6月にはだいぶみんな落ち着いていて、みんな、そういう生活に慣れてきた。お母さんの家に行くために、いつもおまわりさんのところを通って、ちゃんとここに住んでるって言って、そしたら入れるのね。

―― 住民だという証明書を見せて。

サラ そうそう。それ以外は入れないの、そこに住んでない人は。

―― 溶岩は見た?

サラ はい、見ました、1回だけ。すごい遠いところからちょっとしか見えなくて、でもその時はすっごく流れるのが速かった、車より。どう言ったらいいのかな、波のような、水のように、流れていて。

―― 川みたいに流れていて。

サラ そうそう。びっくりした。「えー」って。そういうのを見たことないから。

―― なかなか見られないと思う。

サラ それが私の近所だったから「なんで、ここに溶岩が流れてるの」と思って。

―― 友達たちは大丈夫なの?

サラ みんなは、おうちもなくなったけど、何かみんなすごい、まだハッピーで。

―― どういう意味でハッピーなの? 家がなくなって。

サラ みんな、ケガしてないとか、誰も死んでないから。まだ生きてて、お友達も違うとこにいて、泊まれるところもあるし。寂しいけど、誰もケガしてなくて、それはうれしいと。

―― なるほど。良かったねと。家がなくなっても、生きてるっていうことで感謝する感じ?

サラ そうですね。

―― でも、帰ったら、全然変わってたわけでしょ。自分たちが遊んでたところとかも。

サラ はい。びっくりです。日本で仲良くなった友達を連れて帰ろうと思って。2か月前からずっとプランしていたのね。何やるとか、いっぱい想像してたの。サラの一番好きな場所とか絶対見せたいって。「ここ、すごい素敵。もう夢みたいだよ」って言ってたのね。そしたらそこが全部溶岩が流れてなくなってて、サラがずーっと遊んでたところが。

―― 例えば、それはどんなところ?

サラ マンゴー・グローブという道なのね。全部、木が、マンゴーツリー、すっごくでかい。その道路を通るのがすっごく好きで。

―― トンネルみたいになってるの?

サラ そうそう。ちょこちょこ光が入ってきて。

―― それが、なくなったの?

サラ うん。道路がなくなったから、そこも通れないし。いつも行ってた好きな海、ポホイキっていう海で、いっつもバーベキューして、泳いでたところが、道路がなくなったから行けない。どこも行けなかった(笑)。ちっちゃい街があるんだけど、そこも空気も悪かったし、だからちょっと寂しかった。

―― ああ、そうか。道は行けないし。行けるところは空気がガスみたいになっちゃうしで。

サラ はい。ちっちゃい時からいつも遊んでたところが全部なくなってるから。

電気が消えても、水がなくなっても、落ち着いていられるのは

―― 今ね、日本も住んでる場所が突然洪水になったりとか、いろいろあるでしょ。

サラ はい、そうですね。

―― でも、やっぱり、いつも自然の中で暮らしてるから、割とそういうのを分かって育ったの?

サラ はい、そうです。

―― 突然電気が消えるとか。

サラ うん、そうですね。

―― 例えば、電気消えたらどうしたとか、水道がどうのとか、よくあったの? そういうことは。

サラ うん、すごく慣れてた。電気消えたらキャンドルでそのまんま寝て、次の朝また電気が入ってきて。

―― 水がない時はどうするの?

サラ 雨水をためて、フィルターを通して、飲んで、シャワーも浴びてたから、雨降ってない日は、時々お水がない日もあった。

―― そういう時はどうするの?

サラ お友達の家でちょっとシャワーを浴びて、水は街で買ってきて、そういう感じだった。

―― じゃ、それは日常的にあったから、急に停電になってもパニックになったりすることはないわけなんだ。

サラ そうですね、すごくリラックスしていて。

それでもハワイ島が好き、ジャングルが好き、私たちはハッピー 撮影/ケイコ・フォレスト
それでもハワイ島が好き、ジャングルが好き、私たちはハッピー 撮影/ケイコ・フォレスト

―― そういう自然の中にずーっと住んでる、生まれた時から自然のそばにいるというのは、自然どころかジャングルとかだったら、突然噴火するというのも「自然のやることだからな」っていう感じなの?

サラ そうですね。前から、何キロ先かの近くに溶岩が見れるところがあったから、それはみんな知ってた。溶岩があるのを。

―― 自然の中に暮らしているから、水が出なくなったり、電気が消えるということは割と慣れているでしょう? でも、やっぱり街にいて、突然電気が消えて、突然洪水で家がなくなったりすると、もうみんなショックが大きくて、なかなか立ち直れないよね。でも、サラちゃんたちは何日も電気が消えているといった時は、どういうふうに思ってたの?

サラ しょうがないから頑張って、そういう生活で生きてた。ワイルドに。タフに。

―― 落ち込んだりとか、ショックがずーっと続くとか、そういのはあんまりないの? 

サラ みんなはショックだったし、多分寂しい人もいるし、ショックの人もいるし。でも、最後は、ハワイ島はちっちゃなコミュニティーみたいだった。お友達がおうちなくしたらみんなでサポートしてるから。自分だけじゃなかったから、タフだった。頑張って生きてるって。

―― ああ、仲間同士で助け合って。それに、そういうジャングルに住んでいて、やっぱり体も健康になるし、精神的にも強くなっているというのはある? 

サラ そうですね、やっぱり。

―― それは活かされている? 東京に来ても。

サラ うん。ジャングルで誰もいなかったから、お母さんも時々仕事が忙しいから、東京来てもそんなに心配はなかった。一人でやることにハワイで慣れていたから。

―― じゃ、今も何かあったとしても、チャレンジして。

サラ うん、そうですね。

―― あんまり悩みすぎたりはしないってことなのね。

サラ うんうん。

その4につづく

その1はこちら

その2はこちら

●小林サラの母、ケイコ・フォレストさんのインタビュー記事

その1はこちら

その2はこちら

その3はこちら

プロインタビュアー、元女性誌編集者

著書『人見知りさんですけど こんなに話せます!』(最新刊)、『1万人インタビューで学んだ「聞き上手」さんの習慣』『みんなひとみしり 聞きかたひとつで願いはかなう』。雑誌編集者として20年以上のキャリア。大学時代から編プロ勤務。卒業後、出版社の女性誌編集部に在籍。一万人を超すインタビュー実績あり。人物、仕事、教育、恋愛、旅、芸能、健康、美容、生活、芸術、スピリチュアルの分野を取材。『暮しの手帖』などで連載。各種セミナー開催。小中高校でも授業を担当。可能性を見出すインタビュー他、個人セッションも行なう。

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