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ゼレンスキー大統領、カナダのトルドー首相と対談「移動式ドローン迎撃部隊の強化に向けて協力を要請」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2023年11月にウクライナのゼレンスキー大統領は、カナダのジャスティン・トルドー首相と電話対談を実施。軍事支援のさらなる要請などを議論していたが、そのなかで話題になったことの1つがロシア軍の攻撃ドローンからウクライナを防空するための「移動式ドローン迎撃部隊」の強化に向けた協力が必要であることをゼレンスキー大統領自身の公式SNSで伝えていた。

▼カナダのトルドー首相との会談を伝えるゼレンスキー大統領の公式SNS

▼「移動式ドローン迎撃部隊」

冬は道のコンディションも視界も悪くドローンの迎撃が困難に

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。ほぼ毎日立て続けにロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入してウクライナ全土に攻撃を行っている。2023年11月になっても「シャハド」での攻撃は全く収まっていない。

ウクライナ軍はロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃するために、専用車「移動式ドローン迎撃車」を開発して、アラート(警報)が鳴ると、標的付近まで専用車で向かっていき車やバンの後方部に設置している機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊する「移動式ドローン迎撃部隊」も2022年後半につくった。

ロシア軍はイラン製軍事ドローンで深夜や早朝に奇襲を多く行っている。深夜や早朝の方が暗くて見えにくいことと、迎撃する兵士の脳も昼間ほど働いていない。また民間施設への攻撃は深夜や早朝の一般市民が寝ている時の方が心理的なダメージも大きい。そのような深夜や早朝でもアラートが鳴ると「移動式ドローン迎撃部隊」らは駆けつけて迎撃している。深夜や早朝だけでなく、大雨や大雪など視界の悪い天候の日の迎撃も大変である。「移動式ドローン迎撃車」でば後部に設置された地対空ミサイルやライフル銃で迎撃しているが、迎撃している兵士らも軍事ドローンの標的にされてしまうので、命がけである。

これから冬に近づくにつれてロシア軍は軍事ドローン「シャハド」でもっと奇襲をしかけてくるだろう。冬の寒くて雪や雨が降るような時期は「移動式ドローン迎撃車」にとって道も雪で埋もれて、移動してすぐに攻撃ポイントまで駆けつけていくのも、春や夏に比べると困難である。また冬は寒くて昼間でも視界も不良なので上空のドローンを迎撃するのは春や夏に比べると困難である。ドローンでの攻撃は迎撃よりも攻撃する方が優位である。「移動式ドローン迎撃部隊」の強化は冬に向けてますます重要になる。

チェコなどは「移動式ドローン迎撃車」の「Viktor」をウクライナ軍に提供している。カナダのトルドー首相との対談のなかで、カナダがどのような形で「移動式ドローン迎撃車」の強化に協力していくかは、まだ明らかにされていないが、何かしら攻撃ドローン迎撃に向けた兵器が供与されるだろう。

ゼレンスキー大統領は2023年11月初旬にも自信の公式SNSでこれからもっと「移動式ドローン迎撃部隊」を強化することを宣言していた。「ウクライナ軍では防空部隊と移動式ドローン迎撃部隊をもっと強化していきます。冬が近づくにつれて、ロシア軍はもっとドローンで攻撃をしかけてくるでしょう。絶対にウクライナ軍は負けません」と強調していた。

▼「移動式ドローン迎撃部隊」の強化を伝えるゼレンスキー大統領の公式SNS

▼チェコから提供された「移動式ドローン迎撃部隊」Viktor

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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