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ウクライナ軍の1つのドローン部隊、1か月でロシア軍の軍事設備60億円分相当を破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
(提供:Ukraine's Operational Command 'South'/ロイター/アフロ)

2023年10月に米国メディアのCBSがウクライナ軍の1つのドローン部隊を報道していた。CBSの報道によると、その部隊でここ1か月で破壊したロシア軍の軍事設備は4000万ドル(約60億円)相当とのこと。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で導入した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させてダメージを与えている。

小型民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいく、いわゆる神風ドローンによる攻撃や、小型民生品ドローンから爆弾を投下して標的を爆破させるなどウクライナ軍では1機数万円から数十万円程度の安価なドローンによってロシア軍の高額な軍事施設や戦車などを破壊してきた。ウクライナ軍が調達してきた安価な民生品ドローンに爆弾を搭載して突っ込んでいくだけだが、高価な戦車や大砲、対戦車ミサイルなどに突っ込んでいき爆発させたら、それらの軍事施設や兵器は使用できなくなる。いわゆる「非対称な戦い」で、コストパフォーマンスは高い。

ドローンによる攻撃の標的になるのは戦車やトラック、大砲、防空システムなど高額な軍事設備ばかりなので、1か月で破壊される総額は60億円くらいにはなるだろう。今回、CBSが取材していたのはウクライナ軍の1つのドローン部隊だけなので、全体ではもっと多くのロシア軍の軍事施設が破壊されており、被害金額も相当なものだ。

またCBSの報道によると、ウクライナ軍は1か月で10,000機程度のドローンを使用しており多くが破壊されているとも伝えられていた。ドローンは監視ドローンであれ、攻撃ドローンであれ上空で検知したら、すぐに破壊されてしまう。何機あっても足りない。

標的に突っ込んでいき爆発するシーンをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影することも多い。FPVはドローンに搭載されたカメラからの風景が操縦者に見える。FPV神風ドローンでの撮影によるロシア軍の軍事施設や兵器、塹壕などへの攻撃シーンは多く投稿されたりしてウクライナ国内外のメディアでも多く報じられている。

だが、ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もイラン製軍事ドローン「シャハド」でウクライナ軍に突っ込んできたり、ウクライナ軍と同じように安価な民生品ドローンに爆弾を搭載してウクライナ軍に爆弾を投下したり、突っ込んで爆発させたりして攻撃を行っている。そしてウクライナ軍およびウクライナの民間インフラ、市民生活の被害総額も相当なものだ。2023年7月までのウクライナでのインフラなどの被害総額は推定で1505億ドル(約22兆円)になるとウクライナの大学が試算していると日本のNHKでも報じられていた。

▼ウクライナ軍のドローン部隊を紹介する米国メディア

▼ロシア軍の監視塔をFPV神風ドローンで破壊するウクライナ軍

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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