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ウクライナ軍の神風ドローン、水平飛行で「防衛用フェンス」をくぐってロシア軍の戦車を大爆破

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2023年9月にウクライナ軍の神風ドローンがロシア軍の戦車T-72を標的として突っ込んでいき爆発する動画が公開されていた。ロシア軍の戦車T-72は上空からのドローンによる攻撃から防衛するためにフェンスでハッチを覆っていた。だが、神風ドローンが水平に飛行してフェンスをくぐって戦車を爆破させた。

ロシア軍やウクライナ軍では上空からの神風ドローンによる攻撃対策のために戦車や大砲をネット(網)やフェンスで覆っていることが多い。小型民生品ドローンに小型の爆弾を搭載して突っ込んでいくタイプの神風ドローンであれば、このようなネット(網)やフェンスがあるだけで戦車などの軍事設備が防衛されることが多い。

今回のウクライナ軍の「マジャール部隊」と呼ばれるドローン攻撃専門のプロ集団は、上空からダイレクトに戦車に突っ込んでいくのではなく、戦車と同じ高さまで来て水平に飛行してフェンスの中に入り込んで、戦車を爆発させた。

神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発するシーンをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影することも多い。FPVはドローンに搭載されたカメラからの風景が操縦者に見える。今回の神風ドローンのように、標的の戦車と水平にドローンが飛行して、防衛用のフェンスをくぐっていき爆発させる映像は珍しい。戦車のハッチも開きっぱなしでロシア兵は乗っていなかったようである。

ウクライナ軍はロシア軍が置き去りにした戦車をよく破壊している。ロシア兵がもういなくなり、置き去りにされた戦車をわざわざドローンで爆弾を投下する必要があるのかと思われるかもしれない。だが徹底的に破壊しておけば、ロシア兵が戻ってきても再び戦車を使用することはできない。

ロシア軍の置き去りにされた戦車はハッチが開いており、ウクライナ軍はよくドローンで上空から開いたハッチの中に向けて爆弾を投下している。だがハッチの上をフェンスで覆っていると爆弾を投下しても戦車に命中しないで破壊できないこともある。そのため神風ドローンによる水平飛行でのフェンスをくぐっての破壊は効果的である。

▼神風ドローンがフェンスをくぐってロシア軍の戦車を破壊する珍しい映像

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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