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ウクライナ軍「バイラクタルが戻ってきた」トルコの軍事ドローンで攻撃・ロシア軍の防空の弱体化か

佐藤仁学術研究員・著述家
リトアニアの市民からウクライナ軍に提供された「バイラクタルTB2」(写真:ロイター/アフロ)

2023年9月、ウクライナのメディアのUnited24が「バイラクタルが戻ってきた」というショート動画を公開していた。「バイラクタルTB2」で攻撃を行ったシーンの動画も再び見かけるようになった。「バイラクタル」とはトルコ製の軍事ドローンで、ロシア軍が2022年2月にウクライナに侵攻してきてからの数か月間は、ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を利用して侵攻してきたロシア軍に攻撃していた。

▼「バイラクタルが戻ってきた」

ロシア軍侵攻直後には大活躍でウクライナで称賛の歌も、リトアニア市民からの寄付も

ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍の装甲車を上空から破壊して侵攻を阻止することにも成功したり、黒海にいたロシア海軍の巡視船2隻をスネーク島付近で爆破したり、ロシア軍の弾薬貯蔵庫を爆破したり、ロシア軍のヘリコプター「Mi-8」を爆破したりとウクライナ軍の防衛に大きく貢献していた。ウクライナ軍が上空からの攻撃に多く利用しているトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍侵攻阻止の代名詞のようになっており、歌にもなってウクライナ市民を鼓舞していた。

ウクライナ軍がトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」を活用してロシア軍を多く攻撃していた。爆破に成功するたびに上空からの動画をSNSで公開して世界中にアピールしていた。リトアニア、ポーランドなどの市民もトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」をウクライナ軍に提供するために寄付を集めていた。「バイラクタルTB2」を製造しているバイカル社は、2022年6月に「バイラクタルTB2は無償でリトアニアに提供しますので、ウクライナ軍に渡してください。クラウドファンディングで集まった費用は人道的な支援に使ってください」とコメント。ウクライナ軍にリトアニアやポーランド市民からの「バイラクタルTB2」は届けられていた。

だがここ数か月はウクライナ軍はトルコ製の軍事ドローンではなくて、小型の民生品に爆弾を搭載した投下させたり、ドローンごと標的に突っ込んでいったりして攻撃している。「バイラクタルTB2」を利用することがほとんどなかった。「バイラクタルTB2」での攻撃シーンはウクライナや世界中にSNSで拡散されて全戦全勝のようなイメージがあったが、大型であるため標的にされやすく攻撃に成功する前にロシア軍の地対空ミサイルに上空で撃墜されてしまうことも多かった。「バイラクタルTB2」は攻撃力はあるがコストパフォーマンスは高くない。

ウクライナ軍が再び「バイラクタルTB2」を使うようになった背景にはロシア軍の地対空ミサイルなどの防空システムが弱体化しているのではないかという見方を示す欧米の軍事専門家もいる。たしかにウクライナ軍が多く使用している小型民生品ドローンに爆弾を搭載した攻撃ドローンは機関銃やライフル銃でも簡単に破壊されてしまうが、「バイラクタルTB2」のような大型攻撃ドローンは地対空ミサイルでないと迎撃することは難しい。

▼「バイラクタルTB2」による久しぶりの攻撃シーンが公開(2023年9月)

▼「バイラクタルTB2」を称えたウクライナの歌

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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