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ウクライナ軍、1機3500万円の「水中FPV神風ドローン」で黒海のロシア軍監視用艦隊に突撃

佐藤仁学術研究員・著述家
ウクライナ政府が開発している水中神風ドローン(United24提供)

2023年5月25日にウクライナ軍の公式SNSで、ウクライナ軍の水中攻撃ドローンが黒海でロシアの監視用艦隊に突っ込んでいくシーンをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影して公開していた。前日の5月24日にはロシア国防省がウクライナ軍の水中攻撃ドローンを破壊したと発表していた。多くの公開された情報や写真、動画など、いわゆるオープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)によってウクライナ軍の水中神風ドローンがロシア軍の監視用艦隊に攻撃をしていた。

空を飛ぶドローンではFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で攻撃シーンなどが撮影されて公開されることは多い。だが、水中神風ドローンが水上からFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で攻撃シーンを公開することはめったにない。たいてい別の箇所(地上や上空のドローンなど)から撮影された攻撃シーンの動画が公開されている。

ドローンは空中からの監視・偵察や攻撃が多いが、水中で敵軍の艦船の監視や攻撃を行う水中ドローンも戦場では重要である。水中攻撃ドローンは標的の艦隊や艦船をめがけて突っ込んでいき爆破させる。いわゆる「水中神風ドローン」である。

ウクライナ政府は黒海にあるロシア軍の艦隊からのミサイルに対抗する水中攻撃ドローンの開発のためのクラウドファンディングでの資金提供を世界中に呼びかけている。

ウクライナ政府によると1機の水中攻撃ドローン開発につき25万ドル(約3500万円)かかる。空を飛ぶドローンは民生品の安価なドローンで偵察や監視、さらに爆弾をつけてロシア軍に投下して殺傷したり戦車を破壊したりすることもできる。空を飛ぶドローンに比べると、水中攻撃ドローンはかなり高価である。

水中攻撃ドローンの開発の費用に充てるためにウクライナ政府として初のNFTアートの販売も行っている。目標として4機の水中攻撃ドローンを開発するために4000万フリヴニャを集めようとしている。「UACatsDivision」(ウクライナ軍のキャット部隊)という愛称の猫の絵柄は1万種類以上あり、ウクライナ軍の制服などを着ている。

水中攻撃ドローンは敵軍の艦隊や海軍の基地に攻撃して爆破すると基本的に再利用はできない。だが破壊力は大きい。上空のドローンから爆弾を投下したり、ドローンごと突っ込んでいき爆発させる標的は戦車や軍事施設、塹壕のロシア兵など様々だが、水中神風ドローンの標的は艦隊や海軍の基地などで標的も大型である。そのため破壊力のある水中神風ドローンが必要である。

▼ウクライナ軍が公開した水中神風ドローンによるロシア軍の監視用艦隊に攻撃するシーン

▼ロシア国防省がウクライナ軍の水中攻撃ドローン撃破を発表したことを伝える報道

▼ウクライナ軍の水中神風ドローンに攻撃されたロシア軍の監視用艦隊

▼ウクライナ軍が開発している水中攻撃ドローン

▼世界初の水中攻撃ドローン開発のため資金提供を呼びかけるウクライナ政府

▼水中神風ドローン開発に向けてウクライナ政府初のNFTアート購入を呼びかけ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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