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ロシア製の自律型戦車「Marker」ウクライナで今度こそ配備か:急務の戦車の無人化

佐藤仁学術研究員・著述家
ロシア製の自律型戦車「Marker」(ロシア軍事高等研究財団)

急務の戦車の無人化

2023年1月にロシア軍がついにロシア製の自律型戦車「Marker」をウクライナ東部での紛争に導入するとロシアのメディアが報じていた。2023年1月にはドイツ製戦車「レオパルト2」を各国がウクライナ軍に提供することを発表。「レオパルト2」は世界最強の戦車との評判もあり、ロシア軍をいっきに破壊しウクライナ軍が優位に立てる可能性があると欧米のシンクタンクが分析していた。そのような欧米諸国によるドイツ製戦車「レオパルト2」に対抗してロシア軍が導入しようとしているのがロシア製の「Marker」である。ロシア製の自律型戦車「Marker」を「レオパルト・ハンター(Leopard hunter)」と紹介していた。

そして2023年4月にも、再びロシア軍がついに自律型戦車「Marker」をウクライナに配備する予定があると報じられていた。

ロシア軍の戦車はウクライナ軍のミサイルや神風ドローンの標的にされて多くが破壊されている。また上空からドローンで爆弾を投下されて破壊されて、多くのロシア兵が死傷している。ウクライナ軍の戦車も同じようにロシア軍のイラン製軍事ドローンやミサイルからの攻撃に晒されて破壊されて、兵士が死傷している。ロシア軍だけでなくウクライナ軍にとっても戦車の無人化は急務である。

▼ロシア軍が「Marker」を導入するために試験走行をしていることを伝えていた英国メディアのザ・サン(2023年1月)

▼ロシア軍が「Marker」を導入する予定があることを伝える(2023年4月)

ロシア軍事高等研究財団は2020年12月に「Marker(ロシア語ではМаркер)」と呼ばれる自律型戦車の新たなモジュールを公開していた。そして2021年10月には自律型戦車Markerがロシア極東のボストチヌイ宇宙基地でパトロール用に試験運用されていることを明らかにした。自律して決まったルートの監視、偵察を行っていた。

ボストチヌイ宇宙基地をパトロールしている自律型戦車Markerは兵器の搭載はしていないので攻撃は行わないが、ロシア軍事高等研究財団では2019年にMarkerによる戦闘イメージの動画を公開していた。無人の戦車が戦場で、自律的に標的を攻撃する映像だった。

ロシア軍は無人で自律型戦車のMarkerを「未来の戦争の兵器」として位置づけて開発を行ってきた。AI(人工知能)技術の軍事分野での活用は進んでおり、人間の判断を介さないで兵器が判断して標的を攻撃する「キラーロボット」と称される自律型殺傷兵器の開発も進んでいる。人間の判断を介さないで標的や人を攻撃して殺傷することが非倫理的、非人道的であると国際NGOやAI研究者、一部の国などが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

ウクライナでの紛争だけでなく、無人のドローンは遠隔地からの操作によって、敵の偵察や攻撃を行っている。ロボット戦車やロボット兵器の登場によって、人間の兵士は戦場に行かなくてもよくなる。ロシアが開発しているロボット戦車は、遠隔地で人間の声によって操作されて発砲による攻撃を行うことができるものもある。現在ではAIを搭載したロボット兵器の開発も進められており、人間の判断を介さないでAI自身の判断で攻撃を行うことができるようになる。いわゆる自律型殺傷兵器システム(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)の開発と登場が懸念されている。

一方でロボット戦車など兵器の無人化が進むと戦場で自国の兵士の命が奪われることは以前に比べると少なくなり兵士の「人間の安全保障」は守られるようになる。兵士が戦場で新型コロナウィルスに感染する確率も低くなるだろう。戦場では無人兵器同士の戦いとなり、無人兵器によって街やインフラなどが破壊され、犠牲者は一般市民のみになってしまうかもしれない。兵器と戦場の無人化が進み兵士の「人間の安全保障」は守られるようになっても、一般市民の生活と「人間の安全保障」は守られない。

▼「Marker」紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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