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ノルウェーNGO「爆弾投下型ドローン提供の支援」から「ウクライナ国内での神風ドローン製造」へシフト

佐藤仁学術研究員・著述家
爆弾を搭載した民生品ドローン(Veteran Aid Ukraine提供)

神風ドローン1機につき400ドル(約5万円)250機目指す

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを監視・偵察、攻撃で多く使用している。「上空からの目」として戦場では欠かせない兵器の1つになっている。

ウクライナ軍のドローンは民生品ドローンも軍事ドローンも多くの国の政府の軍事支援で提供されたり、ウクライナ市民や世界中の市民からの寄付で購入したり、世界中の市民団体や企業などから寄付されたりしている。

ノルウェーのNGO団体でウクライナに軍事支援を行っているのがVeteran Aid Ukraineである。Veteran Aid Ukraineでは既に多くのドローンや軍事物資をウクライナ軍に寄付している。同団体では市民からの寄付を呼びかけたり、Tシャツやパーカー、コースターなどを販売したりして集めた資金でドローンを購入してウクライナ軍に送っている。

ノルウェーのNGOのVeteran Aid Ukraineはロシア軍の侵攻直後からウクライナ軍に多くの監視ドローン、攻撃ドローンを提供してきた。ウクライナ軍では監視・偵察目的の民生品ドローンに小型爆弾や手りゅう弾を搭載して敵軍を見つけたら爆弾を落下させて攻撃も行っている。そのため多くの監視偵察ドローンをVeteran Aid Ukraineも提供してきた。

今まではVeteran Aid Ukraineは中国製やポーランド製、ウクライナ製のドローンを購入して提供してきた。小型民生品ドローンに爆弾を搭載して上空から落下させる攻撃は敵軍に探知されたら、すぐに破壊されやすい。放置された戦車やロシア兵がいる塹壕などの破壊には適しているが、大規模な奇襲には向いていない。

そして、Veteran Aid Ukraineでは、今後はウクライナ国内で神風ドローンを製造していくことを明らかにしていた。神風ドローンは標的にドローンごと突っ込んでいき爆発するタイプの攻撃ドローン。ロシア軍がイラン政府から提供を受けている「シャハド136」も神風ドローンで、ウクライナ軍の軍事施設や民間施設に多く攻撃を行っている。

ウクライナ軍は現在でも小型民生品ドローンに爆弾を括り付けて「神風ドローン」に改造して、ロシア軍の標的に突っ込んでいき爆発させている。神風ドローンは1回突っ込んでいき爆発したら、もう再利用はできない。だが標的に命中して爆発すれば殺傷力が高く攻撃で与えるダメージも大きい。またロシア軍がイラン製の神風ドローンでウクライナに攻撃を行っているように大量の神風ドローンで奇襲を行うことができるので攻撃力が高い。さらにウクライナ国内で製造すれば、今までのように海外で購入して輸送するよりも、最前線の戦場ですぐに使用できるようになりうる。

Veteran Aid Ukraineでは神風ドローン1機につき400ドル(約5万円)でウクライナ国内で製造する予定。250機の製造を目指しており、総額10万ドル(約1250万円)の寄付を呼びかけている。

▼Veteran Aid Ukraineが今後は民生品ドローンから爆弾投下をさせる方式からウクライナ国内での神風ドローン製造へシフトすることを発表

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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