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ウクライナ、市民がドローンスクールで操縦をマスターしてロシア軍の偵察・爆弾投下へ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「ウクライナ軍のあらゆる部隊がドローンを持てば、この戦争を勝ち抜くことができると信じています」

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ軍ではドローンで上空からロシア軍への攻撃の様子を撮影して、その動画や写真をSNSで公開して世界中にアピールしている。ウクライナ軍では民生品ドローンを改造して爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍に投下している。

ウクライナでは安価な民生品ドローンを誰もが操縦してウクライナ軍に貢献できるための「ドローンスクール」があり、兵士でない市民らがドローンの操縦方法を学びに来ている。もともと薬局を営んでいた人や子供たちの世代まで戦争を続けたくないという主婦らがドローン操縦を学んでいる。その様子を英国のメディア、Channel 4 Newsが放送していた。

2022年12月に入ってからウクライナ軍がソ連製のドローンを使用してロシア領内の空軍基地などを攻撃したと報じられている。またウクライナ軍はロシアの軍事侵攻直後には、トルコ製の攻撃ドローン「バイラクタルTB2」を多く使用していた。このドローンスクールでは、そのような長距離への攻撃や偵察を行う本格的な軍事ドローンの操縦は教えていない。どこにでも売っているような安価な民生品ドローンである。だが、このような民生品ドローンが戦場では多いに貢献している。

ドローンスクールでは中国製の安価な民生品ドローンの画面での操縦と、偵察の方法を伝授している。簡単なドローン操作で誰でも覚えればすぐに偵察はできるようになる。またウクライナ軍では小型ドローンに爆弾を搭載して、敵を見つけたら爆弾を投下して爆発させてロシア軍にダメージを与えている。そのようなトレーニングも提供している。

ドローンのインストラクターを務める男性は「このロシアとの戦争を我々は"ドローン戦争"と呼んでいます。ウクライナ軍のあらゆる部隊がドローンという『上空の目』を持てば、この戦争を勝ち抜くことができると信じています」と語っている。

ウクライナではドローンのことをウクライナ語で「目(eye)」を意味する「Очі」(Ochi:オチ)と呼ばれることが多い。ウクライナ紛争では攻撃でも監視・偵察でも多くの面で戦場でドローンが使用されている。ドローンは「上空の目」として戦場では欠かせない重要な兵器、監視システムになっている。これだけ多くのドローンが戦場で使用されたのは歴史上初めてであろう。民生品ドローンによる爆弾投下や標的への攻撃も多く行われており、攻撃ドローンと民生品ドローンの境目をなくした。民生品ドローンと攻撃ドローンの境目がなくなったのもウクライナ紛争の特徴の1つである。

小型のドローンは簡単に迎撃されて破壊されることも多い。だが、他のミサイルや戦車と違って安価なので、破壊されても代替のドローンは多くある。

プーチン大統領が2022年12月の会見で、ウクライナとの戦闘が長期化する可能性を示唆していた。戦場になっているウクライナでは「上空からの目」による監視・偵察と攻撃はこれからも重要である。

▼ウクライナでのドローンスクールの様子(英国Channel 4 News)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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