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ウクライナ軍、ロシアの電子戦システム「RB-341V Leer-3」の電波妨害ドローンを撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。ウクライナ軍はロシア軍のドローンを迎撃して対抗している。そしてウクライナ軍では迎撃して撃破したロシア軍のドローンの残骸を世界中に公開している。

2022年7月にはウクライナ軍はロシアの電子戦システム「RB-341V Leer-3」に付随しているドローン「Orlan-10」を撃破した動画を公開した。

このドローン「Orlan-10」は偵察・監視を行うだけでなく上空で電波を妨害(ジャミング)してウクライナ軍のあらゆるドローンの機能を停止させる役割を持っている。

ドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。

地上でドローン迎撃銃を持った軍人が電波妨害を行って上空のドローンの機能停止を行うことが多いが、軍人が上空のドローンから攻撃を受ける危険もある。上空でドローンが電波妨害(ジャミング)を行って敵軍のドローンを機能停止した方が地上にいる軍人の安全を確保できる。

爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。特に「Orlan-10」は飛行する際に大きな音がするので察知されやすいため、攻撃もしやすい。今回、ウクライナ軍も「Orlan-10」をハードキルで撃破している。ハードキルで撃破して部品もバラバラにしておいた方が、回収されて部品を再利用されないのでコストはかかるが効果的である。

戦場においてはドローンは「上空の目」としても、攻撃手段としても多いに貢献している。ミサイルなどに比べて安価に入手することができる。だが上空のドローンは探知されるとすぐに機能停止されるか破壊されてしまう。上空のドローンに自軍の居場所を探知されたら、すぐにミサイルを撃ち込まれてしまうので、ドローンは検知したらすぐに機能停止するか破壊しておかないといけない。

▼ロシアの偵察ドローン「Orlan-10」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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