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「キラーロボットは新しい兵器ではない。新しい戦争のスタイル」米国メディアでNGO専門家語る

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2021年12月にジュネーブの国連で自律型殺傷兵器の開発や使用に関する会合が開催されていた。AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエルなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。

そんななか、米国メディアのDemocracy Now!では自律型殺傷兵器の現状を伝える動画ニュースを配信していた。その中でヒューマン・ライツ・ウォッチのスティーブ・グース氏が登場してキラーロボットの現状や問題点などを語っていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチでは以前からキラーロボットの開発と使用は非倫理的であるという理由から反対を訴えていた。

グース氏は動画の中でイランでの核兵器科学者が殺害されたことなどを例にあげて、すでにキラーロボットは現実のものになってきていることなどを伝え、「キラーロボットは新しい兵器ではありません。新たな戦争のスタイルです」と訴えていた。グース氏が指摘するようにキラーロボットは従来のように人間の軍人が判断しないでAIを搭載したロボット自身が判断して、標的の人間を攻撃する。人間の軍人が戦場に赴かなくても良くなるが、標的にされる人間の生死をAIが判断するようになる。そして、そのことが非倫理的であるとヒューマン・ライツ・ウォッチのような国際NGOやニュージーランド政府など一部の国はキラーロボットの開発と使用に反対している。

だが動画の中でもグース氏はアメリカ、ロシア、韓国、イスラエルなどは積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしていることも指摘。実際にすでにリビアで使用された可能性があると国連も報告している。CCWの会合でも国際社会での一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」となった。

▼Democracy Now!でのキラーロボットを伝えるニュース

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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