ホロコーストの生存者のフェルナンド・ホレンシュタイン氏のホロコースト時代の経験や記憶、現在の状況を元に製作されたドキュメンタリー映画「Petit Rat」が2021年に公開された。

フェルナンド氏は1932年に生まれ、8歳だった1940年にフランスのパリでバレリーナを目指していた。ナチスが侵攻しいてきて南フランスでキリスト教徒に匿われて両親とともにホロコーストを生き延びることができた。ホロコースト時代から約80年の時を経て、フェルナンド氏の2人の娘がダンサーになって3人で映画の物語を展開する。

▼「Petit Rat」トレーラー

生存者が登場することが多くなったホロコーストドキュメンタリー映画

ホロコーストを題材にした映画やドラマはほぼ毎年制作されている。今でも欧米では多くの人に観られているテーマで、多くの賞にノミネートもしている。日本では馴染みのないテーマなので収益にならないことや、残虐なシーンも多いことから配信されない映画やドラマも多い。たしかに見ていて気持ちよいものではない。

ホロコースト映画は史実を元にしたドキュメンタリーやノンフィクションなども多い。実在の人物でユダヤ人を工場で雇って結果としてユダヤ人を救ったシンドラー氏の話を元に製作され1994年に公開された『シンドラーのリスト』やユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン氏の体験を元に2002年に公開された『戦場のピアニスト』などが有名だ。ホロコースト生存者の体験と実話を元にしているドキュメンタリー映画『Petit Rat』もこちらだ。史実を元にした映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業で視聴されることも多い。今回の映画のテーマのように次世代にホロコーストの歴史の真実を伝えていくことに多く活用されている。

一方で、フィクションで明らかに「作り話」といったホロコーストを題材にしたドラマや映画も多い。1997年に公開された『ライフ・イズ・ビューティフル』や2008年に公開された『縞模様のパジャマの少年』などはホロコースト時代の収容所が舞台になっているが、明らかにフィクションであることがわかり、実話ではない。

戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコースト生存者は現在、世界で約24万人いる。彼らは高齢にもかかわらず、ホロコーストの悲惨な歴史を伝えようと博物館や学校などで語り部として講演を行っている。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。そのためホロコースト映画の視聴には慣れてる人も多く、成人になってからもホロコースト映画を観に行くという人も多い。またホロコースト時代の差別や迫害のなか、懸命に生きようとするユダヤ人から生きる勇気をもらえるという理由でホロコースト映画をよく見るという大人も多い。

そして最近のホロコースト映画の特徴の1つとして、ホロコースト生存者の体験と実話を元にして本人が出演しているドキュメンタリー映画が増えている。多くのホロコースト生存者は当時の記憶を証言動画として残しているが、このようなドキュメンタリー映画では、当時の記憶や経験を当時の映像や写真などとともに振り返るシーンだけでなく、現在の生存者自身の様子を伝え、本人が登場して当時の経験や記憶をカメラの前で語っている。ホロコースト生存者エラ・ブルメンタール氏の体験を元に製作されたドキュメンタリー映画「I AM HERE」もその1つだ。ホロコーストの記憶のデジタル化として証言動画を残すよりも、映画は製作費に莫大な予算がかかるため簡単に製作することはできないが、これまでもこのような生存者本人が登場する映画を製作するためにクラウドファンディングなどで資金調達が行われている。

世界中の多くの人にとってホロコーストは本や映画、ドラマの世界であり、当時の様子を再現してイメージ形成をしているのは映画やドラマである。その映画やドラマがノンフィクションかフィクションかに関係なく、人々は映像とストーリーの中からホロコーストの記憶を印象付けることになる。

「Petit Rat」提供
「Petit Rat」提供