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オランダ、アンネフランク公園の肖像画をヒトラーの顔のような落書き&焼け跡でネットも炎上

佐藤仁学術研究員・著述家
落書きと焼かれたアンネ・フランク公園の肖像(RTV提供)

アンネ・フランクには敏感なオランダ

オランダのアッセンという町のアンネ・フランク公園で新年にアンネ・フランクの肖像画に落書きがされ、一部がタバコで焼かれていてネットでも大炎上している。アンネ・フランク公園は、アンネ・フランクを追悼、記念して名付けられている。アンネ・フランクの木というのも植樹しているが、それらは無事だったようだ。

しかもアンネ・フランクらユダヤ人を差別・迫害していたナチスの総統のヒトラーに落書きが似ていることからニュースにもなり、余計にネットでは新年から炎上している。オランダの小さな町で普段は子供が遊んだり、御年寄がまったりしている公園のようで地元の人も驚いているようだ。

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。

アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。アンネ・フランクは世界中の老若男女にも人気がある。世界中の若者に人気のインスタグラムには世界中のアンネ・フランクのファンがアンネの当時のモノクロ写真や、アムステルダムにある「アンネの家」を訪問した写真をたくさん投稿している。

オランダ人全員が善人ではなかった

オランダではアンネ・フランクは神格化されており、汚すのがタブーという風潮もある。特にアンネ・フランクはアニメや映画にもなっており若い子にも人気がある。そのためこのようなアンネ・フランクを汚すような事件がオランダであると「ネオナチの到来だ」「迫害されたユダヤ人のことを考えよう」「アンネ・フランクに失礼だ」とネットも炎上する。

ナチスドイツに占領されたオランダでは、ユダヤ人らは逮捕され、多くのユダヤ人が東欧のアウシュビッツ絶滅収容所などに移送されて殺害された。多くのオランダ人がナチスに協力してユダヤ人迫害に加担していた。ユダヤ人が隠れているのを密告してお金や食糧をナチスから貰っていた。そのため戦後もユダヤ人に対して後ろめたさもある。

そしてオランダ人の全員がアンネ・フランクを匿った人たちのように善人ではなかった。ユダヤ人を救ったオランダ人でも「占領してきたナチス・ドイツはもっと嫌いだった」からユダヤ人を助けていた人もいた。今でもユダヤ人が嫌いという反ユダヤ主義者のオランダ人もいる。このような事件があると「(他にも迫害されて殺害されたユダヤ人はたくさんいるから)アンネ・フランクだけを特別扱いするな」という投稿や「もっと冷静になれ」と呼びかけるコメントもある。

落書きと焼かれたアンネ・フランク公園の肖像(RTV提供)
落書きと焼かれたアンネ・フランク公園の肖像(RTV提供)

▼アンネ・フランク

写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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