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ドイツ軍事企業「自律型戦車」動画公開:国連でキラーロボットの使用禁止を議論中に

佐藤仁学術研究員・著述家
ラインメタル提供

ドイツの軍事企業のラインメタルは自社が開発している自律型戦車の動画を2021年12月に公開した。ラインメタルが開発している「Autonomous Combat Warrior (ACW) Wiesel」というプラットフォームを元に開発した自律型戦車で、自律での運用も行われるが、人間の軍人がリモートから操作することも可能。動画の中では自律型戦車は泥道の中を走行したり、人間が運転するトラックの後を尾行したりしている。

「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」

ラインメタルが自律型戦車の動画を公開した2021年12月には、スイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催され、自律型殺傷兵器について議論されていた。

AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

AI技術の軍事への活用は積極的に行われており、アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、トルコなどでは自律型兵器の開発が進められており、現実的な兵器となってきている。ドイツ政府も自律型殺傷兵器の開発や使用の禁止に反対していない。新たな技術が軍事分野で利用されるのは歴史的にも常であり、そのようにして軍事技術も民生品も発展してきた。

当然、ラインメタルのような軍事企業にとっては、自律型殺傷兵器の開発が禁止されることはビジネスの観点から全く受け入れられない。軍事企業としては自律型兵器の開発をこれからも推進していき、多くの政府や軍が自律型兵器を導入してもらいたい。多くの国が自律型兵器を導入してくれることが自社の増益にもつながる。

現在、世界で30か国が自律型殺傷兵器の開発や使用に反対しているが中小国がほとんどだ。アメリカやロシアなど大国は開発も使用も反対していないため、国際社会での足並みがそろっていない。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していないことから、おそらく開発は進められているのだろう。

今回のCCWでも一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」こととなった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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