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モロッコ、イスラエルから「攻撃ドローン」2.5億円で購入:アルジェリアへの抑止強化に向けて

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

モロッコ軍がイスラエルの軍事企業イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)から2200万ドル(約2億5000万円)で攻撃ドローン「ハロップ」を購入したとイスラエルのメディアのHaaretzが報じていた。

イスラエルとモロッコは軍事協力での関係強化を深めている。特に2021年8月にモロッコがアルジェリアと国交を断絶して緊張関係にある。モロッコがアルジェリアと国交断絶した理由にもイスラエルが関係している。モロッコを訪問していたイスラエルのヤイル・ラピッド外相がアルジェリアに敵対的な発言をしたこと、モロッコ政府がイスラエル企業が開発したスパイウェア「ペガサス」をアルジェリアの当局やアルジェリア人に使用していたことをあげている。

そのためモロッコはイスラエルとさらに協力を深化させることによって、アルジェリアへの抑止力を強化したいところだ。イスラエルは2021年5月にハマスとの紛争でドローンによる攻撃を実施していた。またアルメニアとアゼルバイジャンの紛争でも「ハロップ」が活用されていた。

イスラエルとトルコは軍事ドローンのパイオニア国家で、モロッコは2021年4月にはトルコからも軍事ドローン「Bayraktar TB2」を13機購入する契約を行い、9月にモロッコに納入された。攻撃ドローンの整備によって軍事力を強化している。

攻撃ドローンによる軍事力強化

攻撃用の軍事ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破する殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。

2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。

▼アゼルバイジャンとアルメニアの紛争で使用されたイスラエルの「ハロップ」紹介動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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