ウクライナ軍が2021年10月に東部の紛争地域で新ロシア派武装勢力を攻撃した。その際にウクライナ軍はトルコの軍事企業から購入した攻撃ドローン「バイラクタルTB2」を初めて使用し、その動画も公開されて欧米のニュースでは多く報じられていた。

ウクライナ軍による攻撃ドローンの利用に欧米諸国やロシアも紛争をエスカレートすることを懸念して警告を発していたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は「領土と主権を死守していく」と声明を発表していた。

そしてアメリカの政治学者で「歴史の終わり」の著者のフランシス・フクヤマも自身のツイッターで「ウクライナがトルコの軍事ドローンを使用したことは完全にゲームチェンジャーになりました。ロシア政府もウクライナがトルコの軍事ドローンで攻撃してきたことに強い懸念を示しているようです」とコメントしていた。

フランシス・フクヤマは2021年4月に「Droning on in the Middle East」というレポートでトルコの軍事ドローンの脅威などを伝えていた。

ゲームチェンジャーになりうるトルコの軍事ドローン

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。今回のウクライナ軍による使用もロシアにとっても大きな脅威になっている。そして多くの紛争でトルコの軍事企業が開発した攻撃ドローンが使用されている。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。

ロシアの周辺国でNATO加盟国のポーランド、ラトビアもトルコのバイカル社の攻撃ドローン「バイラクタル TB2」を購入している。またアルバニアも購入意欲を示している。これらの国々がウクライナのようにトルコ製の軍事ドローンを装備して、いつでも攻撃可能な状態になることはロシアにとっても大きな脅威である。

また2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識するとドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。従来の核兵器のように一部の大国しか保有できなかった兵器と違い、攻撃ドローンは小国やテロリストでも簡単に購入して、大国への攻撃も容易だ。そのため攻撃ドローンは今後の紛争、地域の安全保障のゲームチェンジャーになりうる。

▼ウクライナ軍がトルコの攻撃ドローンを初めて利用して攻撃を行った動画を紹介したニュース

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」でのアゼルバイジャンによるアルメニアへの攻撃

▼フランシス・フクヤマ氏のツイート