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ウクライナ ホロコースト時代のユダヤ人が隠れていた地下水道を発掘:まるで映画「ソハの地下水道」

佐藤仁学術研究員・著述家
(グレブ・ガラニッチ提供)

生きるのが大変だった地下水道

ホロコースト映画に「ソハの地下水道」(原題:「In Darkness」)というホロコースト時代のウクライナで地下水道にユダヤ人が隠れていた時の様子を描いている映画がある。

2021年10月にウクライナのリヴィウにあるユダヤ人らが隠れていた地下水道をウクライナの研究者らが発掘した。リヴィウでは10万人以上のユダヤ人が殺害された。当時のユダヤ人らが隠れていた時のおもちゃなども見つかった。今回調査した地下水道では21人が隠れていたが、10人しか生き残らなかったと地下水道の生存者の息子のデビッド・ピーターソン氏が語っている。ユダヤ人がゲットーから地下水道まで約7メートル掘って隠れていた。

第二次世界大戦時にナチスドイツが支配下の地域でユダヤ人を差別、迫害して約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。特に東欧でのユダヤ人らは迫害と殺害を逃れるために地下水道に隠れようとしたが、映画「ソハの地下水道」のように成功した例はほとんどなかった。

ドイツ軍もユダヤ人らが地下水道に隠れることを想定して、地下水道を手りゅう弾で爆撃したり、マンホールの上で待機して、食糧などを求めて地下から出てきたユダヤ人らを逮捕していた。しかも一時的に地下水道に隠れられていても食糧不足や汚水にまみれた非衛生な環境で長期間生き延びることはソハのような地元民の協力が必要で、とても大変なことだった。

特に冬は地下水道に隠れているユダヤ人らが温まったり、食事を作ると蒸気で地上の雪が溶けてしまうので怪しまれて発覚されやすかった。そのようにナチスや地元民に気がつかれないように息をひそめて、寒さと飢えに耐えて恐怖に怯えながら真っ暗な地下水道で生活していた。

世界中の多くの人にとってホロコーストは本や映画、ドラマの世界であり、当時の様子を再現してイメージ形成をしているのは映画やドラマである。「ソハの地下水道」もかなり当時の様子を忠実に描いた映画だった。だが実際に隠れていた地下水道の様子を見ると映画の映像よりもさらにリアリティがある。

▼映画「ソハの地下水道」

▼映画「In Darkness」オフィシャルトレーラー

▼ウクライナでの地下水道発掘を伝えるニュース

▼ウクライナでのナチス時代のユダヤ人の隠れていた地下水道発掘の様子

(グレブ・ガラニッチ提供)
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(グレブ・ガラニッチ提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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