「一番怖いのが衛星を破壊され、海底ケーブルを切断され、変電所をサイバー攻撃されてブラックアウトが起きたら、日本はもう防衛ができません」

2021年9月8日に高市早苗前総務相が自由民主党(自民党)の総裁選挙への出馬会見を行った。高市氏が出馬会見の中でも強調していたのがサイバーセキュリティ対策の強化だった。高市氏は以前から自身のコラムでも、安全保障の観点からサイバーセキュリティの重要性を訴えていた。

高市氏は出馬会見でサイバーセキュリティについて毅然とした態度で以下のように言及していた。

経済安全保障と国防力の強化について述べます。海外からサイバー攻撃が激増しています。昨年1年間で海外の送信元から日本へのサイバー攻撃をみると、1日平均13億6600万回です。前回の4年前の衆議院選挙の時には、1日平均3億9000万回でした。危機的な状況になっています。

国民の皆様の命、金融資産、個人情報を守り抜いていくために、特に航空、鉄道、自動車、医療、電力、ガス、水道、金融、クレジットの分野においてのサイバー防衛対策の樹立と高度化を急いでいく必要があります。

迅速な攻撃者の特定と、場合によっては金融制裁などの政治的な反撃が必要になります。サイバー空間での反撃も必要になるかもしれません。これはアクティブディフェンスとして、長年にわたって政府で議論してきました。このようなことを行うためには新しい法律が必要です。しかし、すでに国民の皆様の生命や財産を守り抜けない状況が迫っています。しっかりとサイバーセキュリティ対策をやらせてください。

そして情報を安全にやりとりできる量子暗号通信の研究開発と社会実装をしっかりと推進します。そして現在不足している高度セキュリティ人材の育成をすすめていきます。

また中小企業への販売前のIoT機器へのペネトレーションテストの支援もしていきます。脆弱性検査をするための費用を補助します。

また機微な技術、先端技術、戦略物資、個人情報の海外流出をどうしても阻止しなければなりません。そのために経済安全保障包括法(仮称でございますが)をどうしても整備したいと強く考えています。

日本の安全を守るため、また世界の平和を守るためにも差し迫った課題です。経済安全保障体制の強化に努めていきます。

また新たな戦争への対応が求められてきます。ゲームチェンジャーになるのは衛星、サイバー、電磁波、無人機、極超音速兵器です。極超音速兵器で攻撃をされたら日本では防御する手段がありません。しかし迅速に敵基地を無力化することができた国が、自分の国を守れると思います。そのためにもサイバー反撃を行う際には、法制度の整備などが必要になってきます。きっちりと自衛隊法に書き込まないと訓練も装備の充実もできません。防衛関連の研究費も現在は少ないので増額も対応していきたいです。

一番怖いのが衛星を破壊され、海底ケーブルを切断され、変電所をサイバー攻撃されてブラックアウトが起きたら、日本はもう防衛ができません。特に衛星と海底ケーブルの防御に関する方策について集中的に検討して実行していきたいです。(中略)サイバーセキュリティ庁の設立も検討していきたいです。

(高市早苗氏の自民党総裁選挙の出馬会見より)

サイバースペースにおける安全保障の重要性

国家のリアルな安全保障と同様にサイバーセキュリティも国家の安全保障において重要である。サイバー攻撃による情報窃取は経済の安全保障において危機であり、重要インフラへの攻撃によるブラックアウトや原発事故などが発生した場合は国家の安全保障においても非常に危険である。

そしてサイバー攻撃では、攻撃側が圧倒的に優位で強い。サイバー攻撃は相手のシステムの脆弱性を見つけて、そこから攻撃を仕掛ける。相手を攻撃をしている時に、自分のシステムにも同様の脆弱性を見つけて、修正することもできる。サイバー防衛にとってもサイバー攻撃は効果があり、サイバースペースでは「攻撃は最大の防御」である。

さらにサイバー攻撃を受けた際に、リアルな経済や金融制裁などで反撃を行うことは、抑止になる。「対話」と「抑止」は国際政治と安全保障の基本であり、特に大国間同士では重要である。抑止の前に対話が必要だ。サイバーセキュリティがイシューとして国家間でテーブルに上がって対話が行われているうちはまだよい。お互いが相手側からのサイバー攻撃を意識していることであり、牽制を目的として対話している。そこには抑止効果もある。だが、例えば米中間では、もはやサイバーセキュリティをめぐる対話や、中国人容疑者の起訴などによる抑止では止まることなく、2020年7月には中国政府はヒューストンの中国総領事館を閉鎖してしまった。そして米国政府は対抗措置として四川省成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖してしまい一触即発の危機になったこともある。

またサイバースペースの安全保障の維持と強化は一国だけではできない。サイバー攻撃はどこから侵入してくるかわからない。自国のサイバースペースを強化するのは当然のことだが、自国だけを強化していてもネットワークでより緊密に接続されている同盟国や他の国々を踏み台にして侵入されることがある。そのためにも、安全保障協力の関係にある同盟国の間でサイバースペースにおける「弱い環」を作ってはいけない。

同じ価値観を共有し、同等の能力を保有している国同士でのサイバー同盟は非常に重要である。サイバーセキュリティの能力の高い国家間でのサイバー同盟は潜在的な敵対国や集団からのサイバー攻撃に対する防衛と抑止能力を強化することにつながる。防衛同盟において重要なのは、リアルでもサイバーでも対外的脅威に対する安全保障だ。

そのため多国間で協力しあいながら、相互でネットワークの強化、サイバー攻撃対策の情報交換、人材育成に向けた交流などを行っていく必要がある。マルウェア情報やサイバー攻撃対策の情報交換だけでなく、平時においてもパブリックでの議論を行うことも信頼醸成に繋がるので重要である。