シカゴ市長「大多数の意見でないのが救いです」

新型コロナウィルス感染が世界規模で拡大しているなか、ワクチン接種もすすんでいる。米国のシカゴ市では、シカゴ市長のローリ・ライトフット氏は2021年10月15日までに市職員全員にワクチン接種するように指示した。

シカゴ市職員全員へのワクチン接種強要に対して、シカゴ警察組合のトップのジョン・カタンザラ氏は「ワクチン接種の強要は、ナチスドイツのホロコースト政策のようだ。我々は21世紀のアメリカに生きているのであって、誰からも何も強要されたくない！こんなナチスドイツのような政策では、我々はいずれガス室に送られる」と放送禁止用語も含めて声を荒げて批判していた。

このシカゴ警察組合トップのワクチン接種の強要をホロコーストと比較して批判した発言についてシカゴ市長のローリ・ライトフット氏は米国メディアMSNBCの取材に「攻撃的な発言でとても残念です。何も語ることはありません。でも彼の意見が大多数の市職員の意見を代表していないことがありがたいです」と語っていた。

米国最大のユダヤ人団体の名誉毀損防止同盟のデビッド・ゴールドバーグ氏は「彼の発言は間違っています。ワクチン接種の義務化とホロコーストを比較することは、ホロコーストで殺害された600万人以上のユダヤ人に対して失礼です」と怒りを表明していた。

ホロコーストに例えられやすい新型コロナウィルス対策

欧米ではワクチン接種を希望している人も多いが、政府からワクチン接種を強制されることに反対している人も多い。そして「ロックダウンで外出が制限されたり、マスクの着用を義務付けられたり、ワクチン接種を強要されるといった、不自由な生活＝ホロコースト時代のユダヤ人がゲットーに閉じ込められて迫害された不自由な生活」、「政府による強制的なロックダウンやマスク着用、ワクチン接種＝ナチスドイツの全体主義」というイメージを持つ人が多い。

欧米では新型コロナウィルスのパンデミックの不自由な状況やマスク着用の義務化、ワクチン接種の強制をホロコーストに例えるたび、当時のユダヤ人の悲惨な境遇や生活とは異なると、「ホロコーストに例えることは犠牲になったユダヤ人に失礼だ」「迫害されていたユダヤ人とは状況が違う」などと言われていつもネットで炎上している。

ワクチン接種やコロナ対策の政策をホロコーストと比較すると、必ずネットが炎上するし、ユダヤ団体がこのように反対するコメントをして、テレビやニュースなどで報じられる。そのため、ワクチン接種に反対する人たちは、炎上して目立つことを目的に、わざわざ黄色い星を着用して、デモの写真をSNSに掲載したり、メディアに出ることによって、自分達の主張をアピールしている人も多い。

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。黄色のダビデの星はナチスが政権を握った国や地域では、ユダヤ人を差別迫害し隔離するために、ユダヤ人には人々の目に見えるように衣服に黄色い星を縫い付けさせた。黄色は欧州では呪われた色だった。

特に西欧諸国では外見からはユダヤ人を見分けるのは困難だったため、黄色い星が縫い付けられた服を着用しているのがユダヤ人の証で、黄色い星をつけたユダヤ人は公共の場所や映画館、公園、店舗などに入ることも禁じられた。そして黄色い星は「この人はユダヤ人なので殴ったり、嫌がらせをしたりしても構わない」とわかりやすくするためのものだった。またアウシュビッツなどの収容所に貨車で移送されたユダヤ人の荷物の選別をしていた囚人は、ユダヤ人が持ってきたトランクから衣類を取り出して、それらに縫い付けられている黄色い星を剥ぎ取る仕事をしていた。黄色い星を剥ぎ取られた衣服はユダヤ人を移送してきた貨車に載せられて、戦中で物不足のドイツに送られ一般市民の古着として活用された。