コロナ後に学校再開でも3分の1が補習未実施:低所得国のリモート学習はラジオとテレビ ユニセフら報告
低所得国のリモート学習はラジオ・テレビ、高所得国ではオンライン
国連教育科学文化機関(ユネスコ)国連児童基金(ユニセフ)、世界銀行、OECDが「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による学校閉鎖に対する国の対応に関する調査(Survey on National Education Responses to COVID-19 School Closures)」という報告書を発表した。142ヶ国で調査した結果によると新型コロナウィルスによるロックダウンで学校が閉鎖されている、されていた国の3分の1が補習プログラムを実施していない。特に低所得国、中所得国で全ての学生が対面教育に戻ったのは3分の1に満たず、学習機会の損失、中途退学のリスクが高まっていると報告している。
また今回の報告書では、低所得国・中所得国の10代女子がロックダウンで学校閉鎖の後に学校に戻れないリスクが高いことを懸念していた。また、ほとんどの国がリモート学習を提供しようとしていたが、低所得国ではラジオやテレビ放送の活用がほとんどで、高所得国ではオンライン学習のプラットフォームを提供していた。そして低所得国の3分の1以上はリモート学習で学習できた子供は半数にも満たないと報告していた。
学校が閉鎖でもオンライン学習も受けられない子供たち
日本でも新型コロナウィルス感染拡大によって2020年には多くの学校が休校になり、オンライン学習が導入された。小中学校は再開したが、大学では今でもオンライン学習が主流だ。日本だけでなく世界中で新型コロナウィルス感染拡大によって学校が閉鎖され、オンライン学習やリモート学習が導入されたが、特に途上国では自宅にネットの回線がないこと、パソコンだけでなく学習用のスマホやタブレットを所有していないこと、たとえスマホを所有していても長時間の授業を受けられるほどの通信費を払えない子供が多い。
今回の報告書でも低・中所得国ではラジオやテレビ放送でのリモート学習が主流だったと報告しているが、家にラジオやテレビがない家庭も多い。
そのような子供たちはパンデミックで学校が閉鎖されてしまうと、教育を受ける機会はゼロになってしまい、また家計を助けるために働かざるをえない。特に女子は学校に行かないで家計を助けるためだけでなく、家族の世話をするためにも働くことが多い。さらに様々な犯罪に巻き込まれる可能性もある。そして学校が再開されても、授業についていけなかったり、仕事をやめるわけにいかずに学校をやめてしまうことも多い。また、たとえスマホやタブレットなど機器や回線のデジタルツールが整備され、リモート学習が可能な環境になったとしても、家では家族が多くて、狭くて自分の部屋もなくてオンライン学習で授業を受けられない子供も多い。
さらに授業は学校で受けるものという思い込みがあり「家にいるなら働いて家計を助けろ」とリモート学習に対する理解を示さない保護者への対応も必要になってくる。日本では考えられないだろうが「女子が学校に行く必要はない」「女子に教育は必要ない」と本気で今でも思っている人が多い。そのためデジタルツールの整備が完了しても、家でリモート学習ができない現在の環境と保護者のリモート学習への理解を得ることへの対応が重要になってくる。