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TikTokで急増する反ユダヤ主義:コメント912%・ユーザー名1375%増 イスラエルの大学が調査

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

SNSに溢れる反ユダヤ主義の投稿

イスラエルのハイファ大学のガブリエル・ウェイマン氏とイスラエルの大学IDCヘルツリーヤのテロリズム対策機関の調査によるとTikTokでの反ユダヤ主義的な内容の投稿が2020年に43件から2021年には61件に増加、反ユダヤ主義的なコメントが2020年には41件だったが、2021年には415件にまで912%増加した。

また調査によると、「holocaustwasgood」(ホロコーストは良かった) や「eviljews」(悪のユダヤ人)といった反ユダヤ主義的な投稿者のユーザー名は2020年には4件のみだったが、2021年には59件まで1375%も増加した。

現在でも欧米やアラブ諸国では反ユダヤ主義が根強く、ユダヤ人は差別されやすい。そしてTikTokだけでなく他のSNSでもホロコースト否定や反ユダヤ主義に関するSNSへの投稿は多い。

TikTokではホロコースト否定や反ユダヤ主義だけでなく民族憎悪、ヘイトスピーチに関する投稿がされたら削除することになっている。そのため、調査でも全ての反ユダヤ主義的な投稿を追えてはいない。だから実際にはもっと多いのだろう。そして、このような反ユダヤ主義的な投稿やコメントは、いっこうに減っていないで、増加している。特にTikTokは日本だけでなく世界中で若者に人気があるため、若者が反ユダヤ主義的な投稿やコメントをしている。

露骨にホロコースト否定や反ユダヤ主義に関する内容であれば、すぐに削除もできる。だが、そのようなわかりやすい投稿はすぐに削除されるので、隠語や仲間内でしかわからないような言葉、新しい表現などで投稿されることも多く、全てのホロコースト否定の投稿を削除することは容易ではない。例えば「あんなことはなかった」といった文脈からでしか推測できないような表現が多く、そのような投稿をSNSから削除していくことは至難の業である。

アウシュビッツ絶滅収容所から奇跡的に生還した97歳の女性のリリー・エベルト氏はTikTokで、ホロコースト時代の質問に回答したり、ホロコースト時代の経験を語っており、フォロワー数が100万人を超えている。そのリリー氏のTikTokも反ユダヤ的なコメントで荒らされることがある。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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