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ロシア政府、AI搭載の自律型兵器の大量生産を宣言「軍人の役割もマンパワーからプロフェッショナルへ」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「戦うだけの兵士の"マンパワー"でなくて、AI技術やロボットに精通した"プロフェッショナル"」

ロシアの国防大臣のセルゲイ・ショイグ氏は、ロシア政府は今後、自律型ハイテク戦争ロボットを大量生産していくことを明言したとロシアのメディアに出演していた時にインタビューに答えていた。

セルゲイ・ショイグ氏によると、ロシア軍は今後、自律型戦争ロボット(自律型殺傷兵器)を人間の軍人の部隊は別働の部隊として戦場に投入していく。さらにロシア政府は自律型殺傷兵器を大量生産していくことを明言していた。

セルゲイ・ショイグ氏は「まだ自律型殺傷兵器やロボットが戦場で活用されているような前例はないですが、SF映画などで見ているように自律型殺傷兵器は、自分たちの意思で動作し、戦うことができます。AI(人工知能)を搭載した将来の兵器開発に向けて多大なリソースを投入しています。これからロシア軍がリソースを集中していくのは、自律して動作することができるロボット兵器です」と語っていた。

また同氏は「戦場における軍人の役割は今までと変わります。それでもロシア軍にとって軍人は重要なリソースです。これからはAI技術やロボットに詳しい人をロシア軍としては募集していきたいです。自律型兵器やロボットが主流となるこれからの近代的な軍隊において必要なのは、戦うだけの兵士の"マンパワー"でなくて、AI技術やロボットに精通した"プロフェッショナル"です」と今後のロシア軍の軍人像についても語っていた。

セルゲイ・ショイグ氏は、今後ロシア軍が注力していく具体的な自律型殺傷兵器については明言していなかったが、ロシア軍では既にAI技術を軍事分野で活用しており、兵器の自律化やロボット兵器の開発は進められている。2021年4月にはロシア軍は初のロボット戦車(ストライクロボット)部隊を設立していた。また水中攻撃ドローンや「神風ドローン」と呼ばれる攻撃型ドローン、無人戦車の開発も進められている。

進む自律型殺傷兵器の開発

AI技術の発展で、AI技術の軍事分野での積極的な活用が進められている。AI技術を搭載することによって、兵器の無人化も進んでいる。兵器の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。今後、ロシア政府は自律型兵器を大量生産していくと明言していることから、ロシア軍では今後自律型兵器が主流になっていくだろう。

一方で、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国の政府、AI技術者らが自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。

ロシア政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していない。むしろこのように積極的にAI技術を軍事に活用しており、このままいけば近い将来「キラーロボット」と呼ばれる自律型殺傷兵器が登場して、戦場でも利用されるだろう。プーチン大統領もロシアにおいて軍事だけでなくあらゆる分野でのAI技術開発を積極的に推進しようとしている。

ロシアだけでなくアメリカ、イスラエル、中国、インドなどでもAI技術の軍事への活用は積極的に進められている。中国政府は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していない。

セルゲイ・ショイグ氏が述べているように戦争における軍人の役割も変わろうとしている。自律型殺傷兵器(キラーロボット)による攻防が行われるようになると、人間の軍人が戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。

▼ロシアの国防大臣のセルゲイ・ショイグ氏

写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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